村井忠夫のマンション管理ブログ

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【語り尽くされていないこと、見逃されていること35:強行採決】発言者の農水相はマンション管理適正化法の筆頭提案者だった。管理組合理事長経験が背景にあったとか・・・

平成12年11月21日 衆議院 建設委員会の議事録をみると・・・

 TPP問題の国会審議が《強行採決》発言でもめたニュースは、その後どうなったのだろうか。このニュースをさんざん伝えたあと、震度6の鳥取大地震とか、IOC会長来日でオリンピック会場がどうなったとか、などの話といっしょになって、たださえわかりにくいニュースがますますわかりにくくなった。

 だが、物議の種になった発言の主が農水相であることは確からしい。その農水相である山本有二という人の名前を聞いて、いろいろなことを思い出した。

 平成12年11月21日衆議院建設委員会で審議された議員立法によるマンション管理適正化法の筆頭提案者にその名前があったからだ。この法律ができてバブルめいたマンション管理ブームが生まれ、信じられないほど多数のマンション管理士受験者があり、神田の書店店頭にはマンション管理の本が並び、その中の何冊かに「監修 山本有二」という字があった・・・。

 そんなことを思い出したのは、もしかすると私だけではあるまい。

 そういえば、このとき《マンション》という言葉が初めて法律用語として認知されたのだった。山本有二監修の本にも、次のように書いてある。

 ※「マンション管理適正化法の解説」衆議院議員・弁護士山本有二監修/弁護士岡本正治・宇仁美咲共著:大成出版社

 ――なお、「マンション」という用語を法律で用いたのは、本法が初めてである。本法の立法過程においても、マンションという名称は和製英語的で法律用語として不適切であるとの意見もあったようであるが、今や国民生活において「マンション」の用語が定着していることにかんがみ、採用されたものである。

 このころ、国交省のデータによれば、マンションストック戸数はもう400万戸が目前だった。とうの昔にマンションは定着していたのだ。

マンションに住んで初めて管理組合の理事長になって気がついて驚いたのは・・・

 マンション管理適正化法が生まれたころ、今に比べれば、まだまだ多くの本が出ていた。雑誌もいろいろなものが出ていた。出版社も書店も、まだたくさんあった。

 そんな時代にちょっと目立ったのは、初めてマンションの管理組合の理事長を引き受けた人の本だった。弁護士とかルポライターなど、サラリーマンでない職種の人の書いた本が目立ったが・・・。

 ともかく、そんな人たちが成り行きで理事長を務めたが、《管理組合ってこんなにいい加減なやり方の世界だったのか》と今更のように知って驚いた経験を書いた本が多かった。雑誌にもそんな感じの理事長経験記がよく出た。

 マンションに管理組合というものがあることもそれまであまり考えなかったような人が、管理組合は理事会が形だけ運営する立場ではあるものの実際は管理会社に任せっきりで、そこにいろいろな話が渦巻いているという実情を経験して一種のカルチャーショックに似た気持ちで書いた本が何冊も出た。そうした本は、どれもそれなりに売れたらしい。

 そんな形でマンションの管理組合運営の実情にふれた人の中に、何人かの政治家がいたようだ。政治家の目がやっとマンションの管理という側面に向き始めた、と思ったものだ。

 今それなりの要職を務める公明党代議士の求めで議員会館に管理組合の実情を話しに行ったこともあったし、ある都心の会場で開いたマンション管理セミナーで私の書いたレジュメを当時の民主党代議士の事務所の人がリクエストしてきたこともある・・・。

 マンション管理適正化法はそんな実情を反映して自民・公明・保守3党の議員提案で生まれた。山本有二さんは、平成13年9月の日付けによるある本の「監修のことば」にそう書いている。


そんなにショックだった理事長経験の記憶が生かされる機会はなかったのだろうか。人の意見をまとめて物事を決めるという苦労に満ちた経験が・・・

 こんな記憶ももう15年あまりも前のことになった。あの熱っぽかったマンション管理ブームは、もうはるかに遠いものになった。

 今さらながら、あらためて思う。あの頃、超高層マンションの林立も、居住者の高齢化や非婚単身化も、空室の増加も、初めての理事長経験で本を書いたような人たちの頭にはなかった、と。あったのは区分所有法の掲げる原則にしたがった望ましいルールの実現だけだったのではないか、とも。

 あのころ《理想の実現》さながらに標榜されたマンション管理原則の実現にあたる管理組合組織の弱さに初めて気がついたかのような風潮は、前からそうした苦労に黙って立ち向かってきていた人たちを励ます効果をもたらしたが、それもつかの間で、その後みるみる薄らいでいった。

 適正化法が生まれた翌年の秋、9月11日にニューヨーク多発テロがあり、それから4年後の11月に耐震強度データ偽装事件があり、それからまた3年後の9月にリーマンショックがあった・・・。

 マンション管理組合なんかよりも、もっともっと重要で緊急なことが次々に起こるたびにマンション管理への問題意識は誰の頭からも薄らいでいった。政治家やマスコミは、とりわけそうだった。

 かつてのマンション管理の熱気は遠い記憶のかなたに薄らいでいく一方になった。
                                ☆
 ひそかにそう感じていた中に、この秋、思いもかけず強行採決のニュースで聞いた名前が様々なことを今更のように思い出させた。

 いつとはなしに意識の片隅に追いやっていたことに気がつくと、逆に、マンション管理で残されたままの課題がどれほど多いかを強烈に思い知らされる。
                   ☆
 法律ができて問題解決の方向や仕組みが言葉だけで示されても、それは手順手続きという形式条件に過ぎないのであって、法律に標榜された状態の実現は、その実現プロセスに関わる当事者の問題意識次第でどうにでもなる、と今更のように思う。

 600万戸を超えるマンションにすべて管理組合があって、その管理組合には必ず理事長がいる。その理事長たちが自分のマンションの問題に気がついているかどうかは様々だろうが・・・。

 目前の問題にどう気づくか、気がついたら、その問題にどんな手を打つか。

 問題があることに気がついた理事長は、人の数だけ異なる意見をまとめていく作業の流れに時間と手数をかけるかどうかの判断に迫られる。問題に気がついている自分が、まだ気づいていない人たちの理解をどこまで得られるか。ひたすらなる忍耐を迫られるが、決して結論を強引に急いではならない。そんなことをしたら、同じ建物で生活条件を共有している人間同士の信頼がなくなってしまうではないか・・・。

 素朴だが、間違いないこの実感があるからこそ、管理組合の理事長は苦労する。

 そんな管理組合の理事長を務めてその実感を経験した政治家がいたから、適正化法が生まれたのだ。それは、間違いない・・・なのに。

 10何年経つと、そうした実感も経験もどこかへ消えてしまうものなのだろうか・・・。管理組合理事長の経験というのはその程度の代物なのか・・・。

| muraitadao | コラム | 07:30 | comments(0) | trackbacks(0) |









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