村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【語り尽くされていないこと、見逃されていること57:マンション61年】四谷コーポラス建て替えのニュースで思い浮かぶ数限りない感慨

11年前このブログの第1回に「四谷コーポラス」のことをめぐる様々な思いを書いたのだが・・・

 「四谷コーポラス」が建替えられることになったという。《それがどうした?》などとは、誰にも言ってほしくない。

 11年前の2006年(平成18年)11月26日にスタートしたこのブログ第1回に、四谷コーポラスのことを書いた。そのときのタイトルは次のようなものだった。《民間分譲マンション半世紀の証人「四谷コーポラス」のことを誰も言わないから》。

 ブログを書くようになるまでの長年マンションや住宅ローンのことをいろいろ書いてはきたものの、ブログを書く感覚はまだ正直に言って呑み込めていなかった。

 そんな中で、書きながら、ふと、今月は11月だ・・、そういえば四谷コーポラス竣工の月だったな・・という連想が浮かんできて頭の中に浮かぶ言葉をそのまま字にする気分で書いた。

 思えば、このマンションのことをセミナーや講演会で話の枕にどのくらい使わせてもらってきたことか。原稿の前文に何回ぐらい書かせてもらってきたか。

 マンション管理に寄せる関心が深い人を四谷の現地に案内したこともある。

 マンションの原型を語るときには、いつもこのマンションのことが頭にあった。それもこれも、このマンションが敗戦後10年そこそこの時期の物件だったからだ。

 1956年(昭和31年)11月竣工。エレベーターなしの5階建て。《もはや戦後ではない》という経済白書の言葉が複雑な実感を生んだこの時代、233万円と156万円の28戸が三か月で完売。住宅ローンなどなかったが、信販会社(日本信販・現在の三菱UFJニコス)が分割払いで売り出した時の利率は元利均等返済で年12%だったと聞く。

 そんな時代に生まれたマンションが、61年間も建ち続けていた。

 驚くべきことではないか。

このマンション建て替えについて《誰も言わない》のは依然として今も同じか

 このブログの第1回で四谷コーポラスのことを書いた時のタイトルに「誰も言わないから」などとひねくれた言葉を入れたが、10年以上たった今も状況はあまり変わっていないようだ。

 四谷コーポラスの建て替え計画は、このマンションの管理組合ではなく建替え事業を担当する旭化成ホームズと旭化成不動産レジデンスの両社が連名で発表した。旭化成というそれなりの規模と歴史のある企業の系列会社の発表だから、管理組合独自の発表よりも情報発信力はあったと見ていいだろう。

 現に、この発表でそれなりのニュースを流したところもあった。しかし、それも業界紙を除けば毎日新聞の夕刊ぐらいで、大半のメディアは流さなかったと思う。どの新聞もテレビも役所の文書の忖度だの北朝鮮のミサイルだのばかりだったから。

 そのせいかどうか、マンション管理関係者の中でも、このニュースを知っていた人はあまり多くないような気がする。

 そんな中で、旭化成ホームズと旭化成不動産レジデンスのプレスリリースは、ありきたりの発表資料と違ってかなり中身が充実していた印象が強い。

 2017年5月30日付けのプレスリリースは7ページある。

 タイトルがやや長いが、そのまま紹介する。『1956年竣工・築61年、日本での民間分譲マンション第1号「四谷コーポラス」建て替えについて〜民間分譲マンションとして初めての管理運営や割賦販売の歴史も〜/〜区分所有者の9割が再建マンションを取得予定〜』

 本文には次のようなことが述べられている。

,海3月29日に管理組合の建て替え決議成立、5月に全員合意、9月に解体工事着手の経過であること。

△海離泪鵐轡腑鵑篭菠所有法以前に実現した管理方式で運営され、住宅ローン登場以前に割賦販売で売り出されたこと。

2006年から建て替え・大規模修繕工事の検討会がスタートしたが、耐震性、給排水設備老朽化などにより建て替え決議に至ったこと。

な件が小規模のため床面積増床のメリットはないが、立地の良さや愛着の強さがあって区分所有者の大半が再取得する前提で要望や想いに応える計画となったこと。

 この後、「機ゥ泪鵐轡腑鵑領鮖砲涼罎任了傭コーポラスの位置づけ」「供セ傭コーポラスの建物概要」が写真と表や図面を添えながら5ページ足らずのスペースで説明されている。

