村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【語り尽くされていないこと、見逃されていること36:高層階増税】同じマンションで住戸ごとに違う経済格差を管理組合につきつける不安

マンションに住む人がみんな富裕層ではないというわかりきった事実に今ごろやっと気がついたか

 10月25日の新聞各紙が残らず伝えた「マンション高層階増税」。どの新聞も同じような書き方になっているのは、プレスリリースに沿って書いた記事だからだろう。日経の記事が少しだけ他紙よりも詳しいのを除けばどれも似たり寄ったりで、わかることはわかるものの何か物足りないもどかしさが残るところまで、どの新聞もまったく変わらない。

 新聞週間が終わった直後に相も変らず金太郎飴状態の記事を読んで新聞の存在感の薄らぎ方を実感させられた。70年以上にわたる新聞読者としては、どうにもこうにももどかしくてやりきれない気がする。

 それはともかく、新聞を読んでこんな不満を感じる理由ははっきりしている。分譲マンションで同じ建物に住むための費用負担と区分所有者レベルの経済的な差との関係をすっきり説明しきれない割り切れなさが昔からモヤモヤした状態で残り続けてきたことを実感するからだ。

 この実感の背景には、厄介な事情がある。経済的な差というのははっきりいうと「懐事情」を連想させるから、普段からひそかに感じていても同じマンションに住んでいる人間同士が口に出しにくくて、ノドの奥に飲み込んでしまう言葉である。気が付いていても黙ったまま胸の底に沈んでいるこの感じが、はからずも「税制」というトピカルな話題に結び付いて、多くの人にひそかなこの実感を改めて確認させる共鳴効果を生んだような気がして仕方がない。

 だからこそ、同じような言葉で同じようなことを書く記事を巡って、書き手と読み手との間に「わかる!わかる!」という共鳴共感させる効果が生まれたのに違いない。

 でも、これは、もともと当たり前のことではないか。

 マンションは建物規模が大きくなればなるほど、戸数や階数が増え商品価値が多様化する。多様化は物件価額の高低幅を生み、その高低差は《買えるか、買えないか》という形で買い手の経済力にそのまま反映する。

 となれば、販売された物件での居住階の高低は同じマンションの居住者同士の経済力の差をありのまま率直にあぶり出すことになる。

 マンションの高層階がリッチフロアとなり低層階はノンリッチフロアとなるのは当たり前だ。高層マンションのエレベーターでこうした微妙な状況を物語る光景が展開するという「よく聞く話」は、このことと無縁ではあるまい。

 しかし、一方で、リッチもノンリッチも同じ建物に住んで生活条件を間違いなく共有するという実情もある。だから、こうした経済的な差が日常生活レベルの差につながることに気づく機会は、小さな形で繰り返されることになる。こうした形で絶えず繰り返される小さくて微妙な状況が表面化しないまま意識下で屈折した状態で共有され胸の奥に蓄積され続ける・・・。

 こういう複雑な心理光景はもともと高層マンションごとに外からは見えない形で《建物の内側》に生まれていたが、高層マンションが増えた結果この屈折した心理光景を共有する人々が増えて、長らく外からは見えないままだった割り切れなさを誰の目にもはっきり見えるようになったのではあるまいか。

でも管理組合はとっくに気づいていた、同じマンションに住む人がすべて同じとは限らないことに

 マンションには多くの人が住んでいるから同じマンションでも人によって暮らし方が違うのは、もともとマンションには昔から《いちいち言うほどでもない当たり前のこと》だった。気がついていても《同じマンションに住む者同士なんだから・・・》という一種の世間づきあい感覚が自己抑制意識をもたらした。

 でも、こういうことはどこのマンションも同じで、住む人も似たり寄ったりという状況が前提だった。マンションと戸建て住宅が対比的に語られるだけで、単純に説明できた。少なくとも、昭和の時代のマンションはそうだった。

 しかし、超高層や大規模マンションが登場すると、どこのマンションも同じとは、もういえなくなってきた。一望に収まらないほど大きくて、住んでいる人も、老弱男女、貧富、和洋、さまざまなマンションが多くなったが、そうした違いのある人たちも、同じマンションでは同じ玄関から入り、同じエレベーターにを使うようになった。

 当然ながら、こうなると管理組合はこんな複雑な実情に対応せざるを得なくなる。同じマンションでも住む人間にはリッチとノンリッチの差があるという事実にいやおうなく気づかされるようになる。

 でも、管理組合はこうしたことに早くから気づいていた。もう昔のように、どこのマンションでも住む人がみんな同じだとは限らなくなってきたことに気づいていた。

 そうなれば、みんな同じではないのだから意見もみんな違う。昔に比べると、管理組合はますます組織の動かし方が難しくなってきた、ということにもいち早く気づいていた。

 だが、これは管理組合にとって容易に答えが見つからない難問だった。そもそも、こういう厄介な問題があること自体、マンションの管理組合運営を軽軽したことがない人には理解されない難問だったし・・・。
                   ☆
 隠れたままだったそんな難問が突然な形で表に現れたのが、今度のマンション高層階増税のニュースだった。

 《パンドラの箱》の蓋が開いた、という感じで。

同じような人ばかりでないマンションで管理組合を成り立たせていく問題の難しさがこれだけある!!

 国交省のマンションストック戸数データによれば、2015年(平成27年)末で623万戸。だが、この623万戸は新旧大小様々で千差万別だ。

 そのことは、超高層マンション普及の契機となった1998年(平成10年)のマンションストック戸数が351万戸だったこと、マンションが普及し大衆化して住宅金融公庫融資の対象になった1970年(昭和45年)のマンションストック戸数がたったの13万戸だったことを考えただけで、はっきりする。

 重大な問題点は、この先にある。あまりに大きすぎる問題ばかりだから、以下には論点やっと認知されたを箇条書きするのにとどめる。

 いわば《パンドラの箱の中身》といっていい。

●マンションの住宅としての本質認識が「持つ」場合だけに限定されて「住む」視点を欠いていること

●管理組合がいまだに「区分所有者が住むマンションの団体」というだけのイメージにとどまっていること

●管理組合運営の意思決定原則が現在のマンション居住実態に対応していないこと

●制度の全面にマンションを単に個人資産として考えるだけで《大きくて複雑な集合住宅》の実情に対応する発想がないこと

●マンションは維持管理段階で社会状況の変化による影響に対応できる仕組みがないこと

 まだまだ書き尽くせないほどあるのだが、もうやめる。何だかむなしくなってきた。

 マンション高層階増税のニュースというパンドラの箱に中身は、まだまだたくさんあって、とてもブログには書き尽くせない。入っていたものは想像以上に多くて厄介だということだけ重ねて書いておく。

| muraitadao | コラム | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0) |









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