村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
パラサイトシングルが住むファミリーマンションの管理は?

 ペット・児童虐待・婚活・“おひとりさま”を社会学者が語る時代

 5月6日の夜、NHKラジオの第2放送で中央大学教授・山田昌弘さんの話を聞いた。山田さんは「パラサイトシングル」とか「婚活」という言葉をつくった家族社会学者で、現実社会の実情を様々な視点で考え続けている人だから興味深い1時間だった。

 話の冒頭で、いまや家族社会学者としてもペットの存在を抜きにしては研究が成り立たないという述懐が出てくる。そこで、こんなエピソードが紹介された。

 国勢調査の時に「ペットはどこに書けばいいんですか」と聞かれた市役所の人、離婚しようとする夫婦からペットの親権(?)訴訟を持ち込まれた弁護士、ペットの葬儀を専門に手掛ける僧侶…。

 山田さんの話は、いまや家族の概念やイメージが一変した時代にわれわれが生きていることをあらためて再確認させた。

 この放送の前日は「こどもの日」だったから、どの新聞も子供の人口が31年間減り続けて1,665万人になったことを伝えた。

 山田さんの話が念頭にあったので、減り続ける子供と対照的に増加したペットの数を調べてみた。社団法人ペットフード協会が毎年発表している犬猫飼育調査の一番新しいデータ(2011年10月)によると、犬が11,936万頭、猫が9,606万頭。合わせて21,542万頭になるという。

 15歳未満の子供が1,665万人だから、犬と猫の方が子供より489万頭も多いことになる。家族社会学の専門研究者がペットの存在を考えないわけにいかなくなってきている実情がわかる。

 子供の数が減っているというのは結婚しない人が多いからだというわかりきったことをあらためて考えると、ペットの増加と子供の減少という実態の向こう側に「パラサイトシングル」とか「婚活」という言葉が苦い重さでが浮かび上がってくる。

ファミリーマンションにパラサイトシングルが住む:住居形態とマッチしない管理システムのギャップをどう考えるか

 いつもながらの言い方になるが、どんな時代にも世の中で起こることはマンションの中でも同じように起こる。子供が減って犬と猫の方が多くなるという事実、結婚しないままの人が増えて当たり前になっているという実情はそっくりそのままマンション居住者の実態に重なる。

 それはどうしようもない現実だから、今さらあらためてどうこういう気はまったくない。ただし、マンション管理の仕組みの前提となっているイメージがこうした実情の変化に合わなくなっている点は、やはり見逃したくない。マンションの居住実態と管理の仕組みのギャップが無視できないほど年とともに大きくなっている実感があるからだ。

 600万戸といわれるマンションのほとんどはファミリータイプである。ファミリーでないシングル居住用のマンションならワンルームタイプになるが、こうしたタイプのマンションは基本的にマンション管理の対象とはならない。ワンルームマンションは事実上賃貸用だからである。

 だからマンション管理の前提は、どうしても複数の住戸のあるファミリータイプになる。当然ながら、マンション管理システムの担い手となる管理組合を構成する区分所有者もこうしたファミリーイメージで成り立っていることになる。

 が、この前提がもはや成り立たなくなっていることは明白だ。マンション管理の仕組みだけは今も以前と同じままだからだ。このギャップがことごとに不都合を生んでいる例は枚挙にいとまがない。高齢化や非婚化の増加を受けた「管理者管理方式」が様々な形で議論されていることも、この事情と無関係ではあるまい。

 かつてマンション市場もこうしたファミリーイメージを前提として成り立っていたし、供給された後の維持管理システムもまた同様のイメージを前提にしていた。

 しかし、需給という一断面だけで時代変化に関わるマンション市場と違い、居住という側面で年月の経過に関わり続ける維持管理にはこうした時代変化の流れが直接的な形で反映する。ファミリーイメージが過去のものになった居住実態の変化が、マンション管理のシステムと無縁のままでいいはずがない。

最大の問題は管理組合組織イメージの不在

 ストレートに問題を提起しよう。こうしたギャップの生まれる背景にあるものは、管理組合という組織のとらえ方が一面的で実情に合致していないままだという実情である。

 これを確かめたければ、辞書事典類で「管理組合」という言葉の説明を見るだけでいい。国語辞典や専門用語辞典、百科事典などありとあらゆる辞書事典を確かめてみれば一目瞭然だ。広辞苑からウイキぺディアに至るすべてのものは、「管理組合」という組織を今もなお「区分所有者の団体」という法的視点だけで説明している。

