村井忠夫のマンション管理ブログ

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【語り尽くされていないこと、見逃されていること62:年数感覚】字の向う側のイメージで本当の意味が読み取れる戦後72年

何もかもがすっかりなくなってしまった8月。でも明日からの日々への思いを取り戻したのも8月

 今年も、また8月。
                 ☆
 72年前。14歳の少年だった。

 8月14日までひたすら聞いてきたこと、一途に信じてきたこと、未熟ながら懸命に考えてきたことが、すべて8月15日にひっくり返された。「あれは、もう、みんな違うんだよ」と否定された。何もかも「なかったことになる」・・・。そんなことがあるものか、と思った。

 だが、「戦争に負けたんだ」と思いながら、一方で「あぁ、これで、やっと戦争が終わったんだ・・・」とも思った。ほっとした、というのが実感だった。

 夜になるとその実感がさらにはっきりした。電灯をつけても、もう灯りが漏れるのを心配しなくていい。夜になっても明るいってこんなにいいものだったかと思った。

 ラジオの天気予報を聞いて、あ、ずいぶん聞かなかったけれど、そういえばこんな放送があったんだな・・と思った。明日がどうなるかわからない毎日、誰もが天気予報など、とっくの昔に忘れていたが、ラジオを聞いて思い出した。戦争がないから、これからの天気を聞いて明日のことを考える意味があったんだな・・・と気がついた。

 時代や年数は、その時代に生きてきた人間の記憶と切り離せない。

 今、あらためて、しみじみ、そう思う。

終戦後の年月は「その日その日の生活光景」の積み重なりのシーンだった

 正直に言って、言葉としては「敗戦」よりも「終戦」の方に実感がある。でも、その「終戦」後の日々は長かった。

 何もかもがない中で「明日がある」という気持だけにすがる毎日だった。朝が来て、夜になって、「今日も、何とか一日終わったな・・」と誰もが思った。そんな日が続いて一か月過ぎ、気がつけば季節が変わり、そして年が過ぎていった。

 少なくとも1946〜1947年(昭和21〜22年)ごろを思い出すと、そんな気分がよみがえる。
                   ☆
 終戦後の日々を記録文献だけで語ったり論じたりするケースに接することがある。

 一概に文献だけで何かを言うのを非難できないだろう。人によっては文献を頼りにするしか方法がないこともあるから、そういう語り方もやむを得まい。

 しかし、語ろうとする時代によっては、自分が語ることと照らし合わせながら、もう少し謙虚であってほしいと思う場合がある。想像で空疎なイメージをふくらませてほしくないのだ。

 昨年のブログにも書いたのだが、講談社から出た井上寿一著「終戦後史」のことは、この点で気にかかる。この本は一昨年に出たのだが、《押し寄せるアメリカの大衆文化》という見出しの東京裁判にふれた部分にこんな記述がある。

「・・・その時判決が下る。国民は街中で、駅のプラットフォームで、家の中で、ラジオの実況中継に耳を傾けた。・・・」

 ここを読んで、反射的に、あ、これは想像で書いたなんだな・・と思った。

 戦後間もないこの頃、ラジオに実況中継などまだなかったし、ラジオ自体が真空管式の大きくて重い箱状だった。携帯ラジオなど想像したこともなかった時代だったから、《街中で》とか《駅のプラットフォームで》とか書かれると、《そんなこと、いったいどこの話なんだ》と言いたくなる。

 どう考えても文献資料で読んだ時代記録にあとから著者が独自の想像イメージをかぶせて書いたとしか思えない。

 (この本にはほかにもこういう感じの個所がいくつかあるのだが、ここでは書かない。)

 ただ、著者は有数の実績がある高名で有数のな政治学者・歴史学者だ。そんな人の書いたこの本は説得力のある立派な本であって、この時代を生きてきた人間も知らなかったことや気づかなかったことをたくさん教えてくれた。そのことは、きちんと明記しておきたい。

 その上であえて言うのだが、この本の書名は「終戦後史」ではなく『政治外交面からの終戦後史』とすべきだった。この時代を鮮明に記憶している人間が想像したこともないようなイメージを書くべきではなかった。読後感は複雑である。

住宅の絶対的戸数不足で始まった戦後72年のいま、空き家が課題となる意味を考える手がかり

 年数を考えるときには、文字の向う側に何を読み取るかという点で、特有の感覚が欠かせないと痛感する。経過した年の積み重ねから浮かび上がる連続した時の流れから何かを思い描いた時に、はじめて年数の語る意味が浮かび上がるのではあるまいか。

 そう考えないと、《現在が過去から続く時間の流れの上にある》というわかりきった肝心なことが読めなくなってしまう。

 時代や年代のイメージの思い描き方が人によって難しくなるのは当然だが、語ろうとする時代や年代によってこの点が重い意味を持つのは間違いない。
                   ☆
 終戦の時、住宅不足戸数は430万戸だった。

 72年が過ぎた今、人口減少や少子高齢化に直面して、いま空き家が深刻な課題となる。

 住宅という側面から見た戦後年数を読み取るヒントはどこかにあるのだろうか。
 

| muraitadao | コラム | 17:00 | comments(0) | trackbacks(0) |









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