村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【語り尽くされていないこと、見逃されていること64:築後・居住年数】43年住み続けて見届けたマンション管理の建前と実情のギャップ

管理組合の存在感などなかった竣工後の10年が過ぎて最初の大規模修繕工事に直面した頃まで

 1974年(昭和49年)4月から住み続けてきたマンション。竣工したころ周辺はまだごく普通の郊外住宅地だった。多摩川のこちら側で、世田谷の成城はすぐ近くだ。都内最小の市であることが幸いしたのかどうか、NTTの市外電話番号03が、さも誇らしげに語られた時期があった。

 11階建て4棟、約600戸。大半はサラリーマン家族が住む文字通りのマイホームだった。マンションが少しずつ大衆化して区分所有法が始めて改正されたが、マンションに関係する仕組みは何もなかった。全国のマンションストック戸数もまだ50万戸に及ばぬ時代だったから・・。
  自分のマンションに管理組合などあるのかないのか、住んでいてわからない時代でもあった。わからなくて特に困ることはなかったし・・・。

 しかし、せっかく同じマンションでいっしょに住むようになったのだからという意見が出て、まずいくつかのサークルができた。そのあとで、自治会も生まれた。

 きちんとした管理組合が生まれたのは、そんなことがあった竣工後2年が過ぎたころだった。でも、その管理組合も、多くの人に関心を持たれることもないまま年月が過ぎた。存在感がない管理組合だったから、総会を開くこともなく管理費を集めるといった実務は文字通りの管理会社任せだった。この期間に何があったか、あとから片鱗めいたことを何度か聞いたが、今は、もう確かめようもない遠い昔のことである。

 そんなのんきな年月が10年を越える頃、さすがに以前とはマンションの空気が変わり始めた。時間が経つと住む人も顔ぶれが変わり齢を重ねて、入居当時の様子がどんどん変わっていく。

 建物の劣化が目立つようになり、その取り組みに迫られて名ばかりだった管理組合の存在感が次第に大きくなってきたのは、最初の大規模修繕工事が課題になった頃である。

 このころ、いくつかの都市伝説めいた通説があった。その一つに「竣工後10年経ったら大規模修繕工事をしなければならない」とか「修繕費の財源となる修繕積立金は管理費の1割が標準である」というのがあった。でも、そういう通説を確かめようとしても、どこの誰を当てにすればいいのか途方に暮れるほど何もわからなかった。

 でも、どんな方法で大規模修繕工事を実行するにしても、1年任期の管理組合の理事会にはとても手に負えないことだけは誰の目にもはっきりしていた。

 やむなく肚をくくって理事会をサポートするプロジェクトチームを有志で作ることになった。これが、特定の課題に取り組んで理事会に意見具申する組織として、今では標準管理規約にも出てくる「専門委員会」の始まりだった。

 だが、現実には修繕積立金がわずかで、お金が足りなかった。で、ほぼ1か月分の給与を上回るほどの臨時負担金を集めて取り掛かることになった。そのために、それまでめったに開いたこともなかった総会を開かざるを得なくなった。

 初めてのことで心配したが、結果は何とかなった。ずいぶん文句も言われたが、どうしても必要ならやむを得ない、という空気だったから。

 みんな若かった。文句も賛同もみんな同じように実現した。何しろ一億総中流の時代だったから・・・。

管理の意味の重さを切実に感じた竣工後20年目の配管工事、2度目の大規模修繕工事、そして・・・

 この時期からあと建物の劣化に対応した大規模修繕工事の都度、居住実態の変化と管理組合組織能力を思い知る機会がどんどん増えていった。

 相次ぐ水漏れに対応する給排水管改修工事に取り組んだ時、全戸の室内リフォームの実態確認に迫られて実施したアンケート調査の一項目で全戸の居住歴を調べた。回収率が90%を超えたその時の結果で、竣工後20年を迎えたマンションで、竣工時から住み続けてきた人は全600戸の25%だったことがわかった。ちょうど4分の1である。管理組合組織運営と居住実態の変化の関わりの大きさを痛感せざるを得ない時期が来ていた。

 この頃から管理組合の難しさは、年々増える一方だった。放っておけず、さりとて答えが見つかるわけでもない難題に苦しむ年が続いた。

 経済事情の激変がこれに重なった。

 竣工以来の委託先だった管理会社が変わった。かなりの管理組合で委託先管理会社の変更がリプレイスという名で相次いでいたが、私のマンションではそんなことを誰も考えていなかったのに、委託先管理会社の親会社が最大手の不動産会社に合併したためにこちらの意向と全く無関係に相手が一方的に変わってしまう結果になった。

 別段どうということもないが、今まで《管理組合にわからなくても管理会社に聞けばわかる竣工以来30年の経過に関係したことがわからない》不安が出てきた。

 それぞれのマンション固有情報の保有量は管理組合よりも管理会社の方が圧倒的に多いと、20年前からセミナーなどで管理組合の人たちに話してきたことを、ほかならぬ自分のマンションで確かめる羽目になってしまった。
                   ☆
 書き始めると思い浮かぶことは際限がないからもうやめるが、一つだけはっきり言えることを書いておく。

 時間が過ぎると、すべて物事は変わっていく。人は老い、建物が老朽化するのは当然。しかし、その当たり前のことに長寿命のマンションの管理がどこまで対応できるかという点の心もとなさは想定をはるかに超える。43年かかって確かめたそのことは、次回に書く。

| muraitadao | コラム | 14:42 | comments(0) | trackbacks(0) |









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