 区分所有者という法的権利の有無だけが管理組合の構成要員の基本条件だという考え方なのだから、居住という法的権利と異なる視点は管理組合の説明にはまったく取り上げられることがない。

 人間集団である管理組合を、無人格・無性格の法的権利概念だけでとらえようとするから、生身の生きている人間組織としての側面が語られることは何十年来、絶無だった。

 管理組合という組織を千差万別の人間集団としてとらえないまま、無機的な語感で「合意形成」を語る感覚が続いてきている。

 権利の有無の視点を尊重しながら、それとあわせて《居住》という視点で管理組合組織を確かめ直す感覚が必要ではないのか。

 この感覚がなければ、もはやマンション管理は現実的な問題に答えられなくなるのではないか。

 子供の声が聞こえず、高齢者とペットばかりが増えていく静まり返ったマンションの維持管理の中心となる管理組合の組織イメージ再点検が避けられなくなっている。にもかかわらず、そうした議論を聞いたことがない。

 もどかしい。

| muraitadao | コラム | 11:07 | comments(0) | trackbacks(0) |
「国有東電」で連想したマンション電力設備のわかりにくさ

 マンションの共用設備はマンションの数だけ多種多様に違う!

 4月27日、東京電力の「総合特別事業計画」の内容が明らかになった。このニュースを受けて日経朝刊が一面に掲載した連載記事は「国有東電」というタイトルだった。会社の中の会社として日本企業を長年にわたって睥睨してきた東京電力に国有の字が冠されたこのタイトルには、ちょっと意表を突かれた。

 5月に入ると、関西電力の電力需給見込みの曖昧さがニュースに流れる。

 電気の問題が何かにつけて気になるようになってきた。わからないことがあまりに多すぎることも実感する。とりわけ大きくて複雑なマンションの場合は、特にその感じが強い。

 しかし、わからないことは電気だけに限らない。ガスや水道など生活基盤の維持条件はふだん突き詰めて考えたことがないだけで、あらためて自分がどれだけのことを知っているかということになるともうわからないことばかりだということに気づいて愕然とする。

 どのくらい「わからないこと」が多いか。

 まず、マンションの広告やチラシをみるといい。マンションの広告には下の隅に小さな字で「物件概要」が出ているが、ここに電気やガス・水道などの共用設備の記載を見かけたためしがない

 バラ色の幸せな気分であこがれのマンションを買った人も自分の住戸の中のことをやたらに細かく知っているだけで、肝心のマンションライフを支えるインフラの内容になると大半のことがわからないままの状態になる。

 では、ほかに何か知る手がかりがあるか。これが、また、あるような、ないような感じだ。電気やガス・水道といった設備の根幹部分は共用部分になるから、どこのマンションでも管理規約にはっきり決められている。…ということになるのだが、これは、あくまでも建前。

 大抵のマンションの管理規約のよりどころとなっている標準管理規約をみると、電気やガス・水道などの共用設備が「別表第2 共用部分の範囲」というところに出てくる。しかし、その表記の仕方は何とも大まかで、「1.…ポンプ室、自家用電気室、受水槽室…/2.…電気設備、給水設備…」とあるだけ。ガスについての記述になると、どこにも見当たらない。

 実をいうと、これは仕方がないともいえる。こうしたことはマンションの構造や規模に応じて多種多様をきわめるからだ。5階建て100戸程度のマンションと55階建て800戸のマンションで、電気やガスの設備が同じであるはずがない。

 加えて、物件建設時期の違いもある。同じ300戸のマンションでも、10年前の物件と30年前の物件ではまた違う。さらに、同じ時期に建てられたマンションにも規模や建設段階での事情による違いがあるだろう。

 電気やガス・水道が敷地外からどういうふうに引き込まれるか、引き込まれたあと棟や階ごとの本管や本線にどう流れていくのか、それが住戸ごとにどういうルートで引き込まれるのか、エレベーターなどの設備や照明器具に流れるルートは住戸向けのルートとこにある設備で分岐するのか、こうした経路の途中で変圧などの操作はどこの設備でどう行われるのか…。

