村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
大阪とギリシャが教えてくれた「物事の決め方」―マンションならどうなる?憲法改正ならどうなる?
住民投票と国民投票。ちゃんとした方法だが間接民主主義が健在ならこの方法の経験者がいない状態が一番いいかも

 6月の大阪、7月のギリシャ。今年は半年たらずの間に滅多にないケースを目の当たりに見せてもらった思いがする。

 住民投票と国民投票。都市や国家というスケールで、直面した問題をどうしたらいいか意見が分かれるような時に、住民や国民の意思を問う直接的な仕組みである点は同じだろう。

 だが、意見がまとまらない問題があったときに、いつも、こういう《みんなに聞いてみよう》という方式をとるのがいいとは限らない。こういう方法を考えるのはよくよくのことであって普通はこんな大変な方法ではなく、選挙で選んだ人に判断を任せるということになる。それが選挙を前提とした間接民主主義というものだろう。

 事実、住民投票とか国民投票は今までレアだったではないか。住民投票というのは時たまにあるが、法的拘束力がどうだとかいうわかったようなわからぬような理由で「なかったこと」にされるのも同然だったことが多い。国民投票に至っては、まだ誰一人として経験した人がいない。
                                                          ☆
 普通は意見が分かれるようなことがあっても、辛抱と時間と努力でいつかは必ず何とかまとまるはずだという一種の常識がある。何か問題があってもまとめられる力量が必ず《あるはず》だと信用された人たちが選挙によって政治家になっているのだから。

 そんな政治家たちが、投票した時に期待されていたようなまとめ方をしないで《みんなに聞いてみようよ》と言い出したりすることは、普通ならまず考えられまい。

 もっとも政治家だって神様ではないから、考えたこともなかった難しい問題にぶつかることがあるかもしれない。だから、そういうことも一応考えて《みんなに聞いてみよう》という主旨の住民投票や国民投票が制度として用意されているのではないか。

 でも、それは予想しなかったほど難しい問題があったときの話だ。十二分の議論も尽くしてほかには手段がないという時のことである。普通なら、そういうことはない。

 《みんなに聞いてみよう》という方法をとるのは、《みんなに聞いてみなければ、もう、どうしたらいいかわからなくて決められない》時の話だろう。

 5月の大阪とこの間のギリシャで、そこは、いったいどうなっていたのだろうか。とても気にかかる。

《みんなに聞いてみよう》という時の「みんな」はどのくらいいるか、聞かれていることは何か・・・・

 大阪でもギリシャでも、住民や国民を対象にして《みんなに聞いてみよう》という方法がとられた。賛否が分かれる問題をどうするか、すべての人に聞いてみようというのが趣旨だった。メデイアの伝え方も、そうだったと思う。

 だが、もめているのは政治の仕組みなのに《じゃ、ここは一つみんなに聞いてみましょう》というテレビのバラエテイまがいの薄っぺらい感じがあって、そこが何とも怖かった。

 《みんなに聞いてみよう》というのは誰にでも通用する言い方ではあるが、そのもっともらしさは方法のイメージだけであって、具体的に考えてみるとわからないことだらけだ。

 みんなに聞いてみよう というが・・・

 いったい聞くことは何なのか/みんなが同じように聞かれたことをきちんと理解できるのか/聞かれたことを理解するための手がかりはあるのか/みんなが一人残らず答えてくれるのか/答えなかった人がいたらどうするのか/聞いた結果がわかったあとはどうするのか/選挙で選んだ人はなぜ決めないのか・・・

 いちいち書くとキリがないからやめるが、よくわからないことが多すぎる。大阪でもギリシャでも「反対」が多かったが、その結果が出たあとの経過をみると、《みんなに聞いてみよう》という方法の実行にどれほどの意味があったのか、いくら考えてもわからない。

《物事を決める》仕組みは本当に役に立っているのだろうか。自分のマンションで、今の日本で・・・

 住民投票の結果を受けて「もう政治家は引退する」と明言した人が、それほど日が経たないうちに《ああいった》《こういった》とか言い出したというニュースが流れる。ギリシャでは唐突に国民投票をした後、その結果がどうなったのか普通の考え方ではわからないような駆け引きが毎日ニュースで流れる。

 物事を決める仕組みをルールに沿って実行した結果がどういう意味を持つことになるのか、さっぱりわからない。

 マンションだって、そうだ。大抵のことには対応できる仕組みが法律や管理規約で用意されているように、一応は見える。普段あまり関心を持たない人たちが何年かに一度のめぐりあわせで役員になるが、いつもそれほど関心を持っているわけではないから、法律や管理規約にある仕組みならまず間違いあるまいと考えてそのやり方で対応しようとする。

 でも、その仕組みがどう役に立ったのか、よくわからない。法律や管理規約で決まった手順で開いた総会も実際に出てくる人は僅かで委任状ばかりだが、それでも有効だという。だが、総会で決まったことをいざ実行しようとすると、総会は欠席して委任状で済ませた人が肝心な時に意見を述べ立ててうまくいかない。それに引きずられて。同じように総会を欠席したほかの人も同調するから、総会で決めたはずのことが実行できない。

 理事会の中で《こんなにもめるならアンケートで意見を聞いてみようじゃないか》という意見が出る。収拾がつかなくて困っていたほかの理事が《それはいいね。テレビでもよくやってるし》と同意する。

 しかし、そのアンケートにはお手本がないし、その効果を確かめる根拠もない。誰がその役目を引き受けて、その結果をどう活用するのか、そのあたりもあいまいなまま、ともかくやってみようということになる。しかし、その結果がまた新しい問題の火種になる。

 ・・・・というふうに書くと、何となく思い当たることがあるのではないか。

みんな元気だった時代のマンションが前提だった意思決定の仕組みをそろそろ総点検した方がいい

 大勢の人が住むマンションには、大勢の人が生活条件を共有しながら暮らしている。年齢も仕事も家族構成も千差万別だから、考え方も意見も人によってみんな違う。でも、そんな違いがあっても意見をまとめなければならない。

 マンション管理という課題の真ん中にあるのは、結局のところは《物事の決め方》になる。法律も制度も《物事の決め方》次第で意味や評価が決まる。どんな議論も《物事の決め方》という言葉を当てはめたときに始めて説得力の有無が決まる。

 でも、この仕組みが今の時代にも、まだ本当に有効なのだろうか。仕組みの前提となるマンションのイメージは、階数・戸数規模の差や築後年数の新旧の違いといった現状の物件差に対応しているのだろうか。こうした視点で新しい仕組みを考える必要はないのか。

 《物事の決め方》を形作る条件を再点検してみる必要はないか。決めなければならないことは何か、それを確かめるにはどういう方法があるか、管理組合自身が独力でそうしたことにどこまで対応できるか、今の仕組みでそう点に限界はないかなどなどを。

 未経験の問題が予想外の形で誰にも降りかかってくるのはマンションも国全体も同じだが、マンションは国家社会とはスケールが違う。感覚的に理解できるスケールを持ったコミュニティなのだから。

 意思表示の仕組みの見直しが必要な時期が来ているように思えてならない。
| muraitadao | コラム | 07:00 | comments(0) | trackbacks(0) |









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