村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【語り尽くされていないこと、見逃されていること34:当事者能力】マンション管理協の調査から浮かび上がる本当の管理組合組織力

13年前の日経記事で見た広島の超高層マンションの価格差は22倍だった・・・

  この9月15日にマンション管理業協会が発表した「平成28年マンション管理受託動向調査結果」を見ると、いつも事あるごとに感じている管理組合の当事者能力の実態を痛感する。その実感はかなり複雑だが、管理組合だけを見ているとなかなかわからない組織の実像が管理会社の存在をフィルターを通したような感じで鮮明に浮かび上がってくる。

 一例をあげよう。

 この発表の中で目をひいたことの一つに、超高層マンションの管理受託戸数が30万戸を突破したという項目がある。発表された調査結果によると、超高層マンションの受託実績は1111組合、1374棟、30万0140戸とある。

 このデータを単純計算すると、1棟で218戸の超高層マンションが浮かび上がる。注を見ると「高さが60メートルを超えるマンションまたは20階建て以上のマンション」と書かれている。実際の超高層マンションに比べるとやや小さい気がするが、それだけに在来のマンションと比べてそんなに違わない感じになるともいえる。

 それにしても1棟で200戸を超えれば、マンションの規模としては小さくない。戸数の多さもさることながら、超高層マンションならではの居住実態の差の大きさが頭に浮かぶ。どの超高層マンションも高層階は眺望と相当の広さで億単位の高額であるのに対して、低層階はそれなりの価格設定で売り出されたはずだからだ。

 その意味で1棟の超高層マンション住戸の最高価格と最低価格との価格差にはありのままの居住実態が浮かび上がると見ることもできる。

 そういう意味での価格差の実際を13年前の新聞記事で紹介しよう。

 『広島市中区。43階建て高層マンションが年末に完成する。下層階は千数百万円のワンルーム。最上階は3億7千万円。最大で22倍の価格差がある。・・・高齢時代の新しい家族像、所得格差の拡大・・・』(2003年8月29日・日経朝刊・1面連載企画記事・働くということ・第4部「求む経験不問 先着順」の冒頭)

 超高層でも分譲マンションなら管理組合があり、管理規約に沿って維持管理が進むはずだ。超高層でない普通のマンションでも手こずる意見の集約を、こういう大戸数マンションの管理組合ではいったいどうしているんだろう・・・。

 いつも、そこが気になっていた。

そんな超高層マンションが今や30万戸を超える。管理組合と管理会社の関係はいったい・・・

 マンション管理の本質は、物事の決め方である。人の数だけ意見の違う人間世界での集団的意思決定がすべてだろう。同じマンションに住まなかったらお互い顔も名前も知らないままだったはずのアカの他人同士が壁を隔てただけの至近距離で暮らし、物事を決めていかなければならない。どんな法律論を展開しようと、この点はマンションである限りまったく変わらない。

 ほとんどの管理組合は昔からこの点に苦労しているが、到底、自力では手に負えなくなるから管理会社を頼りにせざるを得なくなる。

 しかし、どこの管理組合も実際には組織として物事を決める点に当事者能力の弱さがある。だから、大半の管理組合では管理会社依存度が大きくなる。超高層マンションでは、とくにそうなるはずだ。

 若手と高齢者、終の棲家にたどり着いた人と高い家賃で暮らす賃借人が隣り合って暮らし、時としては外国人がいり混じる・・・。ライフスタイルも考え方も千差万別な居住実態に対応しながら集合住宅としての基本的な生活条件を保てる力は、管理組合だけではとうてい確保できない。となれば、もう管理会社の支えが欠かせなくなる。

 目前の問題に対応できる組織力が弱い管理組合が維持管理の原則に従って自律的に組織を運営していくことはかなり難しい。

 そうした実情を考えれば、どこのマンションにも共通する管理組合と管理会社とのこういう関係が、超高層マンションにはひときわ凝縮されて浮かび上がるといえよう。

 管理会社が委託されている超高層マンションが30万戸を超えた事実の重さは、改めてそれを考えさせる。

物事を決めるとなれば管理規約が・・・。標準管理規約改正で超高層マンションの管理組合はリッチファーストになるのではないか

 心配症患者の妄想はまだ続く。

 今年の春、すったもんだの挙句、やっと標準管理規約が改正された。

 その標準管理規約改正の中に盛り込まれた「議決権割合」の新しい考え方が上記の意味で、とても気にかかる。

 今度の改正では、同じ1棟のマンションで物事を決める場合のルールに、価値割合を物差しとした議決権割合という考え方が公式に打ち出されたからだ。専有部分と共用部分を対比した面積割合ではなく別の価値の割合を基礎とした決め方が、はっきり示されている。