 筆者の場合、40年近く住んできたから数々の大規模修繕工事に関わった時の経験でおよそのことは承知しているが、具体的なことはそれほど詳しくは知らない。正直にいえば、今もなお知らないことの方がはるかに多い。

 生活基盤関連設備の実情にはマンションの数だけ多種多様な違いがあるのだ。

管理組合がほとんど知らない設備関係の情報源は管理会社になる・・・

 気がかりは、さらにふくらんでいく。こうしたライフインフラの設備の実情を、管理組合がどこまで知っているかがまことにおぼつかないからだ。

 維持管理の主役となるはずの管理組合自身がこうした設備のことを知らないのが普通だといっていいだろう。そもそも大半のマンションでは管理組合の中心となる理事会がこうした共用設備の具体的な実情を知らない人たちで構成されているから、電気にせよガスにせよ、ライフインフラの具体的な実情がわかる人が誰もいない状態になる。そうした実情を確かめた調査もないし、そんな議論もなかったから、今もって何一つ実情はまったくわからないままなのだ。

 しかし、管理会社ならそれを知っている。これは当たり前の話でもあるのだ。管理組合はマンションの建物全体像を知らない人でも理事が勤まるが、管理会社の方はそうはいかない。管理実務のプロであるからには建物の全容を熟知していなければならないし、設備についてもその実情を把握していなければ仕事にならない。ライフインフラの設備や利用条件についても、例外ではない。事実上、電気やガスについては、建物の全体像と同じく管理組合よりも管理会社の方がはるかに多くの情報を持っているのだ。

せめて管理組合自身による自分のマンションの設備実情の掌握を・・・

 だから、単純にいえば管理組合は自分のマンションの実情をきちんと掌握する必要がある・・・ことになるのだが、これが、実はそれほど簡単ではない。

 理屈でいえばそうなっても、実際には、誰が、どういう方法で、それを確かめ、その結果をどういう方法で記録し、保管するかという具体的な役割分担と取り組み方の問題があるからだ。そもそも、そんな仕事を想定したルールがどこにもないし、理事は毎年交代するのだからよほどの工夫をしないと手が付けようがない。何とか頑張って手をつけても次年度にバトンタッチできなければ、年度替わりを迎えてそれっきりになってしまう。

 こうした仕事を想定したルールも組織イメージもまったくないのだ。問題の構造そのものが奥深い。

 わからないことだらけだが、一つだけはっきりしていることがある。それは、こうした問題には総論がなくて各論しかないことだ。制度や公式ルールに画一的な手がかりを求めるよりも、自分のマンションの内側を再点検して管理会社から現実に即した有効情報を得て管理組合独自の手立てを考えることにヒントがあるのではないかという点だ。

 ヒントという以上の言葉がいま見つからないのは、具体的な進め方はそれぞれのマンションに固有の規模や居住条件、管理組合固有の考え方、管理会社との関係など様々な条件で決まるからだ。観念論で何も答が見つからないことだけははっきりしている。まだ多くの議論が必要になりそうなことも・・・。

 原発事故が引き起こした電力料値上げの問題は、ライフインフラへの対応という維持管理の基本条件がいまだにマンション管理の盲点になっていることを気づかせてくれた。

 電力会社には感謝しなければなるまい。

| muraitadao | コラム | 11:36 | comments(0) | trackbacks(0) |
尖閣諸島を買う話に続いて首都圏直下地震のことを聞いた日に考えたこと

 突然の「島を買う」ニュースが17日、直下地震で死者多数のニュースが19日…

 東京都知事がさる島々を「買う」と明言するニュースを聞いたのは確か17日の朝だった。意味がよくわからない話だったが、その日の夜には大きなニュースになり、その後、繰り返し何度もこの話が流れた。

 翌々日になると、今度はそれを追うような形で、首都圏直下地震の被害想定のニュースが報じられた。6年前の算出を見直した結果、震度6強以上の被害の考えられるエリアが23区の7割になり死者も都内だけで9700人に及ぶという被害想定が東京都から公式に発表された。

 どちらも、東京都に直接関係する情報だから、都民税を納めている立場としてはかなり気にかかる。

 そもそも島を買うとか何とかいう話は、いつそんなことになったのか、出し抜けにそう決めればすぐに税金でその島を買えるのかなど、わからないことづくめだ。なぜこんなことを肝心の都民がいる東京から遠く離れたアメリカでわざわざ発言したのかが、一向にわからない。

