村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【43年の実感で「マンションの管理」を考える1】マンションが語る建物と住む人の姿に浮かび上がる歳月の実情

今回からブログはトーンを実感本位に切り替えて書きます

 ずっと昔、住宅評論家というクレジットでいろいろな原稿を書いていた。当時全盛を極めたリクルートの「週刊住宅情報」にも。

 ある時、中古マンションの選び方を書いた原稿の冒頭に《どんなマンションも買って住むようになったその日から、一日ごとに間違いなく中古マンションとなる日が始まります》と書いたら、たちまち編集担当の人からすぐ《こんな夢の壊れる書き方では困ります》というクレームが入った。

 昔の新築は、今の中古。昔の妙齢の美人も、必ず老婆になるのと同じ。

 自分自身もマンションに住み続けて確かめてきたこの実感は、このクレームを受けた時から今もまったく変わらない。

 43年の居住年数はこのブログを書き続けてきた11年間とも重なる。

 長寿命のマンションが住宅として長い年月を過ごすと、どうなるか。

 きわめて根源的だが、実は、ほとんど確かめた人がいない。ブログを書き続けてきた11年は、それを確かめながら書く歳月でもあった。

 そのブログは12年目に入るが、書きたいことがまだまだ山ほどある。

 そこで、今回から、こうした実感をもっと正直に打ち出しながら書いていきたい。

 ブログを書くことには、マンションの経年変化の本当の姿を、少しでもありのままに多くの人に伝えられるメモを書き綴る意味があると思うからだ。

43年・・・。わが人生の半分をこのマンションで過ごしてきた

 1974年(昭和49年)4月に竣工した時から住み続けてきたマンションで43年余りが過ぎた。数日前の10月1日で86歳の誕生日を迎えたから、人生のちょうど半分をこのマンションで過ごしてきたことになる。

 新宿から急行なら30分弱で着く都内最小の市。小田急線の駅から15分以上歩かなければならない程度に離れていたから電車の音は遠かったし、まだ畑があちこちに多くて、11階のベランダから丹沢の山並みと富士山が見えた。

 43年住み続けてきた理由の一つは、たぶんこの眺めだろう。4DKのスペースは不十分だったが、何より立地に満足感があった。

“一億総中流時代”の建物が総中流時代でなくなった今も建ち続ける複雑さ 

 しかし、満足しない人の方が多かったようだ。住み続けているうちに知っている顔ぶれがどんどん減って、名前と顔が一致しない人の数が増える一方だった。

 何しろ、入居当初はみんな誰もが似たようなものだった。どの住戸も家族4人ぐらいで40歳代のサラリーマン。東京オリンピックから10年しかたっていなかった蛙の時代のマンションはファミリータイプばかり。

 何度もマンションブームがあったが、売り出し物件の大半はいつもファミリータイプ。売る方にも、同じような間取りと広さだけで特色を出せばよかった。

 《一億総中流》がそのまま絵になったのが、この時期のマンションだった。

 だが、長寿命のマンションが40年以上過ぎると、この状況が変わってくる。

 年数がたって建物自体は竣工時の様子が古びたまま同じ場所に建ち続けるが、人間の方はほとんど入れ替わってしまう。何年たっても住み手が変わらないままというマンションはめったにない。

 43年が過ぎたマンションに住む人の顔ぶれは変わっていく一方で、表札やネームプレートもない住戸が増えていく。そうなるといつも出会う人が「住んでいる人なのか、よその人なのか」の見分けもつかなくなる。

 エレベーターに乗ると、11階から1階に付くまで40秒かかる。誰かと乗り合わせた時この狭い空間で押し黙ったままの気づまりな感じが嫌で、できる限り声をかけるようにしている。反応は様々だが、何人かは何か応答してくれるから、その後も出会った時に声をかける機会が生まれる。

 そんな形でのマンション住まいだから、マンションでのコミュニティ論議も理屈倒れな話であれば、その中身も語る人もすぐ見極めがつく。

 すべて、一億総中流時代にできた当時のままのマンションが、一億総中流ではなくなった時代に建ち続けているからこその実感だと思う。

40年以上過ぎたいま中古マンションの買い手が今も相変わらず

 竣工したころ何もなかった周辺に、この10年足らずでマンションが激増した。この人口減少時代に、市の人口が増え始めたほどである。

 こちらは市内最古のマンションだが、売れ行きに苦労する新築マンションが1年以上チラシをまく中で、連日のように不動産会社の売却勧誘の呼びかけが続く。

 たまさかの成約事例を見ると、間違いなく43年前にここを買った時の価格の何倍かにはなっているようだ。

 そんなことになる理由は、例の「マンションは管理を買え」というご託宣のおかげか。

 でも、あれは、まぎれもない大ウソだ。マンションの「管理」がわかっていない人がありがたそうに唱える嘘っパチである。

 住み続けてきた43年は、こんな言い方の嘘を確かめる年月でもあった。
 

| muraitadao | コラム | 07:28 | comments(0) | trackbacks(0) |









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