村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
「億ション」は最高が1億円なのか、最低が1億円なのか、それとも・・・:管理の基本原則は何億円でも関係ないが
「億ション分譲62%」というニュースの読み方がわからない

 朝日新聞に、「億ション分譲62%増加」という見出しの記事が出た。(2月11日)ふと思い出して、新しく出たばかりの「広辞苑」は「億ション」をどう説明しているのか確かめてみた。ちゃんと、この言葉が出ている。『(マンションの「マン」に「万」を掛けて)分譲価格が1億円以上のマンションをいう俗語』。なるほど、と思わせる説明だ。「大辞林」の方は、もっとストレートでわかりやすく『[「マンション」を「万ション」としゃれて]俗に、一億円以上の分譲マンションのこと。』となっている。

 いつも考えるのだが、「億ション」という言葉は、わかるようで、実は、よくわからない。国語辞典の説明も、仔細に執念深く考えてみると、やっぱりわからなくなってくる。分譲マンションというのは、一戸ずつ販売する集合住宅だから、それぞれの住戸価格はどうなのかという点が、どうにもわからなくなってくるのだ。

 例えば、30戸の分譲マンションのうち、1戸でも1億円以上だったら「億ション」というのだろうか。全戸が1億円以上でなければならないといった物差しがあるなら30戸のマンションでは全戸が1億円上だろう。そうなれば、間取りや階、広さに対応して住戸ごとの価格差が生まれるはずだから、1億円は最低価格であって高いものは5億円などということがあるかもしれない。マンションは集合住宅であって、実際の状況は、個々別々の住戸の様子で大きく決まる実情がある。だから、「一億円以上のマンション」などといっても、その価格が全住戸をさすのか、一部分の住戸をさすのかがわからないと、本当のところが理解できなくなる。

 そう考えていくと、国語辞典の説明も、実は本当のことが説明できたことにはならないといえるだろう。そのわかりにくさがあるから、「億ション」のニュースも読み方がわからなくなってくる。

「億ション」の全住戸別価格差は確かめようがあるのか

 現実的に考えてみれば、全住戸の価格が1億円以上というケースも確かにあるだろうが、そうではなくて、「1億円以上」もあれば「1億円未満」も混在するケースの方が多いと考えた方が現実的だろう。

 試みに、手元に保存している4年ほど前の超高層マンションの大きなチラシを出して見た。超高層マンションイコール億ションとはいえないが、高額物件が多いから、億ション住戸が多いことは間違いない。そうしたチラシの一つ。「湾岸の夢。天空の贅。」という大きな字が、超特大アート紙のカラー写真に重なる。その下に目を移すと、「銀座を抱き、台場に煌く。・・・」などというのも目に入る。地上27階建て400数十戸の物件だが、販売価格未定となっている。実は、この手の物件広告には「販売価格未定」というのがかなりあるような気がする。たまに価格が表示されているケースがあっても、第何期分譲と僅かな戸数だけが表示されたあとに3,000万円〜8,000万円などとなっているものが多いから、結局、分譲住戸全体の価格はわからない。しかし、わからない住戸価格の中に「1億円以上」が混じっている可能性は高いような気がする。

でも、買ったあと「1億円以下」も「1億円未満」も同じレベルの発言権を持つなんて、そんなことができるのだろうか

 きれいごとをいう気はないから、まぁ、その辺は、これ以上いわないことにしよう。激しい市場競争を考えれば、営業戦略上の工夫が生まれるのは仕方がないだろうし、その工夫の中に、こうした「わかりにくさ」が混じりこむこともあるだろうと思うから。

 でも、そのマンションの住戸を買った人となると、微妙な点があるのではないか。全戸が同一価格ということはもともとありえないのだから、最高が「1億円」なら大多数の住戸では「1億円未満」が圧倒的に多くなるだろう。最低が「1億円」のマンションなら、最高住戸価格は想像のほかだ。

 どっちにしても、価格差は経済力の反映だから、懐の暖かい人と暖かくない人とが一棟の建物でいっしょに暮らすことになる。そこに出てくるのは、マンション管理の原則だ。

 気になることは、実は、ここから先だ。何しろ、現在のマンション管理の基本原理は価格や住戸物件の違いをまったく反映していないから、マンションごとにオリジナルの仕組みを考えていかなければ手が打てない。

 しかし、それを考えようとすると、いまだに日本人が最も苦手な意思決定のハードルにぶつかることになる。自己主張が強すぎて、いつまでたってもモノが決められない・・・。

 でも、もう、やめよう。今日は、棚に上げておくことにしよう。今まで誰もいわなかったのだから、わざわざこれ以上面倒なことをいうまでもあるまい。そうだ。やはり、それが一番いい。
| muraitadao | コラム | 06:23 | comments(2) | trackbacks(1) |
村井先生からお叱りを受けそうな解釈ですが、
「億ション」≒「オークション」

「駅近!タワーマンション!この指止まれ!」で分譲されて人気があるから、セリ上がりで最上階の「億ション」成立。

下層階はオークションが終わった後、お手頃価格で取得できます。

営業戦略上の工夫「わかりにくさ」は分譲時の一瞬の事です。
購入者は、「億」以上・以下関わらず、その後の長い年月を区分所有者として歩まなければなりません。

下層・上層の区別は「市場原理」ではなく「団体原理」の混乱から新しい秩序が生まれることを期待したいと思います。

歴史に残る集合住宅の中には、「外敵から身を守るために下層階に強者、上層階に弱者を置いている」と聞いた事があります。
村井先生だったように記憶しています。

棚を下げてしまったでしょうか?
すみません。
| kazz | 2008/02/16 2:56 AM |
kazz様。ご意見にそれほど違いはないと思います。「営業戦略上の工夫による「わかりにくさ」が”分譲時の一瞬のこと”だと考えるのも、同じです。問題は、そのあとです。kazzさんも書いておられるとおり、「購入者は・・・その後の長い年月を区分所有者として歩まなければならない」ことが、気になるのです。売り手には”一瞬のこと”でしょうが、買い手は長い年月にわたってその影響を受け続けるわけです。プラスの影響ならいけれど、マイナスの影響を受け続ける場合もあります。これまたkazzさんと同じ意見になるのですが、問題は「市場原理」と「団体原理」のギャップにあります。矛盾するこの二つの原理を、分譲マンションという建物の中で折り合いをつけることが、管理組合にできるのだろうかと、考えるのです。
なお、「外敵から身を守るために下層階に強者・・・」ということは、私はいったことがありません。外敵から身を守るためにマンションが”鉄の要塞”になってしまっていいのだろかということが昔からがずっと頭にありますし、今でも、その疑問を語ることがあります。しかし、一つの生活共同体の中に「強者」と「弱者」の区別が生まれること自体が私には容認しがたいので・・・。
「億ション」という言葉自体が、曖昧ですが、それだけに、いろんな考え方が並ぶ可能性がありそうです。私の気づかなかった視点をkazzさんのご意見からいただいたような気もします。ありがとうございました。
| 村井忠夫 | 2008/02/16 10:42 AM |









http://murai.realestate-jp.com/trackback/592302
消費者の“責任”
村井忠夫氏が、ブログ(下記URL)でマンション価格の「わかりにくさ」が管理の問題につながることを指摘されています。たしかに、マンションでは、色々なことがわかりにくいですね。 でも、わかろうとしない消費者にも問題がありそうです。「姉歯事件」が発覚した時、
| マンション展望 | 2008/02/16 4:12 PM |
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