 しかし、話が話だから、しばらくは何かと論議の種になるだろう。それにしても、ほとんど誰も考えていなかったような話だから賛否が分かれることは間違いあるまい。

 一方、直下地震の方は、すべての人が気にかけている問題だ。昨年の3月11日、震度5強の揺れがどういうものかを思い知らされた後では、震度6とか震度7という数字のリアリティが以前とはまるで違う。

 何しろ、これは東京都が公式に発表した情報だ。となれば、都知事も承知していたはずだから、島を買うなどという話よりもこちらの方を都知事がどう考えているのかをぜひ聞きたかった。都民税の納税者としては、あらためて、そう思う。

全部の問題に手を付けられないのは管理組合でも同じ・・・

 島を買う話についてこれ以上のことは棚に上げよう。今度、思わず考えたのはこうした難しい問題がいくつも並んでいる時にどこから手をつけるかという点に、管理組合にとって必ずしも他人事とは言えない感じがあるのを考えたいからだ。

 管理組合は法律概念に支えられた組織ではあるが、マンションの居住実感からいえば、まぎれもない生身の人間集団である。だから、あるべき姿を観念論で語るよりも、いま目の前にある問題をどうするかという現実論の方が差し迫った課題になる。そういう感覚がないと、管理組合はたちまち運営しにくくなってしまう。管理組合の役員を務めたことがある人なら、誰もがそうした実感を経験しているはずだ。

 管理組合の役員になると、何が見えてくるか。何を求められるか。

 今日ウチのマンションで起こったことをどうするか、ずっと手つかずのままになっている問題をどうしたらいいか、いずれ避けられなくなる例の件をどう片づけるか、前年度から引き継いだ課題をこれ以上放っておけるか・・といった感じの仕事がずらりと並ぶことになる。

 どれから手をつけるべきかを見極めながら、今の任期で残された長さと自分たち自身の力と余裕を考えあわせて悩み続ける。これが、ありのままの実情だろう。

 結局、これは取り組むべき課題の優先度の問題である。いくつも問題が並んでいる時にどれから手を付けていくかという着手順序の問題だ。たいていの場合、目前の問題と対応できる条件はアンバランスなことが普通だから、すべてに着手できないことが多い。

 そうなれば、まず、どれから順に手をつけるかを考えなければならない。その上で、そうした判断を説明してマンションに住む人たちの理解を得ることが必要になる。総会でも理事会でも、物事を決める場所では必ずこの考え方が必要なはずだ。

 こうしたことは、実際上、とりわけ理事長の役目になるのだが・・・。
 
問題の取り組みは組織レベルでという原則と問題意識の在り方で違うのでは

 難しいのは、こんなふうにいくつも並ぶ問題を理事会の全メンバーが同じように理解するとは限らない点だ。同じ問題でも理解の仕方は人によってかなり違うことが普通だから。

 その違いは、理事になった人の年齢や仕事、マンションの居住歴、家族構成、性格などを反映する。自宅に帰れば毎日何かと近所の住戸の人へ気も使う事情もある。

 こういう有形無形の条件が複雑に絡んで、人の数だけ意見が分かれるようになる。まして、理事でない普通の居住者や不在の区分所有者となれば、その多種雑多ぶりはさらに広がる。

 管理組合の理事長には、いつもこういう意見のバラつきの広がりを考えながらどうにかして一つの方向にまとめられる感覚が求められる。

 理詰めに考えるなら、方向さえ見つかればいいのだ。最終的な方向がはっきりした後は手順手続きに絞られてくるのだから。法律や管理規約などのルールに決まった展開をフォローすればいいのだから。

 しかし、実際はそう簡単ではない。ここにたどり着くまでの段階が一様ではないからだ。どんな人がいてどのくらいの幅で意見が違うかを確かめることがまず手始めだが、そうした意見の違いのまとめ方などはルールなど見ても確かめようがない。会社の会議ではないから近所づきあい特有の気を使ったやりとりにもなる。

 人の考え方の幅広さを見極めるといった現実的な問題には、ルールで示されるような画一化した方法ができない難しさがあるのだ。

 理屈で語られる場合に、よく口にされる「合意形成」とか「コンセンサス」という問題は、こう考えてくると、実は手順手続き以前の意見の幅広さの確認にこそ、本当のポイントがあることに気づく。