 最後に〈今後の情報公開とお願い〉と題して次のようなことが書かれている。

8月まではまだ住んでいる人に配慮して現地内外の撮影は遠慮してほしいこと。

9月の解体前にマスコミ向けの説明会や撮影会を予定していること。

7築研究者を含む一般向けの現地公開を検討中であること。
                   ☆
 正直な感想を書く。

 基本的に企業ベースでまとめられた資料だが、よく考えて工夫された内容になっていると思う。このマンションの建て替えについて書いたり語ったりする人の大半は61歳にはなっていないだろうから、このマンションができた時代背景など想像しにくいはずだ。その点を考えて、在来の建て替えとの違いを理解するための要点を過不足なく盛り込んでいるのがとてもいい。ただし、注文が二つある。

 一つは地図をぜひ添えてほしいこと。居住者の愛着とも関わる四谷本塩町(よつやほんしおちょう)のロケーションがこの建て替え計画と大きく関連しているからだ。

 二つ目は、居住者の思いなどを伝えられる工夫を今後の機会にぜひ考えてほしいこと。このマンションの建て替えに人の温もりを感じたいからである。

| muraitadao | コラム | 10:56 | comments(0) | trackbacks(0) |









http://murai.realestate-jp.com/trackback/991834
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< August 2017 >>
+ SELECTED ENTRIES
+ RECENT COMMENTS
  • 【番外】11年目。公開遺言のつもりでブログを書き続けます
    マンション・チラシの定点観測 (11/26)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    村井忠夫 (12/07)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    尾下 義男 (12/07)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    村井忠夫 (11/23)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    尾下義男 (11/23)
  • 2年半ぶりでメンバーも変わって再開のマンション管理検討会、たった1か月で結論を出すとは・・・・
    とおりすがり (04/24)
  • 最新の「マンション総合調査」から読めること、読めないこと
    村井忠夫 (09/06)
  • 最新の「マンション総合調査」から読めること、読めないこと
    まるーべり (09/06)
  • 都議ヤジ問題の本当の理由は議員の当事者感覚の貧しさ
    村井忠夫 (06/26)
  • 都議ヤジ問題の本当の理由は議員の当事者感覚の貧しさ
    ポリス (06/26)
+ RECENT TRACKBACK
  • 「沈黙は賛成じゃない」という論理。選挙や総会では?
    マンション管理の情報屋。。。 (09/22)
  • マンションの中の喫茶店が話題になる・・・・:マンションの共用空間の新しい意味をもっと考えていいのではないか
    神園良輔の『マンション展望』 (05/05)
  • マンガ説明入りの規約解説本があってもいいじゃない?でも実際には簡単にいかないけどね
    マンション管理士情報ナビ (05/27)
  • マンガ説明入りの規約解説本があってもいいじゃない?でも実際には簡単にいかないけどね
    マンション管理士情報ナビ (05/27)
  • 女児マンション転落事故のニュースが浮かび上がらせたこと:どこのマンションでも同じことが起こる可能性にどれだけの人が気づいているか
    MANSIONS-COMMUNITY blog (04/15)
  • 「億ション」は最高が1億円なのか、最低が1億円なのか、それとも・・・:管理の基本原則は何億円でも関係ないが
    マンション展望 (02/16)
  • 「美しい国」で、これ以上「美しくないこと」が起こらないように:もっと集合住宅に住む不安を減らすための議論を
    マンション展望 (12/01)
  • 8年前の2月、国会でマンション管理をめぐる史上初の議論が行われた。そして、昨日の朝刊には・・・
    NONブログ (11/27)
  • 書名は買い手にとって本のすべて。本の名前と内容はなるべくなら、あまり違わない方がいいと思うのだが・・・
    高層マンション (08/27)
  • 新しい住宅が建たなくなったというニュースの怖い連想:暗い窓ばかりのマンションが思い浮かぶ・・
    マンション展望 (08/25)
+ CATEGORIES
+ ARCHIVES
+ LINKS
+ PROFILE