村井忠夫のマンション管理ブログ

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【語り尽くされていないこと、見逃されていること50:メール】使い慣れた人とまるで使えない人が隣り合って住むマンションで・・・

メールでわかりあう世界。挨拶抜きでいきなり用件が分かりさえすればいい、と言えば確かにそうだが・・

 安倍首相夫人のメールが、何かにつけてニュースに流れる。

 なじんで久しいメールだが、考えてみると身辺には今でも使っていない人が珍しくない。思い返すと、メールのやりとりを始めて間もないころは、メール特有の文章スタイルや言葉の使い方が毎回いつも気になっていた。

 例えば、メールの冒頭に必ず出てくる《いつもお世話になります》というあの書き方。会ったこともないし顔も知らないような人からのメールの文面なのに、始めて読む文面が《お世話になります》で始まる。ご丁寧にそういわれても、「お世話になる・・」といわれるほどの実感はまるでないのだが。

 その一方、普通の手紙文ならまずくだけたやり取りで書き出し始める言い方は、メールでは全く関係ないらしい。

 メールの書き方はよくいえば率直ということだろうが、挨拶抜きでいきなり用件に入るむき出しの書き方が相手にどんな感じで受け取られるだろうかと気になる場合は、逆にその率直さが気がかりの種になる。そんなことをいちいち気にしても仕方がないといわれれば、確かに、もう、そうなのだが・・・。

 そんなわけで、何かを伝えたい相手にメールの表現感覚で書いていいかどうかは、今でもけっこう気になっている。何かを伝えようとする時に、《拝啓》とか《時下ますます・・・》とか紋切り型で書かなくても、《桜がほころぶ時期になりました》といった程度のことはこちらも書きたいし、もらった時もその方がいい。

 これは、全く理屈では説明できない気持なのだが。 

「冗長度」のある文章の方がわかりやすいという考え方の真実。“無駄”の重み

 ここまで書いてきて、突然思い出したことがある。

 もう40年以上も前になる。昨年(2016年)亡くなられた唐津 一さんに教えていただいた言葉だ。情報工学の大学者だった唐津 一さんはこの頃まだ松下通工だったか・・。

 注)唐津 一氏は情報工学者。旧電電公社、松下通信工業(現・パナソニックモバイルコミュニケーションズ)から東海大学へ。電子計算機時代初期の実情からニッポンそのものまで独特の語り口で飽かず論じ続けた。昨年の終戦記念日に97歳で世を去った。

 持ち前の気さくな雑談の中で《冗長度》という言葉があることを雑談の中で教えられた。英語では《リダンダンシー》というのだとも。

 精密性が欠かせない運転席などの設計で、無駄な操作を一切しないことばかりを重視する考え方で計器の位置などを設計すると、かえって操作者がミスを起こしやすくなる。理屈通りにならない厄介なこの現象を防ぐために、あえて無用な計器をわざわざ紛れ込ませた設計をした方がいい場合がある。

 判断源となる情報データを読み取る人間の理解能力には合理的な必要度だけでは割り切ってしまえない側面があることを考えて、あえて必要性のないものを意図的に介在させて人間の緊張度を緩めるという考え方だ。この考え方を《冗長度》というのだ、と。

 40年も前に聞いたこの考え方や言葉が、その後どうなっているのかは全く知らないのだが、人間の理解能力にはこういう考え方が必要となる側面があると気づかされた衝撃は、とても大きかった。

 《冗長度》という言葉を知って以来、一概にムダといわれることを気軽に見過ごせなくない発想が身体に染みついてしまった気がする。

 昔、私の文章は、建設省からきた天下りの役人たちから、いつも《回りくどい》とか《余計なことを言いすぎる》などと文句の言われ通しだった。

 逆に、普通の人たちには喜ばれた。わかりやすいとか、納得できて安心する、とも。この当時の経験は《和文邦訳》を表現上、最大に重視する習性となって、その後の執筆活動の支えになった。その点は、今も変わらない。 

《冗長度》という言葉の中にメール全盛時代のマンションで欠けているものが見つかるかもしれない

 マンションは大勢の人が住んでいるのに、コミュニケーションが足りないなどといった嘆きを聞くようになってから久しい。誰もがそういうのに、どうしたらいいのかわからない。

 そんなもどかしさが、もう長らく続いている。

 このごろ何かにつけて気になるのだが、管理組合の中で以前にはなかった形で意見が対立することがある。そういう場合、意見の出し方、もっと詳しく言えば、自分の考え方を表現する方法や言葉の使い方が原因ではないかと思えることが多い。自分の考え方を相手にわかってもらえるような言い方を考えないまま、自分の考え方ばかりが露骨に並ぶ言い方がきっかけになったりする。

 この現象にメール的表現感覚と非メール的表現感覚の違いが関係してはいないだろうか。相手の受け取り方をあまり考えないまま、いきなりむき出しの書き方で短い言葉を並べる感覚で意見を述べ、物事を決めている傾向はあるまいか。

 メールが無縁な高齢者世代とメール万能の世代との間に『伝えてわからせる』ための表現感覚にギャップが生まれているのではないか。
                   ☆
 表現感覚は属人的な問題だ。だから、どんな人たちの住むマンションなのかが実情にことごとに関係する。それだけに管理の現場を知らない人には通じない問題だ。

 いろんな人の意見や経験を聞きたい。

| muraitadao | コラム | 20:07 | comments(0) | trackbacks(0) |









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