 新しく示された価値割合というのは、いったい何か。その住戸が何階か、方向はどちら向きか、見晴らし(眺望)はどうか、日当たり(日照)はどうかなどといった点を考えた決め方であることが、標準管理規約コメントで異例なほど延々と説明されている。

 めったにないほど長々としたこの説明は、簡単に言えば、同じ管理組合で物事を決めるときの権利の大きさが《価値割合》という数量的な形で示されて同じ生活条件を共有する同士での経済格差をむき出しな形で自覚させやすい。そんな差がある人同士が玄関やエレベーターで顔を合わせることを考えたらどうしても気になるのだ。

 「議決権」という言葉の意味を確かめてみると、どんな辞典でも「決議に参加する権利」と説明があり。具体的な例として株主総会が出てくる。つまり、利益最大優先の株主総会でイメージされるのと同じ決め方のルールが、利益最優先だけではなく生活の場であるマンションでの意思決定に持ち込まれていることになる。

 この考え方の当否は別としても、この種のことに不慣れな管理組合ではどうにもならないほど説明しにくい厄介な感じは否定できない。超高層マンションは1棟の建物でリッチとノンリッチが生活条件を共有している場所だという最も肝心なことが、いったいどう考えられているのだろうか。

 率直にいえば現実離れした理屈倒れの考え方だと思う。アベノミックスとか一億何とかいう言葉を浮き浮きとした表情で語る人たちが考えそうな話ではないか。

 少なくとも、同じマンションでいつも顔を合わせるが手に負えない自己主張の持ち主の扱いに苦労している管理組合には通じない考え方だ。
                   ☆
 管理協の管理受託動向調査、超高層マンション30万戸、管理組合の当事者能力、標準管理規約改正・・。もともとは別だったはずの言葉がつながって気がかりな連想をもたらす。

| muraitadao | コラム | 12:02 | comments(0) | trackbacks(0) |









http://murai.realestate-jp.com/trackback/991810
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< October 2018 >>
+ SELECTED ENTRIES
+ RECENT COMMENTS
  • 【番外】11年目。公開遺言のつもりでブログを書き続けます
    マンション・チラシの定点観測 (11/26)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    村井忠夫 (12/07)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    尾下 義男 (12/07)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    村井忠夫 (11/23)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    尾下義男 (11/23)
  • 2年半ぶりでメンバーも変わって再開のマンション管理検討会、たった1か月で結論を出すとは・・・・
    とおりすがり (04/24)
  • 最新の「マンション総合調査」から読めること、読めないこと
    村井忠夫 (09/06)
  • 最新の「マンション総合調査」から読めること、読めないこと
    まるーべり (09/06)
  • 都議ヤジ問題の本当の理由は議員の当事者感覚の貧しさ
    村井忠夫 (06/26)
  • 都議ヤジ問題の本当の理由は議員の当事者感覚の貧しさ
    ポリス (06/26)
+ RECENT TRACKBACK
  • 「沈黙は賛成じゃない」という論理。選挙や総会では?
    マンション管理の情報屋。。。 (09/22)
  • マンションの中の喫茶店が話題になる・・・・:マンションの共用空間の新しい意味をもっと考えていいのではないか
    神園良輔の『マンション展望』 (05/05)
  • マンガ説明入りの規約解説本があってもいいじゃない?でも実際には簡単にいかないけどね
    マンション管理士情報ナビ (05/27)
  • マンガ説明入りの規約解説本があってもいいじゃない?でも実際には簡単にいかないけどね
    マンション管理士情報ナビ (05/27)
  • 女児マンション転落事故のニュースが浮かび上がらせたこと:どこのマンションでも同じことが起こる可能性にどれだけの人が気づいているか
    MANSIONS-COMMUNITY blog (04/15)
  • 「億ション」は最高が1億円なのか、最低が1億円なのか、それとも・・・:管理の基本原則は何億円でも関係ないが
    マンション展望 (02/16)
  • 「美しい国」で、これ以上「美しくないこと」が起こらないように:もっと集合住宅に住む不安を減らすための議論を
    マンション展望 (12/01)
  • 8年前の2月、国会でマンション管理をめぐる史上初の議論が行われた。そして、昨日の朝刊には・・・
    NONブログ (11/27)
  • 書名は買い手にとって本のすべて。本の名前と内容はなるべくなら、あまり違わない方がいいと思うのだが・・・
    高層マンション (08/27)
  • 新しい住宅が建たなくなったというニュースの怖い連想:暗い窓ばかりのマンションが思い浮かぶ・・
    マンション展望 (08/25)
+ CATEGORIES
+ ARCHIVES
+ LINKS
+ PROFILE