村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
空き家対策論議の奇怪不可思議―まさかマンションに空き家がないと思ってはいないだろうが・・・
空き家の多さに今ごろやっと気がついたか・・・

 5月末、空き家の記事やニュースが目立った。社説に取り上げた新聞も多い。空き家対策特別措置法が全面施行されたことがきっかけらしい。

 空き家は、メデイアにとって取り上げやすい素材だろう。“荒れ果てた住まい”というイメージに物語性があるし、取材の仕方によっていろいろな語り方ができるからだ。おまけに、大都市圏や地方による地域差もない。

 事実、5月末の新聞記事やテレビニュースの伝える空き家問題はかなり変化に富んでいたし、それなりに興味深さがあった。

 だが、率直にいって「やっと空き家の問題に気がついたか」という感じは否定できない。住む人がいない住宅が空き家になるのは人口と住宅の数を単純に比較しただけではっきりする。戦後しばらくの間の住宅戸数不足が生んだ住宅の飢餓感は、データの上ではもう40年以上も前に解消されていたからだ。

 住宅戸数が世帯数を上回ったことを物語ったのは1968年(昭和43年)の住宅統計調査だった。この時から住宅問題は「量から質へ」変わっていく。そして、この頃から住宅産業が登場してハウスメーカーやマンションデベロッパーが華やかな広告で供給戸数を増加させるペースが続く。こうして、世帯に比べて多すぎる住宅を増やし続けて空き家問題の背景をつくりあげていく。

 空き家の問題は遥かな昔から静かにふくらみつづけていたといえる。新聞もテレビも伝えないから誰も気がつかなかっただけの話だ。だから、今ごろになってやっと気がついたか…という気分になるわけだ。

にもかかわらず 空き家の中にマンションが入っていることを伝えたニュースや論説がどこにもないのは・・・

 これ以上のことは、書かない。しかし、前からいつも気になっていて、今度もまた…という気分になったことが一つある。それは、ニュースや論説で空き家の中にマンションの空室が含まれていることを考えていないものばかりが目立った点だ。

 荒廃した空き家はつねに一戸建て住宅ばかりであって、「人の住まない住宅」はマンションには存在しないかのようだ。「人の住まない住宅」を一戸建て住宅では「空き家」といいマンションでは「空室」という言葉の使い分けがあるが、それはまったく関係ないだろう。マンションが住宅であることは明らかなのだから。

 今年2月26日に発表された「平成25年住宅・土地統計調査」では共同住宅という言い方でマンションを含めた住宅の中の空き家戸数の経過を50年前からグラフで説明しているし、国交省の「平成25年度マンション総合調査」にも3カ月以上の空室のデータが出ている。12年前の東京都発表「30年以上のマンションの実態把握のための調査」にも東京のマンションの6割で空室が発生していると書かれている。

 集合住宅でも空室という名の空き家がどんどん生まれていることは、もはや周知の事実なのだ。それがまさか頭に浮かばないほどの感覚でもあるまいに、メディアのニュースにも論説にもマンションの空き家のことはどこにも出てこない。

空室と呼ばれるマンションの空き家問題は一戸建て住宅と違って根が深いのに、その怖さを知らない人が多すぎる

 空き家とか空室という言葉の使い分けがあっても、無人化した住宅という本質的な意味は変わらない。しかし、マンションの場合は一戸建て住宅と違う本質的な難しさや怖さがある。《人が住まない》という状況のもたらす不安なイメージが一戸建て住宅と同じようにマンションにも当てはまると思ったら、まるで大違いである。

 なぜそう言えるか。無人化した住宅の実情を左右する《管理》のあり方が個人レベルの一戸建て住宅と集団レベルの集合住宅ではまるで違うからだ。汚れる、傷む、荒れ果てるといった状況への対応は、持ち主の個人レベルで良くも悪くも決められる一戸建て住宅と違って、マンションでは一から十まですべてのことを管理組合という組織レベルで取り組んでいかなければならない。そこが厄介なのだ。

 意見や利害が分かれがちな大勢の人間がふだん接触もない状態で物事を決めるということは、抽象的な言葉で綴られる法律の理屈がそのまま当てはまるほど簡単ではない。

 この厄介さは、マンションの管理組合が生きて生活している生身の人間集団であるという本質に考えが及ばない人にはなかなかピンとこない。

 でも、この厄介さが現実化すると、都市の一角に大きな建物が薄汚れた姿をさらしながら建ち続けることになる。その具体的な例が、ずっと昔から某政令指定都市の新幹線駅のすぐ近くに、今も建っている。

 それなりの規模の都市型物件なのにゴーストタウンと化したそのマンションにも法律論でいえば管理組合はちゃんとあるはずだが、具体的な存在ではないから維持管理機能の実現は難しい。

 このケースの発端は、無人化住戸の続出で管理費を払う人がいなくなり、管理組合が資金的に組織として成り立たなくなってしまったことだった。管理費が底をつけば電気が来ないからエレベーターが動かないし、大きな建物の中が昼なお不気味な暗い状態になる。電気が来なければ水道も駄目、ガスも駄目となって、生活できなくなり、無人化はますます進む。住む人がいないマンションになれば、もはや管理組合は六法全書の中の存在に過ぎなくなる。管理組合はまず何よりも人が住んでいてこその仕組みなのだ。

 管理組合は法律論による観念的な存在ではないことをいやというほど思いらされる具体例だ。
                         ☆
 だが、そもそもマンションではどの住戸が空き家となっているのかどうかが、確かめにくい。人が住んでいてもふだんお互いが没交渉になりがちだから、無人化していなくても静まり返った状態が普通の光景であるマンションでは住む人の本当の様子がわかりにくい。ドアを閉めたままで他人と接触したがらない人、単身者で留守がちな人、住んではいても病気で動けない人、事務所や倉庫など非住宅となって住む人がいない住戸などに混じって、正真正銘の本当の無人化住戸が生まれている可能性が実はかなりあり得るが、そこを確かめる意欲や方法は管理組合にない。

 せいぜい管理費などの費用が自動振り込みで入ってくるかどうかが管理会社にはわかるから、管理に比べればいくらかの違いはあるが・・・。

 そんな中で管理組合の組織条件はますます成り立ちにくくなっていく。
                         ☆
 マンションは一戸建て住宅と違って建物の規模が大きいから、空き家の問題の影響の大きさは一戸建て住宅とは比較にならないだろう。

 空き家問題の集積体と化したマンションが新たな都市問題の要因にならない理由は、考えられない。マンションが空き家論議の盲点であることをもっと多くの人が気づくべきではないか。
| muraitadao | コラム | 06:00 | comments(0) | trackbacks(0) |









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