 ここに気がつかないままルールだけを論じると、もやもやした意見を固めないまま空疎な手続きだけで形式的な整理をするという白々しい結果にしかならない。

 必要なことは、まずルール以前の幅広い意見の広がりを確かめる確認であり、それに続く時間と手数をかけながら一つの方向への集約である。確認と集約というこの二つに気づくことが必要になる。意見の確認と方向の集約の両方がなければ、うまくいかないのだ。

 島を買うと聞かされて戸惑った気分が消えないまま、いろいろ考えるうちに、そんなことが浮かんできた。もう少し考え続けてみたい。

| muraitadao | コラム | 11:02 | comments(0) | trackbacks(1) |
原発再稼働のニュースで連想した管理組合の物事の決め方

 北朝鮮ミサイル失敗の日に固まった原発再稼働判断の異例な早さ

 詳しいことをまったく知らないものの、うまくいくはずがないと思っていた北朝鮮のミサイル打ち上げは案の定アウトだった。13日朝のラジオで打ち上げのニュースを聞いてからしばらくはいったい何がどうなのかさっぱりわからないままだったが、そのうちに何時間か過ぎてどうやら失敗だったらしいことがわかった。
 ところが、同じ13日の夜、今度は原発再稼働の方針が決まったというニュースが流れた。翌14日の新聞もトップはこのニュースだった。

 何日も前から経過が伝えられていた北朝鮮のミサイル打ち上げについては、実行された時にどんな対応が行われるかのあらましがニュースで流れていた。配置される兵器とか自治体の連絡体制などはニュースでも報じられていたから。

 しかし、いちばん肝心な《起こった事態の把握》が誰の判断なのかを伝えたニュースはなかったような気がする。打ち上げからしばらく過ぎて失敗とわかるまでのわかりにくさには、このことが関係していたのではないか。

 原発再稼働の方は、かなり前から議論や情報があったから、北朝鮮のミサイルとは対照的だったといえそうだ。その点を考えると、同じ日に続いた二つのニュースには微妙な違いがあったと思う。国際的な影響が広範囲な北朝鮮のミサイル打ち上げに比べれば、原発再稼働の方は日本国民だけが当事者なのだから、課題を認識して判断するのは日本自身だけの課題になる。ただし、問題を具体的に認識して判断するのは最終的に政治レベルの仕事になるという点ははっきりしている。

 だが、これは世論の方向次第で実質的に決まる。世論と政治との間には、選挙というステップが介在する。世の中を度外視した政治レベルの認識も判断もあり得ないからだ。

 賛否が相半ばする原発再稼働の是非は、その点で判断の難しさが際立つ。早急な判断は容易ではないと前からずっと思っていた。しかし、北朝鮮のミサイル打ち上げ失敗のニュースに明け暮れていた日に、難しいその課題の判断が下されたらしい。ついこの間まで、何日も何日も続いていた消費税論議を考えると思いがけない早さで結論が出たことに驚いた。

 まさか、方針決定の手続きに間違いはないなどというのではあるまいが・・・。

決めるための手続きよりも決めたことの内容を重視しない管理組合は・・・

 賛否が分かれて簡単に決められない課題をどうするかという点を考えていると、どうしても管理組合の意思決定システムが思い浮かんでくる。問題を理解してどう取り組むかという意思決定を下す点では、原発再稼働のような国家レベルの問題と管理組合という限定的な生活レベルの問題にも基本的な共通点があると思うからだ。

 こういう場合《物事を決める》という課題への対応を《決め方》という手続きで考えると間違いを起こす。大事なのは《決め方》という方法論ではなくて《決めたこと》という決定内容だからだ。

 わざわざこんなわかりきったことを持ち出すのは、何かにつけてこの点の勘違いないしはすれ違いが多いからである。何か揉めたとき「手続き的には正しい」といった言い方が珍しくない。政治レベルでもそうだが、管理組合の世界では目に余るといいたくなるほどこの感覚が目立つ。

 委任状だらけで出席者が僅かな総会はその典型である。物事を決めるための総会で出席者がいかに少なくても委任状という名の紙があれば有効だというルールが、この不可解な光景を正当化している。意思決定の際に決定手続きの方を決定内容よりも重視するという発想から生まれた光景だというしかない。

