村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
マンションのコミュニティ:霞ケ関の考え方がどれほど違うかを教えてくれる国交省と総務省
「コミュニティ自体については何も言わないがコミュニティ条項は削除する」ことだけが国交省の考え方?

 マンションとコミュニティの関連を巡って国交省が標準管理規約改正で否定的な方向をとっているのはもう知れ渡っている話だが、管理組合の次元では今も戸惑いがある。いったいどういう論理をどういう言い方でその方針を公表しているのかを確かめたくて、あらためて国交省の発表した情報から論理と言い方を調べてみた。

 目を通したのは、平成27年3月の日付で公表された国交省の「マンションの新たな管理ルールに関する検討会報告書」である。

 事情不明なまま2年半の休会を挟んで3年がかりになったマンション管理検討会の検討結果をまとめたもので、この報告書の考え方は標準管理規約の改正で間もなくはっきりすることになる。全部で115ページ。目次らしいものをみると、全部で14項目。《目次らしい》とわざわざ書くのはページの表記がなくて読み手への配慮がないからだ。

 まず管理組合運営への外部専門家活用がえんえん40ページ以上と出てくる。そのあとに総会の議決権割合が続く。ここは冒頭に比べるとたった6ページの短さだが、超高層マンションなどに配慮して間取りや眺望、仕様などを取り上げているから、超高層でない圧倒的多数のマンションにとってはかなり扱い方が気になる項目だ。

 このあとに、いま注目を集めているコミュニティ関連の部分が出てくる。関心を集めている割には簡単すぎる感じだ。たった9ページしかなくて、えんえん力説している冒頭の外部専門家活用に比べるとどう考えても簡単すぎて理解しにくい。その理由を述べよう。

 まず書かれている内容の展開がわかりにくい。これまでの経過を議事録などで考えてみると、まず何よりも《コミュニティ自体をどう考えているのか》という一番根っこにある点が見事にパスされたままいきなり各論に踏み込んだ感じである。

 『3 マンション管理組合と自治会との関係、コミュニティ活動について』とある箇所の内容は、たった2項目しかない。始めから各論で展開することになる。

 まず『3−1 マンション管理と自治会費の徴収・支払いについて』、次が『3−2 標準管理規約「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」の取り扱いと管理費からの支出の如何について』。この二つでおしまい。

 率直に言うと、さんざん論議を呼んできたコミュニティについてこの報告書で述べているのはたったこれだけしかないのかという気がする。いきなり始めから費用のことを述べて、そのあと今までの標準管理規約の述べ方が弊害を生む背景になっていることを述べた後「削除する」とはっきり述べている。

 そもそも以前の改正で標準管理規約が始めてコミュニティのことを取り上げた時も、実は何ともこなれていない中途半端でわかりにくい書き方だった。普通の日本語感覚ではピンとこない書き方だったために、この報告書のいうような「拡大解釈」や「誤解」などの「弊害」が生まれたような気がする。

 だから、今度の改正でこの部分をもっとわかりやすくすっきり修正してくれると思っていたのだが、この報告書は逆にばっさり削除してしまった。

 でも、だからコミュニティなど否定するのかと思うと、実は、そうでもない。「一方・・・」という書き出し方で考え方について述べる余地を示しているからだ。だが、よく読むとそれは、費用のことだけ。さらに「留意すべきは・・・」と断って飲食費や交際費のことを述べ立てている念の入れ方だ。

 東日本大震災の前後から再認識されることが多くなった《集合住宅のコミュニティ》というまさにマンションの本質的な点についての視点は、かけらも見当たらない。マンション管理の最も本質的な点について何も言わず、総論抜きの各論だけで議論をすり替えられてしまった気分がする。

 報告書は。どう考えてもマンション管理組合現場の問題意識と明らかにずれている。言いようもないほど、もどかしい。失望が大きい。

「都市部におけるコミュニティの発展・・・マンション住民の地域とのつながり」の周知を自治体に呼びかける総務省

 国交省の標準管理規約改正でパブコメ実施がはっきりしたころ、総務省から地方自治体関係部局長宛に送られた公式文書がある。総務省自治行政局住民制度課長から各都道府県総務担当部局長宛。平成27年6月12日付で、「都市部をはじめとしたコミュニティの発展に向けて取り組むべき事項について(通知)」と題されている。

 《マンションと地域のつながりについての研究会報告を踏まえてコミュニテイ発展のため取り組むべきことを通知する》ので市区町村宛にも周知してほしいという主旨だが、末尾に《なお本通知は・・・マンション管理に係る観点から国土交通省住宅局市街地建築課マンション政策室と協議済みであることを申し添えます》とあるのが目につく。
                                                           ☆
 総務省の通知文の書き出しには《都市部においては・・・近年コミュニティの弱体化の課題が指摘されています》とあって、マンションを含めた都市生活のコミュニティの現状が政策課題となっていることが読み取れる。さらに、文末の書き方を考えると、この文書の背景にある問題意識が総務省にも国交省にも共有されているらしい。

 だから、もしも標準管理規約改正だの、足かけ3年がかりのマンション管理検討会の紆余曲折だのを知らないままこの文書を読んだら、ずいぶん嬉しかったに違いない。『よかった、マンションの現場でずっと気になってきたコミュニティの実情に行政もやっと関心を持つようになってきたんだ!』と思ったに違いない。

 でも、そうだったのか、そうではなかったのか・・・。

管理組合運営ではそろそろ役所離れを考えた方がいい時期が来ているのかもしれない

 マンションのコミュニティという現実の課題に向き合う政策のモヤモヤした感じは相変わらず今も続いているということだろうか。

 国交省も総務省も検討会とか研究会という組織を作って検討を委ねた上で、結論が出た段階でその結果を通知する・・・。

 でも、そういう方法で取り組もうとしてきたテーマは、もともと所管省庁が自分自身で取り組むはずの政策課題ではないだろうか。わざわざ国費を使って外部の人を集めた検討会や研究会を作ったりしないで自分が取り組んできた検討や研究の成果に沿って政策を進めてくれた方がはるかにわかりやすいのではないか。

 だって、ちゃんと政策課題だいう意味のことを表明しているのだから。

 だが、実際には、わざわざ費用と時間をかけて外部に検討を任せて、結論が出たらその検討結果に沿って…という取り組み方だ。まわりくどい。

 こんな方法だと、検討を任せるメンバー次第では実情認識レベルが丸出しになり、大枚の国費と時間を投じて得られた結論が現場の関係者が期待していた内容とは程遠くて何も役に立たないという事態だって起こる。
                                                          ☆
 課題に気づいていながら取り組みの方向は自分で決めず、何か言われた時の逃げ道を確保していると思うのは、考えすぎだろうか。何だかズルくはないか。
                                                          ☆
 もう行政の取り組み方で示される方向は、参考程度の目安と考えておく方がいい。昔からそう考えてきたが、最近の政策対応の仕方をみているとますますその感が強くなる。

 管理組合は、法律順守という最低限度の条件を守ればそのほかは自分の発想で役所離れをもっと考えた方がいい時期になっていると思う。
| muraitadao | コラム | 06:06 | comments(0) | trackbacks(0) |









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