村井忠夫のマンション管理ブログ

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【語り尽くされていないこと、見逃されていること44:天下り】天下られる方には《わかっていない人間に権限がある》ことこそ問題

素人が権限だけはしっかり持っているばかりに天下られる立場の人間は我慢を強いられる

 文科省の何とか局長が早稲田大学の教授になるという天下り。大学教授に役人やジャーナリストのOBが多いことは昔からよく知っているから、別に珍しくも何ともない。今さら驚くほどの話でもあるまいと思うのだが・・・。 

 昭和年代の半ばごろから天下りは、もうまったくありふれた話だった。

 かくいう私は、1955年(昭和30年)から1988年(昭和63年)まで住宅金融公庫に在職した。戦後10年で、やっと落ち着きを取り戻したが住宅ローンなどという仕組みも言葉もなかった時期から高度成長を経た33年間、住宅事情の変遷を目の当たりにしながら過ごしてきたことになる。

 こんな年月を過ごした人間にとって、この33年間は天下られた年数でもあった。総裁をはじめとする役員や部長、課長などから若い係長に至る要所要所のどこかに、いつも建設省や大蔵省からやって来た人たちがいた。

 だから、実感としては天下りの存在そのものは今さらのことでもないという気分だった。朝になれば日が昇る、冬になれば寒くなるのと同じだから、天下りがいたって当たり前、そんなのは別に珍しくもないじゃないかという感じだった。

 だが、そんな中で我慢ならなかったことが一つだけあった。それは、住宅のことを何一つわかってもいないのに権限だけ振り回す人物が多いことだった。霞が関の人たちは、建設省なら、仕事の経験が、まず川で、それから道路、次が砂防・・というのが普通だった。いわば、デパート型の何でも屋だ。

 当然ながら、住宅を詳しく知っているわけではない。まして、大蔵省から来た人は、住宅などまるでわからないのが当たり前だった。

 建設省の天下りの場合、金融のことなど、もう絶望的なほど知識のある人がいなかった。言葉さえ通じないことが連日だったのを覚えている。

 そんな素人同然でも「実はわからないのだが、わかった」ような顔で物事を決めることになる。だから、もっぱら言葉の上の法律解釈だけがわかった顔をするための存在感発揮の命綱になる。

 こうなれば、否応なしに《わかっていない素人が権限を持つ》矛盾した結果が生まれる。でも、結局は、何かが決まることに変わりがない。

 そうした状態であっても「決めたこと」の結果を外部に説明するのは、天下られる立場の人間の役目だ。わかっていない人間が判断して決めたことのつじつま合わせは天下られた人間の役目だった。

 天下りが当たり前の世界には、いつも、そうした忌々しさや不快と嫌悪、納得がいかない不可解さが一体化した空気があった。

 「天下り」という言葉は、今ではもう忘れかかった過去のそういう気分を呼び起こす。

いま住宅金融機構理事長は公募。仕事をやれる人がその立場にいる「はず」の時代になった・・・

 そういう記憶が浮かぶ住宅金融公庫も、制度改革で姿を消して住宅金融支援機構に引き継がれた。それから年数が過ぎて、来月末でもう10年になる。

 その住宅金融支援機構のトップである理事長は、かつての旧住宅金融公庫では総裁という名称で、建設省事務次官の指定ポストだった。

 そういう仕組みだったポストは、いま「理事長」という名称で公募ポストになっている。公募だから、応募する人がいないと成り立たない。状況によっては公募が追加される。その様子がまざまざとわかるニュースを住宅新報がこの1月5日に配信した。

 とても短い記事だから、見出しと記事全文を引用する。

●住宅金融支援機構と土木研究所「理事長職」を追加公募 国交省
 国土交通省は、昨年12月15日までとして公募していた住宅金融支援機構と土木研究所の理事長職について、1月18日まで追加公募する。任期予定は双方ともに17年4月1日〜21年3月31日まで。原則として任期満了時点で70歳未満であること。追加公募期間中に所定の提出書類(履歴書、自己アピール文書、返信用封筒)を現金書留扱いで国交省担当に郵送する。問い合わせ先・国土交通省大臣官房人事課、電話03(5253)8174。

  国交省のサイトを見ると「平成29年1月18日現在 最終応募者数4名」と出ている。結果がどうなったのかは、知らない。
                   ☆
 文科省もこういうガラス張りの方法で決めればよかったのだ。わざわざ説明しにくい組織をはさむような小細工をせず、誰にでもわかる開けっ放しの形で話を進めればよかったのだ。

 公募という方法なら、少なくとも素人が権限だけ持つようなことにはならないだろう。《仕事をやれる人がそれなりのポストにつく》と胸を張って言えるではないか。

問題は「天下り」そのものではなくて「わかっていない人が不相応の決定権を持つ」仕組みにある

 今は求められる仕事をこなせる人がそれなりのポストにつくことは当たり前の時代なのだから、天下りだろうと天上りだろうと、それはポスト変換ルートのパターンに過ぎない。そうでなく、ポストの変換と仕事の対応能力のバランスがとれていないと、とたんに問題が起こる。

 以前の昭和年代には、そうした問題が起こってもメディアも注目しなかったし、社会的な関心も向けられなかった。結局、知られないまま問題は表面化せず、内向してしまうのが普通だった。

 今は、そこが少し以前と違ってきたのかもしれない。今度の文科省天下りのニュースを見ていると、つくづくそんな気がする。
                   ☆
マンション管理の分野では、どうだろうか…。
 

| muraitadao | コラム | 15:42 | comments(0) | trackbacks(0) |









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