村井忠夫のマンション管理ブログ

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【語り尽くされていないこと、見逃されていること42:独善と本音】トランプニュースと『小さなおうち』の連想で《無関心》の正体を探りたくなった

その当座にはわからなかった《独りよがり》に後で気づかされる・・・と思うのは考えすぎだろうか

 ドナルド・トランプという人物のことが、一向にわからない。ああ言った、こう言ったというツイッターの言葉ばかりがニュースになる馬鹿馬鹿しさ。選挙運動中、やたらに断定的な言葉をまくしたてた昨年のニュースが、いまだに何度も何度も繰り返して流されるくだらなさ。

 たった140字のツイッターではくどさや持って回った言い方ではなく、どうしたってポキポキした短い言葉になる。本音の言葉で書かれれば、なおさらだ。

 だから、飾り気抜きの本音まる出しで語られる言葉はわかりやすい。わかりやすい分だけ聞き手の賛否も、はっきりわかれる。そうなれば、賛同できない者には聞いた話が露骨な独りよがりになってしまう。

 こういうタイプの人物は、どこにでもいる。

 でも、普通の、身近にいる市井の一個人でなく、大金持ちで、世間に名前が知られた人物なら、その独りよがりにはそれなりの影響力が生まれる。週刊誌に限らず独りよがりでも目立つ言い方を伝えるとよく売れるから、ニュースの商品価値が上がる。

 そこに気がつけば、何かを《言う》方にとっても《伝える》方にとっても、もう独りよがりの響きはありふれた個人レベルを離れるばかりになる。とりわけ《言う》方にとっては、好機到来、長年の念願実現のための機会になる。

 この一年余りにわたるトランプ、トランプの騒ぎは、まさにそうではないのか。

 でも、その独りよがりをうんざりしながら聞いている方からいえば、当座はまだ本当のところ聞いていることの意味がよくわからないことが多い。呆れたり驚いたりしながらニュースに接した後しばらくたってやっとわかってくる。《あ、あの時の、あれは、こういうことだったのか・・・》ということが。

少年時代の記憶が重なる『小さなおうち』の他人事ならぬ実感を連想しては考えすぎだろうか

 ちょっと前の直木賞受賞作(2010年上半期)になった中島京子『小さなおうち』の読後感が、トランプニュースを聞く時の感じにどこかでつながってくる。

 『小さなおうち』を読むと、昭和10年代前半の様子をありありと思い出す。頭の片隅に消え残っていた日常会話や普段の食事などありふれた毎日の生活風景の断片がありありと眼前に浮かびあがってくるような作品だ。

 読みながら思い出した。うちには《姉や》がいたっけ、皇紀二千六百年の提灯行列で歌ったあの歌は今も覚えているな・・・などと。

 そんな感じの『小さなおうち』を読んだとき、自分の記憶と戦後になって始めて知った知らないままだった出来事の流れの間の途方もなく大きなズレの正体に気づいてひそかな怖さを覚えた時の衝撃を思い出した。

 こことつながってはいるが遠いどこかで惨憺たる戦争が始まっていたことにどこかで気づいていながら、いま目の前ではおだやかで明るい幸福感に満ちた生活を重ねていたギャップの怖さに図星を指された怖さを思い出した。

 それは、『銃後』の毎日に交わされる会話も食膳の様子ものどかなほど明るくて、まさか、あと数年で未曽有の戦禍に巻き込まれていくことになろうとは気づかなかった怖さだった。

 『小さなおうち』には、そんな東京の生活が悲しくなるぐらいリアルに語られる。

 自分にとって《戦争なんて関係ないや》という『銃後』の空気の中で小学生から中学生の時期を送った記憶が今も胸の底に残っているから、この小説の読後感には、こういう能天気な「無関心」を思い知らされるリアルな怖さがあった。

 トランプニュースを見ながら浮かんでくる、トランプなんてアメリカの大統領だし、こっちには別に何も関係ないな・・・という他人事めいた感じ、ニュースで知っているが、結局、あれはヨソの話でしょ、という感じには、どこかで、この怖さにつながるものがある。

 決して無関心ではないのだが、さりとて、それほど切実な感じもないという厄介な気分に通じるところがある。

マンションにもある?独りよがりと無関心,真面目だが切実でもない中途半端なこの感じが・・・

 このつかみどころのないあいまいで漠然とした感じは、マンションの管理組合の空気と無関係ではあるまい。

 少子高齢化、長時間労働、格差、異常気象、アベノミックス、TPP、空き家・・・。そんなこと、もうみんなわかってるよ・・という顔の人たち。でも、そういう人々に《ウチのマンションで実は今…》と切り出すと、とたんに何も言わなくなる。やがて、黙ったままいつの間にか姿を消してしまている・・・

 だが、総会などでは、そういう感じの人たちが、やたらに異論を唱える。声高に、断定的に。

 すると、普段は黙っている大部分がうなずき始める。すると何も言わない顔ぶれの誰かが誘われるように、おずおずと切り出す。やがて別の顔ぶれの中からも同調の声があがる。

 こんな空気になっても物事を決める手がかりは、賛成か反対かの数字しかない。

 賛成とも反対とも決めきれないあいまいさも、この数字の中にまるごといつのまにか飲み込まれてしまう。

 まして、委任状だけで総会に姿を見せないメンバーの考え方は、もう推し量るべくもない。真面目ではあってもあいまいな圧倒的大多数の考え方は、見分けにくい状態ではあっても間違いなく賛成か反対のどちらかの数字の中に隠れているはずなのに。

 区分所有法があって、管理規約がそう決めているのだから、そうなるしかないのだが、でも・・・。
                   ☆
 頭の中を、少し整理しなければなるまい。

 トランプどころではなくなってきた。

| muraitadao | コラム | 11:26 | comments(0) | trackbacks(0) |









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