村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【語り尽くされていないこと、見逃されていること63:実感的住宅問題】戸数不足から空き家続出までの経過を見てきた62年目の実感

海の物とも山の物ともわからぬまま住宅金融公庫で住宅と関わり続ける日々が始まった・・・

 1955年(昭和30年)8月1日が、住宅に関わって33年に渡る長い歳月の始まりだった。この年は就職難で、卒業したときも就職口を探していた。

 そんな中で、偶然聞き込んだ話を頼りに住宅金融公庫に入った。公庫なんて、名前も聞いたことがなかったし、いったい何をやるところなのかもまるで判らぬままだったが、そんなことをいちいち気にしてはいられなかった。

 2か月ほど過ぎて「今月からもう公務員ではなくなる。ついては住宅公団というところができたので、そちらの方がよければ移ってもいいし、このまま公庫に残ってもいいが…」という奇妙な通知を受けた。考えるのが面倒くさくて、そのまま残った。

 その時は、公庫とか公団とか聞きなれない名前の組織がどう違うのかなどを知りたいとも思わなかったし、聞いてもわかる人はいなかったろう。

 でも、公庫とか公団の区別は、その後、住宅に関わる年数が長くなるにつれて折あるごとに気になるようになってきた。

 住宅金融公庫での33年間、いつも頭の上には建設省から来た人たちがいた。天下りなどという言葉もまだなかったが、住宅のことがわからない割には見当違いの文句が多くて、我慢の日々だったことを思い出す。

 だが、住宅のことはわからないし、まして金融なんて・・・という人たちでも唱え続けていたスローガンがあった。「住宅建設五箇年計画の公営・公団・公庫の三本柱」だった。《住宅は道路と違って票にならないからねぇ》という政治家にもこのスローガンはそこそこに有効だったらしいが、やがて、これに住宅建設の景気刺激効果という強力なメニューが加わった。

 アメリカ仕込みのご託宣に従って、1970年代後半(昭和50年代初頭)から融資政策による住宅建設で内需拡大が景気テコ入れ効果を生むというキャンペーンが有無を言わせぬ形で現場に持ち込まれた。マイホーム、マイホームというCMそこのけのスローガンで。

 住宅政策という名だけが残って、実は、もう、まぎれもなく中身が経済政策にすり替わったのだと思った。

時が流れると住まいと人がどう変わるかをわが身の住生活史に重ねて確かめてきた歳月

 終戦当時の《住宅不足戸数430万戸》のトーンが弱まるのと入れ替わりに「日本人の住宅はウサギ小屋並み」と外国に言われて「量から質へ」といきり立ち、住宅ローンが本格化した。「一億総中流」という言葉と「マイホーム」というスローガンは相性がよかったのだ。住宅ローンの広がりが支えになって関連業界も関連ジャーナリズムも熱気に覆われた。それから、バブルがやってきた。

 だが、その後、かつての熱気は冷めて様相は一変した。湧きに沸いた業界もジャーナリズムも「今は昔」。人は老い、減った。子供が少なくなった住まいには静けさだけがた漂う。・・・・・

 人間にとっても住まいとしての建物にとっても、流れる年数は変わらない。ひたすら住宅に関わり続けてきた者には、何年たったら、何が、どういうふうに変わるかを見つめ続ける歳月でもあった。

 この歳月は、住宅金融公庫での政策実現効果の見極め→住宅ローンを通じた評論活動→自分自身のマンション居住スタート→管理組合組織への関わり→マンション管理センターへの協力→マンション管理サポートという形で、「住まい」が人間存在の根幹に関わっている実感をわが身の住生活史に重ねて確かめる結果になった。

 歳月は流れた長さだけ、すべてのものを確実に変貌させる。何年たつと、何が、どのように変わるかを見つめ続け確かめながら人は誰もが老いていくのだが、私の場合、その実感は住宅に集中していることを、いま、つくづく実感する。

いま見えている光景は過去の流れの中に始まりがある。そこは住宅も同じ。マンションも同じ。

 2017年のいま見えている光景は、脈絡もなく突然生まれたものではない。住宅の現状も、その点は同じだ。

 いま課題となった空き家も、実情は昔から確かめられていた。住宅戸数が世帯数より多いことがわかったのは1968年(昭和43年)、マンションブームを受けてマンションが公庫融資の対象になったのは1970年(昭和45年)、物件情報誌を無視できないほど住宅市場が存在感を増した一方で、「過疎」という言葉を新聞でみて気になり始めたのが1967年(昭和42年)ごろ・・・。

 そんなころ自分自身がマンションに住み始めた。1974年(昭和49年)4月だった。今も、そのマンションに住んでいる。

 居住歴43年ともなれば、管理組合とは無縁でいられない。いやおうなしに、マンションで起こる様々なことに降りかかられて過ごした年月でもあった。

 何年たてば、マンションでは建物がどう変わるか、住んでいる人間が齢を重ねてどう変わるか、世間一般の感覚や常識がマンションの中ではどのくらい通用するか、時がたつとマンションでは竣工時に考えたこともなかった事態がどのくらい起こるか、実情に照らし合わせた建前と実情がどうなっているか、法律などの仕組みをどれくらい当てにできるか・・・。

 際限もないほどのことを山ほど見てきたから、《マンションは管理を買え》などという言い方が、実は、途方もなく真っ赤な大嘘であることもよくわかった。

 ここからあとのことは、次に書く。

| muraitadao | コラム | 09:17 | comments(0) | trackbacks(0) |









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