村井忠夫のマンション管理ブログ

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【語り尽くされていないこと、見逃されていること38:観念論の限界】「管理組合がない」実情はどこまでわかっているのか

「管理組合なし」を伝えた記事の複雑な不安感

 毎日新聞が11月24日付けで掲載した《「管理組合なし」671棟 老朽化、修繕困難》という記事が、とても気になった。記事の言葉を引用しながら要約して書くと、こうなる。

 今年(2016年)9月に都道府県庁所在地、人口20万以上の市と東京23区の173自治体に毎日新聞がアンケート調査した結果、《管理組合すらないマンションが少なくとも671棟に上ることが分かった》。49自治体で行ったマンション実態調査などによると、東京都で管理組合なしのマンションが《突出して多く》、北九州市、千葉県がこれに続く。

 マンション管理にそれほど関心があるとも思えないマスコミの実情を考えるとこの毎日新聞の記事は貴重だと思うし、とりわけ管理組合に焦点を合わせた調査であることが注目に値する。

 しかし、正直なところこの記事を読んだ感想は複雑だ。この記事は区分所有法を前提にしているが、管理組合の実情はもう何十年も前から法律の考え方から程遠い状態になっているからである。

管理組合が「ある」とか「ない」ってそもそも何?

 一番ひっかかるのは、管理組合の実情を「ある」とか「ない」という単純極まりない視点でとらえようとする発想だ。管理組合は生身の人間がつくる組織だから、管理組合組織の実情はよくも悪くもすべて組織メンバーとなる人間たちの様子次第で決まるからである。

 管理組合を実際に動かすのは、区分所有法の言葉ではなくて生身の人間たちだ。管理組合が「ある」のは「管理組合を動かす人たちがいる」からであり、「ない」のは「誰も管理組合を動かす人がいない」からなのである。

 調査をした9月に「管理組合がある」状態だったマンションも、来年になって「管理組合を動かす人がいなくなる」ようになるかもしれない。来年は大丈夫であっても、再来年はどうなるか分からない。再来年は大丈夫でも、その翌年は・・・。

 もうやめよう。きりがないから。

 管理組合が「ある」とか「ない」とかいう話は法律よりもその組織を動かす人間に着目しないと、具体的な意味が成り立たなくなってしまう。観念的な理屈を述べた言葉で組織を考えても、全く意味がない。そうした実情は、もううんざりするほど見てきたのではっきりしている。

 マンションは壊される日まで建ち続けるのだから、そこに住み続ける人たちの様子でマンションの住みよさを支えていく管理組合が「ある」か「ない」かが決まる。≪あり続ける≫ことが必要なのだ。

 日本中のマンションの管理組合は、このことを長年の経験で確かめてきたと言っていい。

管理組合の実情は今なお何も分からないもどかしさ

 いまさらながら、管理組合の実情は具体的な調査情報がいまだに何一つないことを考えざるを得ない。

 次のようなことが分かる調査データは何もない。ほんの少しだけあげてみよう。

●管理組合はいくつある?→マンションストック戸数は623万戸。だが、管理組合の数は?

●マンションの規模や建て方に対応した管理組合はどのくらいある?→標準管理規約が想定している単棟型、団地型、複合用途型などに対応した管理組合の形態は?

●地域別や都市別の管理組合の数は?→市や区など地域別の管理組合の数は?

 国交省の「マンション総合調査」でも、こうした点は全くわからない。この調査は建前どおりのイメージで想定された管理組合を前提としているから、建前から程遠くなった組織の実情について知ることは期待すべくもない。
                   ☆
 分かった顔でいろんな人がいろんなことを言うマンション管理の世界。しかし、その当事者である管理組合の実情は、今も、肝心なことがほとんど分かっていないのだ!

| muraitadao | コラム | 11:37 | comments(0) | trackbacks(0) |









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