村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
「美しい国」で、これ以上「美しくないこと」が起こらないように:もっと集合住宅に住む不安を減らすための議論を
「美しい国」がほんとに美しかったかどうか・・・:美しさより恐ろしさの方が強い四月だった

 前回のブログを書いたころ、まだ桜はどこも見ごろだった。折りしも選挙の時期。CMまがいに聞かされる「美しい国」が本物かどうかを考えるのには絶好のシーズンだった。 

 しかし、実感からいえば、美しさよりも恐ろしさの方がよくわかる日々だった。普通に暮らしている市民には何年かに一度しかない民主主義確認の機会が間近なこの時期に、現職の市長が後ろから銃で撃たれて命を失うなどということを、一体誰が予想したか。市中の衆人環視の中で起こったその事件の動機を理解できた人がいったいどこにいるか。そして、それからまもなく東京・町田の都営団地で起こった半日がかりの銃撃戦。ごく普通のありふれた集合住宅での生活風景の中に、いつのまにか銃撃事件発生の恐怖が紛れ込んでいたことを、誰が思い浮かべたか。

 二つの事件の怖さが物語るのは、きわめて普通の日常生活の中で、振り向けばすぐ横にいる人間が銃という武器を持っているかもしれないという不安だった。見ただけでは、誰にも、わからない。わからないからこそ、怖い。怖いものが目に付かない形で紛れ込んでいるところに、美しさはない。

「銃撃事件の犯人が自治会の会長だった」ことが何を意味するか

 新聞報道によれば、都営団地銃撃事件の暴力団組員は住んでいた団地の自治会で会長をしていたとある。この記事には、会長とはいっても、まともに仕事をしないために、ほとんど副会長がその役目を勤めていたこと、自治会費も滞納していたことが出てくる。そして、この記事の最後は次のような話で結ばれている。「暴力団関係者だという話はこの団地の中では有名だが、立ち退きを求める話はなかった」

 記事に出てくるのは、これだけだ。ありそうな話だというよりも、むしろ、どこにでもある可能性が考えられる話だ。そこが、怖い。怖いのに、今までめったに議論されてきたことがなかった。問題があるのに問題に向けようとする人が、ほとんどいなかった。だから、さらに怖さが大きくなる。

怖さ・その1:たった一枚だけの壁と床を隔てた向こう側に誰がいるかわからない不安

 怖さには、二つある。もう昔からセミナーでも語り続け、書くものにも取り上げてきたことだ。第一は、都市住宅の相互密着度がもたらす生活面への相互の影響度の大きさである。集合住宅では、たった一枚の壁と床の向こう側の人の住み方や暮らし方からストレートな影響を受ける。それでも、しかし、ふだんからその暮らしぶりがわかっていて受ける影響なら、理解できる余地もある。だからこそ、その理解を深める人間関係の交流が、余計な不安を感じなくてすむ生活の裏づけとなる。・・・といった当たり前のことが、もう、どこでも、まるでだめになっている。

 同じところに住んでいる人と会っても、声をかけない、目をあわせない、表札も出さない・・・。こういう感覚は、500万戸に及ぶ分譲マンションでも同じだ。町田の都営団地だけの話ではない。集合住宅は、どこも同じである。
 
 一戸建て住宅だって、都市圏では似たようなものだ。奈良県で起こった「騒音オバサン」事件を考えるだけで十分だろう。今や、近所と没交渉の生活感覚は日本中を覆っている。

怖さ・その2:別に自分が引き受けなくても誰かがやってくれるからと考える人ばかりで、実は、誰ひとり手も出さず汗も流さない不安

 怖さの第二は、もっと根が深い。自治会という組織の理解度の問題だ。いま日本中の組織の中で、その本質の理解度があいまいさが際立っているのは、自治会ではないか。自治会というのは、言葉どおり参加メンバーの「自治意識」を反映する。自治ということの意味の深さを知っていれば、自治会はもっとこうした不安に対応できる力を備えることになるだろうし、逆に、自治は、年に何度かのお祭りの世話をするだけだと考える程度なら、自治会もまたそのレベルになるだろう。どちらにしても、自治会は、法律や何かでそのあり方を決める性質の組織ではない。

 実は、この自治会を理解する組織感覚が、分譲マンションの管理組合のあり方にも大きく影響するようになってきている。今度の銃撃事件のようなことが分譲マンションで起こらない保証など、まったくない。なければ、管理組合もまた自治会と同じ問題に直面することになる。しかし、その管理組合には、いまだに区分所有法だけを信奉する空気が強い。「所有」という権利概念は異常なほど鋭敏だが、法律に依存しない発想の問題にはまるで関心がないという感覚が、日本中の分譲マンションを覆ってはいないか。

 この四月に起こった事件を考えると、集合住宅で起こった銃撃事件の怖さには、事実上、都営団地とか分譲マンションの区別がほとんどないことに気がつく。その認識を前提にした議論がもっと必要ではないか。

 結局のところ、「美しい国」で、もうこれ以上「美しくないこと」が起こらないようにしてほしいというところに落ち着くのだが・・・・。
| muraitadao | コラム | 08:14 | comments(2) | trackbacks(1) |
事情があって、今月引っ越しました。今年2月に完成したばかりの新築分譲マンションを借りました。
引越しの数日後に第一回目の管理組合総会(設立総会?)があり、賃借人として参加させてもらいました。
さすがに賃借人の参加は私一人だったようです。
60戸強のマンションで30戸ほどの参加でした。夫婦での参加も結構ありました。
この総会で第一期の役員が決まったようです。
9つに分けたグループが輪番で役員になり、また任期は2年(半数改選)のため、最後のグループは15・16年後の就任となります。
そんな始まったばかりの管理組合にいかに関わっていくか思案中です。
私がこのマンションにいつまで住むか皆目見当がつきませんが、この町は生まれてからずっと住んでいた町であり、マンションの周りに住んだり店を出したりしている人も大勢知っている事もあり、どんな事があっても他人事ではありません。
このマンション(住人)が地域にうまく溶け込む手伝いをするのが最初の課題かと考えています。
| ichizawa | 2007/04/27 9:13 AM |
60戸のマンションの最初の総会で30戸の参加でしたら、希望を持てるような気がします。地域との関わりを大事にお考えだとあり、まさにそれこそが、今までの議論ではほとんど見られなかったマンション管理の大きな命綱になると思います。最初の役員さんたちが2年の任期の間に、地域と60戸のマンションとの間に、どんな橋をかけられるかに関心が生まれます。このコメントの続きが、とても楽しみです。
| 村井忠夫 | 2007/04/27 3:44 PM |









http://murai.realestate-jp.com/trackback/340359
表札と防犯
私が提唱する“マンション版割れ窓理論”の内容の一つは、「“ほころび”があると、犯罪を呼び寄せる」です。ほころびの具体例として、ゴミの散乱、手入れが行き届いていない植栽、だらしない自転車の置き方…などがあります。 今回は、“無表札”を挙げましょう。 犯
| マンション展望 | 2007/12/01 10:13 PM |
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