 いくら嘆いてもルールがこの事態を正当化しているのだから、こんな寒々とした総会でも議決は有効となる。しかし、その結果、議決事項の実行段階で、有形無形・千差万別な摩擦が生まれる。摩擦はすべて《決めたこと》の理解不足から生まれる。定番中の定番というべき役員選びや大規模修繕工事など、その例は山ほどある。いずれも、実質的に理解しないまま決定を任せる無関心な人を当てにした総会でも有効となるからだ。《決める内容》ではなく《決め方》を重視する感覚の産物というほかない。

 《物事を決める》のは《物事を理解する》ことで裏付けられていなければならない。わかっていないことをどうすればいいかは誰にも出来っこないからだ。決める前提となるわかり方は、しかし、判断の手掛かりとなる情報が事前にどのくらい発信されるかで決まる。

 総会の形式的な有効性を過信した管理組合が大規模修繕工事などの実行で難航するのは、この点の認識が不十分だからなのだ。総会の議決は事前の広報が不可欠だと20年以上前から続けているのも、ここに理由がある。多くの管理組合でいまも広報体制不備のままルールを偏重する形式論が多い傾向は誰にも否定できまい。

手続き重視の発想が実態をさらにこじらせることはないのか

 物事への取り組み方をめぐるこの気がかりは、マンションの管理組合だけのことなのか。マンションの外側にこういう形式論はないといえるかどうか。

 意思決定という行為は《決めたこと》の内容をどう理解し、どういう結果が生まれるかという想像力で意味が決まると思う。しかし、大抵の人にはその理解と創造のための手掛かりがないから、それを知らせるための情報が必要になる。逆にいうと、知らせ方が不十分な状態での手続きは正当性が成り立たないことになる。知らせないまま決めると、かえって事態がこじれて難しくなる。

 マンションという集団的な居住形態で起こる問題の取り組み方を30年近く見続けてきて、いまあらためてそれを実感する。

 原発再稼働のニュースを聞いた感想がこんな実感にまで広がるのは、考えすぎだろうか。

| muraitadao | コラム | 16:29 | comments(0) | trackbacks(0) |
マンション管理ルール検討会の資料を見て気になったこと
「理想はわかるがやりたい人が自由にやるべき」という委員もいたとは・・・

 今年の1月、「マンションの新たな管理に関する検討会」という公式チームが発足した。国土交通省のプレスリリースによると、管理組合の専門家活用とかガバナンス強化、第三者管理方式の枠組み作りなどが検討事項となっており、今後の予定には昨年7月に改正されたばかりの標準管理規約の見直しも掲げられている。

 この検討会では今までおなじみだったメンバーも一新された。斬新な議論を期待しているが、その経過は一般の新聞テレビには出ないから業界新聞などの簡単な記事が唯一の情報源となる。

 今のところ、この検討会は着実なペースで開かれているらしい。3月16日に開かれた第3回の検討会の様子を3月25日付の「マンション管理新聞」が一面トップで伝えた。この日はいろいろな意見が出て白熱化したらしいことがうかがえる。

 ところが、この記事の中に次のようなことが出てきたので、仰天した。記事の終わりの方で、今後の基本的な方向として不在家主の管理組合参加責務が示されたところ、『一部の委員から「理想は分かるがやりたい人が自由にやるべき」「所有者だからといって役員として参加しなくてはいけないのか」という意見も出た。』とあったのだ。これには驚いた。ショックを受けたといってもいい。

 なぜか。分譲マンションの賃貸化という古くからの問題に苦労してきた管理組合の現場が一番苦しんできたのは、まさに、こういう意見の持ち主が多いからなのだ。こういう考え方の人間でもメンバーとして扱わなければならない仕組みの管理組合というのは、いったいどういう性格の組織なのかという根源的な疑問に多くの管理組合が何十年も前から苦しみ続けてきたのだ。

 そんな感覚の発言が、まさか委員会のメンバーの口から出たとは・・・・。信じがたいというしかない。

資料が物語る管理組合の組織像と現実との落差

 いったいどんな流れの中で、こういう意見が出てきたのかを知りたくて、国土交通省のプレスリリースを確かめてみた。議事録を見たいと思ったからだ。しかし、「本検討会の議事録は、後日ホームページで公開する予定です」と書かれているだけで見つからない。せめて会議資料だけでも見たいと思い、1月から3月までの3回分の会議資料に目を通してみた。

