村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【語り尽くされていないこと、見逃されていること32:専門家】いそうで実はいないのがマンション管理の『専門家』。まして“自称”専門家では・・

築地問題に出てくる「専門家委員会」。でも《専門家》って、そもそも何?

  築地、築地・・・。東京都知事が変わった途端に連日のニュース。今までの都知事は、いったい何をしていたのか。元都知事だった大言壮語老人が久しぶりの姿をテレビに見せたと思ったら、しょぼしょぼとした言い訳ばかり。今まで偉そうだった大きな顔と一変してみっともない姿。老醜。

 こういうことが重なるから、ますます話がわからなくなる。安くもない都民税を払うのが、ますます嫌になってくる。

 それにしても、このニュースに出てくる「専門家委員会」だか「専門家会議」のメンバーは、いったい、どういう分野の「専門家」なのか。誰が、誰を、どういう物差しで選んだ「専門家」なのか。このグループが出した結論がたった数か月でひっくり返ってしまったのはなぜなのか。後になってひっくり返される程度の結論でも「専門家」の議論には意味があったのか。

 いったい何の分野の「専門家」の集まりなのかを考えると、一度は《わかった積りだったこと》が本当は《何だかわからなかったこと》に変わってしまうことに気づく。

 《そもそも専門家って何だ》という疑問を重ねていくと、説明抜きで誰にでも通用するとばかり思い込んできたことが、実はそうではないことに思い当たる。

特定の・・という前提があればこその「専門家」。何でもかんでも・・なら『専門家』ではあるまい

 専門家、専門家といいながら、実は、けっこう曖昧模糊にこの言葉を使っているような気がする。

 自分を含めて、誰もが。世の中すべてが。

 ずいぶん昔、首都圏の某住宅供給公社の賃貸住宅審議会のメンバーを務めたことがある。奇妙で不可思議だったのは、そのとき弁護士や建築家と一緒に並んで居住者自治会の代表が《生活の専門家》と自ら名乗って席を並べていたことだった。

 専門家というのは《ある特定の分野》が前提ではないか。かなり大雑把であっても「経済の専門家」程度の言い方はするのだから。

 誰にでも区別なしに通用する場合なら「専門家」という言葉はあてはまらないだろう。分野が限定されるからこそ「専門家」が必要になる。区別なしに誰もが知っていることなら「専門家」が求められることもない。

 ・・・ここまで考えてきて、また築地問題の「専門家」があらためて気になってきた。

複雑多様化したマンションの応用問題を解ける専門家は本当にいるのか

 このこだわりは「マンションの専門家」を連想させる。

 マンションの分野で、「専門家」が議論の種になるなどということは昔はなかった。そんな状態が変わってきたのは、マンションストックが増えて古くなったマンションが多くなる一方で、超高層マンションの登場による規模格差が広がるようになってからだ。

 マンションの新旧大小格差が広がってきたのに、管理の原則は今も相変わらず以前のままだ。管理原則の前提となる管理組合が「区分所有者団体」であるという考え方は今でも変わらない。

 しかし、言葉の上では同じであっても構成メンバーである区分所有者の属性は大きく変わった。老弱男女、職業、ライフスタイルの多様化によってメンバーの実情が変われば、組織の実態も千差万別になる。

 こうした事情に居住者の高齢化や非婚化が重なれば、核家族ファミリー時代の管理組合像のままでは、もはや組織力の弱体化は避けられなくなるばかりだ。

 こうした経過は、管理組合組織の当事者能力の弱さを否応なしにはっきり浮かび上がらせ、《管理組合の持つ素人集団の限界》を顕在化する結果を生んだ。

 管理組合が素人集団だと考えるなら、当然、専門家が必要だという考え方が生まれる。この発想からマンション管理適正化法が生まれ、専門家イメージを掲げた「マンション管理士」という資格制度が登場した。もう10年前のことになる。

 で、その結果はどうなったか。率直に言って、管理組合現場でのマンション管理士の存在感は、今もそれほど大きくはない。管理組合が直面する課題はむしろ増加と複雑化を重ね、たださえ弱い管理組合には絶望的なほど手に負えなくなっているのに、マンション管理士という資格の認識も期待感もきわめて弱い。
                   ☆
 こんな中で、今年の春、標準管理規約の改正で、外部の専門家が管理組合の理事や監事になれるという方向が打ち出された。国交省がいう「外部の専門家」というのはいったいどんなものかを確かめてみると、次のような記述が目に留まる。

 《マンションの適切な維持、管理のため、法律や建築技術等の専門的知識が必要。・・・専門家の具体例として、マンション管理士、弁護士、司法書士、建築士、行政書士、公認会計士、税理士等の国家資格取得者や、区分所有管理士等の民間資格取得者・・》。

 いわゆる「士業」だが、いずれも知識の有無を確かめたペーパーテストによる資格者ばかりだ。結局のところ「専門家」というのは特定分野の知識の多い人という意味になる。

 《よく知っている》という知識量の多さは課題が単純な場合にはそれなりに有効だが、様々な様相を呈する複雑な課題が多くなると無力化する。知識が役に立つのは、それを適用して解決の可能性を模索できるからだ。となれば、その前提は現実認識であり、対応すべき実情把握である。知識が役に立つのは、すべてその前提が実現した後の話だ。

 こう考えていくと、制度が想定する知識本位の「専門家」では、管理組合現場のニーズとの間にギャップが生まれることになる。

 ギャップがあれば疑問が生まれる。その疑問の最たるものは次のようなものだろう。

 「専門家」は、果たしてマンション管理組合の組織力弱体化の具体的な対応策を示せるか。「専門家」はマンション管理の現場で管理組合が苦しんでいる応用問題の答えを見つけてくれるのか。

 高齢者と単身者が増え、外国人も珍しくない管理組合役員の決め方を提案できるか。

 年齢や職業が千差万別の管理組合で有効な広報手段を提示できるか。

 空室が増え始めたマンションの長期修繕計画をまとめられるか。・・・

 こうした事態に迫られたときに、いきなり特定分野の専門家が頼りになるか。

 まず、問題を見極めたうえで、当てにできる専門家がいるのかいないのかを確かめるのが先決ではないか。

 マンションの専門家に必要なのは、管理組合と同じ視線を持つ当事者感覚である。いつも他人事感覚で土俵の外からわかったようなことを言うテレビのコメンテーターのような気分ならマンションの専門家はつとまらない。

 それだけは、はっきりしている。
 

| muraitadao | コラム | 11:50 | comments(0) | trackbacks(0) |









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