村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
23年前の新聞記事:『現実に沿う見直しを/役割終えた標準管理規約』という見出しの既視感
23年前の新聞連載記事「マンション200万戸の課題」を見ていたら 今日の記事かと思うような・・・

 古い資料を整理していたら、19992年(平成4年)の住宅新報に連載された「マンション200万戸の課題」のスクラップが出てきた。23年も前の記事なのに、見出しに独特の既視感がある。

 この連載は長かったと思う。住宅専門紙らしい視点の記事で、いま見ても昨日今日そのままに通じそうな新鮮さがあるのにちょっと驚く。その5回目(1月24日)の記事には、次のような見出しがついている。7段の記事だから、それなりの力が入った内容だ。

 『現実に沿う見直しを 役割終えた標準管理規約』

 もう二昔以上も前なのにこの連載はマンション管理についてかなり多角的な視点で説得力のある問題を提起しているが、5回目では標準管理規約に焦点をあてている。

 高層住宅管理業協会が1991年(平成3年)に会員である管理会社を対象にしたアンケート調査で、57%が「標準管理規約は制定後9年余が経過しており、問題点を踏まえた見直しを希望する」と答えていたことからこの回の記事が始まる。

 以下、この記事には今もそのまま当てはまりそうなことが随所に出てくる。断片的にはなるが、いくつかの部分を紹介してみよう。

 《建設会社のEさんは「個々の特性に合わせた管理規約を、と思いつつも標準管理規約に引きずられがち」と反省を込めて語っており、あるディベロッパー幹部も「建設省のお墨付き、ということで区分所有者の了解を得られやすい」と「標準」一辺倒の背景を話す。》

 《もともと「標準」は・・・ルールづくりの“手本”としてつくられたものだった。・・・しかし、・・・「お手本」が実にうまくできていたため、これに頼りすぎ、社会の変化に合わせた応用、工夫の努力がなされていない。
「標準」はあくまで「標準」であって万能ではない。・・・》

「マンション」がまだ公認されていない言葉だったこの時期はバブル崩壊の直後だった・・・

 この記事が書かれたころ、「マンション」という言葉はまだ公認されていなかったから、法律はもちろん公式制度上どこにもマンションという用語表現はなかった。だから、標準管理規約の正式名称も「中高層共同住宅標準管理規約」となっている。

 標準管理規約ができた1982年(昭和57年)からまだ10年足らずだったこの時期は、今にして思えばバブル景気が崩壊した直後。山一證券や北海道拓銀がまだ崩壊する前だった。

 この頃、マンションのストック戸数がどのくらいだったかを国交省発表のグラフで確かめてみると、この記事の出た1992年(平成4年)は252万戸。このグラフの表題には「平成26年末現在 約613万戸」とあるから、22年間にマンションは2倍以上に増えたことになる。この記事が出た年に竣工したマンションは、もう大規模修繕工事を済ませただろうか。

 そんなことを考えながらこのグラフに表示されているマンションストック戸数の折れ線をみると、右上がりのカーブが目につく。カーブの裏側にはその分だけ建築後年数が長くなったマンションが増えていることがわかるからだ。

最初の改正で標準管理規約が単棟型など3タイプになってからももう20年近い・・・ 

 この記事が出てから4年後の改正で、標準管理規約は当初に想定されていた対象マンションのイメージは大きく変わった。その結果《一般分譲の住居専用で50ないし100戸程度の中規模で各戸均質のマンション》だけだったのが、店舗併用物件向けなどの《複合用途型》と数棟ある物件向けの《団地型》も含めた3タイプになった。

 この時からもう20年になるが、今もこの3タイプがそのまま生きている。

 まだ少なかった超高層マンションが今や「タワマン」などという流行語まがいの名前で呼ばれるほど多くなったし、ニュータウンはもはや過去の話になった今も商品力強化の産物として小戸数多棟型マンションをときどき見かけるが、そういう多様化したマンションの実情にも標準管理規約は今も3タイプで対応することになる。

 マンションの実情は棟数だけでなく戸数や階数でまったく異なるが、そこは工夫と知恵に任されているから、一棟だけである限り「単棟型」になるから30戸も300戸も。5階建ても50階建ても同じ作りのルールを使うことになる。2棟以上はすべて「団地型」だから2棟も10棟も同じ基本形をアレンジしなければならない。・・・

 「標準」という言葉が公式名称に使われるのだから、モデルとかお手本としての意味が含まれているのは言うまでもない。あるべきスタンダードモデルというのは時代とともに変化するのだから、標準管理規約がマンションの実像を前提にしているはずなのだが・・・。

 国交省のマンションストック戸数のグラフには、今年から新しい説明指標が入るようになった。「平成26年末現在 約613万戸」とあるところのすぐ下に「10年後の築30年以上296万戸」、そのまたすぐ下に「5年後の築30年以上216万戸」、さらにその下に「現在の築30年以上150万戸」と、どれもかなり大きな矢印型の書き込みがある。そして一番下にはやや小さめながら「新耐震基準以前106万戸」という書き込みもある。

 標準管理規約が最初の改正で想定していたマンションの実態はストック戸数が2倍以上に増えたことが管理の内容を左右する経過年数はもちろん建物構造や規模を多様化したことが国交省のグラフにもはっきり浮かび上がってくる。

 標準の前提となるイメージが激変していることが、誰の目にも明白である。


今まで標準管理規約をよりどころしてきた個々のマンション管理規約が過去の管理足跡を否定するわけにはいかない

 国交省のマンションストック戸数グラフに書き込まれている「5年後」とか「10年後」という年数は、事実上、それだけの年数にわたって標準管理規約をよりどころして管理組合が動いてきたことを物語っている。それだけの年数にわたる管理組合の足跡の延長線上に、これからの管理組合の方針が求められるのはいうまでもない。

 だから、過去の標準管理規約がデファクトスタンダードとして掲げてきた方向は、どこのマンションの管理組合の現場では絶対に無視できない。
                          ☆
 この夏にも改正が予定されている標準管理規約の内容、とりわけ「標準」という言葉の意味を今なお使い続ける理由がどういうふうに説明されるのか、いつになく注目したい気がする。「標準」という概念はそのまま実情認識のありようを物語るのだから、特にそう思う。

 苦労を重ね模索し続けながら組織の方向を探している管理組合は、間違いなくそう思っているはずだ。

 ついでにいえば、この夏はっきりする改正の内容をそれぞれの管理組合がどう受け止めるかも、注目したい。その結果をマンション管理士がどう読み取るかにも・・・。
| muraitadao | コラム | 07:00 | comments(0) | trackbacks(0) |









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