 全部をきちんと読んだのだが、管理組合の組織実感からは程遠い感じが強い。一例をあげよう。

 2月17日の第2回目資料は21種類もあるのだが、その最後の方に「委員提出資料」というのがある。「マンション管理における専門家の活用について」というタイトルだが、(試論)とあるから個人的な見解のように思われる。ただし、執筆者はわからない。ところが、この筆者不明の「試論」が3月16日の第3回資料ではまったく同じ内容のまま「資料1」として10種類の資料の筆頭に出てくる。

 試論変じて資料となったこの一文の内容については、まぁ意見を控えよう。しかし、「委員」というのがいったい誰なのか、「試論」としてオプショナルに配布された意見が次の回で正式の検討資料となった事情はいったい何だったのか、ほかの委員の意見はどうだったのかなどは、やはり知りたい気がする。

 ここはどうしても、やはり後日の議事録に期待するしかあるまい。

いまの組織イメージで管理組合は対応できるか。高齢化は、防災は・・

 それにしても、資料を通読して浮かび上がってくるのは、管理組合の相も変らぬ組織イメージである。区分所有法を前提として考えられている管理組合組織のままでは対応できないケースが山積している実情がどうしても気にかかるのだ。

 区分所有法による管理組合は区分所有者自身がマンションに住むことを当然の前提としている。だから区分所有者イコール居住者となる。その居住者の実像はほとんどの場合ファミリーだったから、パパがいてママがいて、子供が一人いてというイメージがマンションライフの光景だった。

 しかし、いまやパパもママも、年老いた。かつての子供はロスジェネ世代。ステータスシンボルだったマンションも色あせて古くなった。

 そうした年数経過の中で、区分所有法に基づく管理組合の組織イメージだけが、いまなお古びていない。 組織のイメージが同じままで実態に当てはまらなくなれば、どうしたって現実との間にギャップが生まれてくる。管理組合の図式が現実離れし始めていると思わざるを得ない。

 遠慮なくいえば、管理組合という組織を想定する発想の前提が制度疲労を起こしている。だからこそ、「マンションの新たな管理に関する検討」が必要になり検討会を公式に設けて議論を始める必要があったのではないか。でも、それにしては…と思う。

「ニッポンのジレンマ」をみて管理組合の物事の決定の難しさを再認識

 こんなことを考えていた3月31日にNHKのEテレが放送した「新世代討論・ニッポンのジレンマ」を見た。深夜の番組だったから、録画したものをじっくりと見た。

 1970年以降生まれの若い論客たちである飯田泰之、宇野常寛、荻上チキ、萱野稔人、滝本哲史、与那覇潤、小川仁志など10名のほか、会場の参加者も入った熱っぽい2時間だった。ときに啓発され、ときに反発を覚え、ときに当惑し、ときに理解できなくなりながら全部を見た。

 見終わってふと思ったのは、管理組合で異なる世代の人と会話をするときの気分だった。いまマンションには増加しつつある高齢者といっしょに若い世代の人たちがいっしょに住んでいる。若い人と話す時に、同じ生活条件を共有しながらどういう生活感覚なのかがわからない相手と話している不安な気分が「ニッポンのジレンマ」を見て、少しだけ納得できたような気がする。

 少しだけというのは、テレビのスタジオにいない圧倒的多数の人が一体どうなのかが気になったからだ。同世代なら、政治家も役人も会社員もジャーナリストも派遣社員もみんな同じなのか。それとも・・・。

 年代も仕事も生活歴も家族構成も、みんな違う人が生活条件を共有しながら住むのがマンションという集合住宅の本質だから、こういう生活条件の違う人たちの混在した状況が管理組合という組織のステージになる。

 昔はそうした居住者の違いがそれほど気にはならなかった。「ある程度の違い」という感覚ですべて同じ管理組合のメンバーだからという一点に収斂されてしまっていたから。

 しかし、今まで隠れていたそういう実情が顕在化する時期がやってきた。これが、いまの管理組合の実情だ。高齢化も防災も、こう考えないと答が見つからない。

 全てのマンション管理関係者がこの点に気づいてくれるのをひたすら待ち続けているのだが・・・。

| muraitadao | コラム | 07:34 | comments(2) | trackbacks(1) |
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