村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
「大阪都」が実現しなかった機会にマンション標準管理規約の33年間を振り返ってみると・・・
トウキョウミヤコ、新体制、国民精神総動員、滅私奉公・・・・

 5月17日、大阪都構想の賛否を問う住民投票が否決となった。大阪府や大阪市の形を東京都のような仕組みに変えたいという構想には、ずいぶん前から何度も聞くたびにいつもよくわからなくなってくる点があった。

 大阪がモデルと考えていた「都」という仕組みを聞くたびに思い出す少年時代の記憶があるからだ。

 83年前に生まれたところは、東京府豊多摩郡渋谷町。そのあと尋常小学校は東京市渋谷区で、間もなく大森区に転校した。

 この時期、小学校で習ったこととラジオなどで聞き覚えたことがごっちゃに混じりあって、少年期の記憶はずっと後まで混乱したままだった。

 だから、いまも思い出すのは断片的で切れ切れのとりとめないことばかりで大したものは一つとしてないのだが、バラバラなままの記憶は今もそれなりに鮮明である。

 小学校低学年の記憶は宣戦布告のラジオニュース、最初の東京空襲の順に展開する。

 そんな時期に、ある日ラジオで聞いたのが太田正孝という人の話だった。「これから東京市は東京都、トウキョウミヤコになるのであります」と繰り返していたのを覚えている。

 太田正孝という人がどういう人だったのかはまったくわからないままだったのに、その時に聞いた名前の記憶だけが頭に染みつくように残った。

 このとりとめない記憶は、それっきりになった。トウキョウミヤコになった頃、父の転勤で東京を離れたからだ。

 ※注)戦時中の1943年(昭和18年)7月1日に東京市と東京府が廃止され、「東京都」が設置された。

 だが、長い間のこの記憶に勘違いがあったことに、ついこのごろ気づいた。東京府が東京都に変わった時の知事は官選で、別人だった。《トウキョウミヤコ》という奇妙な言い方が頭に染みついたあのラジオ放送の太田正孝という人は大政翼賛会の幹部だったらしい。そうとは知らず、70年以上も勘違いしていたことになる。

 いやはや、何とも・・・。

 しかし、その勘違いに気づいてからあらためて思い浮かんできたのは、この《トウキョウミヤコ》の放送を聞いたころ刷り込まれるように覚えたいろんな言葉だった。国民精神総動員とか、新体制とか、滅私奉公とか・・・。

 まだまだあるが、もうやめよう。気分がわるくなってきたので。

5月17日のニュースが 時代背景を視野に入れぬ形だけの制度論の意味を考え直す機会になれば・・・

 大阪都構想のモデルになっていたらしい「東京都」という仕組みは、まぎれもなく戦争中の国民精神総動員体制の産物だったことに思い当たる。戦後生まれの人がずっと後になってこの仕組みのメリットに気づいたとしても、この仕組みが生まれた時代背景を無視するわけにはいかないだろう。

 そう思うから、《トウキョウミヤコ》で急に身近になった東京都という仕組みが《撃ちてし止まむ》という大きな字のポスターがあちこちで目に入る時代に生まれたことに、どうしてもこだわらざるを得ない。

 制度や仕組みは時代背景の産物だからだ。その仕組みが考え出された時代の状況を考えずに単なる言葉や形だけをまったく異なる時代に当てはめて応用しようとするのは、どう考えてもかなり危なっかしい気がする。
                         ☆
 だから、大阪府民でもなく大阪市民でもないが、72年前に東京府民、東京市民から東京都民に変えられてしまった人間にとって、大阪都構想が否決された5月17日のニュースには、正直ほっとした感じがあった。

マンション管理の仕組み。生まれた時の6倍にストックが増えたいま、見直さなくてもいいだろうか

 制度や仕組みが時代の産物であることを考えると、マンション管理の仕組みも例外ではないことに気づく。マンションに限らず、もともと「管理」には時間経過への対応という大きな意味があるから、仕組みやルールと時代背景との関連確認は絶対条件となる。

 この点を具体的に考える手がかりがある。

 国土交通省が公開している便利なデータの一つに「全国のマンションストック戸数」というグラフがある。マンションの新規供給戸数をまとめた縦棒グラフだ。毎年分の新規供給戸数が累積されたストック戸数が折れ線グラフでいっしょに示されている。

 いまサイトで見られるのは昭和43年から平成26年までの毎年年末の数字だ。建築着工統計がベースになっている。年数経過と密接に関連する管理という課題の幅広さを考える時には46年間の経過が1枚のグラフにまとまっているので非常に便利な資料である。

 このグラフを使って、管理を考える対象となるマンション戸数の増え方の経過を、標準管理規約に焦点を絞りながらみていくと、非常に興味深いことがわかってくる。以下に、その要点をまとめて示そう。【年】のすぐ後の数字は新規供給戸数、その後の数字はストック戸数である。

【昭和43年:このデータのスタート年:区分所有法制定後7年目だった】0/5.3
【昭和45年:マンションが住宅金融公庫融資の対象となった年】5.7/13.4
【昭和57年:標準管理規約が制定された年】12.4/118.5
【平成7年:標準管理規約第1回目の改正年:単棟・団地・複合用途の3タイプとなった】19.0/295.7
【平成9年:標準管理規約第2回目の改正年】18.2/333.6
【平成16年:標準管理規約第3回目の改正年】18.6/465.7
【平成23年:標準管理規約第4回目の改正年】8.2/579.6
【平成26年:標準管理規約第5回目の改正?】12.1/613.2

 以上のことを前提にして標準管理規約ができてからの経過をマンションストック戸数に重ね合わせてみると、次のようなことがわかる。

”現犂浜規約ができた時は、すでに100万戸を超えていた。これは、マンションがマイホームとして普及したため旧住宅金融公庫融資の対象となった年と比較すると、ストック戸数が9倍になる。

∪定から10年以上を経て最初の改正があった。それまで1タイプだけだったのがマンションの実態に合わせて3バージョンとなった。ストック戸数は制定された年の2.5倍になる。

その翌々年に第2回の改正があった。この年、ストック戸数は300万戸を超えた

ぢ3回目の改正までには10年以上の間があったが、ストック戸数は460万戸を上回り500万戸寸前となった。

ヂ4回目の改正までの間隔は前回改正よりも短くなったが、ストック戸数はさらに100万戸以上増えて570万戸を超えた

Δ海硫討妨込まれている改正は第5回目。前回改正からの間隔はさらに短くなった。600万戸を大きく超えた。ちなみに、このストック戸数は標準管理規約が生まれた年の約5倍、最初の改正年の2倍になる

Д泪鵐轡腑鵑旧住宅金融公庫融資の対象となってから今年で45年目。

 ストック戸数の変遷をみると、マンション管理という課題と年数経過の対応関係の重みが、あらためて浮かびあがてくる。しかし、これ以上のことは別の機会に述べたい。

 ただし、このブログでもはっきり言っておきたいことが二つほどある。

 一つは、標準管理規約が生まれてからすでに30年を超えて、この公的な基本ルールがそれなりに歴史的な重みを持ち始めていること。

 二つ目は、標準管理規約そのものが33年にわたって、新規供給団地の増減、近年いちじるしいい高層化・大規模化の広がりと大都市圏一部地域への偏り、ストック戸数増に比例した老朽化の進行などが、社会全般の高齢化・人口減などと重なりながら、つねに時代背景との対応関係を問われ続けてきたこと。

 どちらも、2015年の今、はっきりした再確認が必要である。
| muraitadao | コラム | 10:33 | comments(0) | trackbacks(0) |









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