村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【43年の実感で「マンションの管理」を考える4】大規模修繕工事に直面してわかったマンションンの本質と管理手法の真実

「マンション住まいのマンション知らず」。一戸建て感覚で集合住宅に暮らす居住感覚がもたらすギャップに大抵の人は気づかない

 年月がたてば、すべてが古くなる。マンションも例外ではない。竣工後の経過年数分だけ建物も住む人間も確実に古くなる。

 だが、ほとんどの人は、それに気づかない。

 このことを否応なしに気づかせたのが、マンションの大規模修繕工事だった。

 このブログを書いている今は3回目の大規模修繕工事が終わる時期だが、自分の住むマンションで関わってきた3回の大規模修繕工事で、この実感は43年前も今も全く変わらない。

 時間が過ぎればどんなモノも古くなることぐらい、みんな知っている。しかし、それは、あくまでも《自分にわかること》の範囲内にとどまる話だ。どれほど自分に関係していても《自分にわからないこと》は、古くなっていることに気づかない。

ある年齢になって自覚する高齢者の健康状況を考えれば、痛切にわかるはずだ。

 普段は気づきもしないが、われわれは《自分にわかること》よりも《自分にわからないこと》の方がはるかに多い状況で生きているのではないか。

 マンションに住んでいると、つい忘れてしまっていることに有無を言わせぬ形で気づかせられることが多い。突然、何かが起こると、自分がどれほど知らないこと尽くめの空間で暮らしているかを、あらためて思い知らされる。

 何かが起こって「突然」と思うのは「知らなかった」だけのことで、実は、見えないところでは異変の因果関係が確実に進んでいたことにあとから気がつく。

 マンションという建物は大きくてわかりにくいための、そうした異変の因果関係が目に見えない。しかし、目に入らなくても、自分の生活空間で起こる大半のことはマンションという巨大で複雑な建物の一角で起こった現象なのだ。

 ここに気づくと、マンションを「わかっている」つもりでもそれは何百戸とか何十戸もある大きな建物の一住戸内で気がついただけの《ちっぽけな限られたほんの一部分のこと》に過ぎないことに気がつく。玄関ドアを開けた外側には「わかっていない」部分や「見たこともない」が膨大な規模の広がりなのだ。

 大きくて複雑なマンションに住んでいながら、居住感覚は一戸建て住宅のレベルで何百分の一にとどまるというギャップが生まれるのだ。

 だが、このギャップに大半の人は気づいていない。

 こうして大半のマンションで「マンション住まいのマンション知らず」が生まれることになる。

組織レベルで「理解して物事を決める」難しさが大規模修繕工事最大のハードルだった

 言葉で書けば《これだけのこと》だが、マンションの管理ではこれが絶対に無視できないハードルになる。自分が知っているのは大きくて複雑なマンションのごく一部分のことであって、実は、知らないことの方がはるかに多いことに大抵の人はまったく気づかない。そんな状態で声高に自分の住戸だけを前提とした意見に管理組合の理事会が頭を抱えるケースがどれほど多いことか・・・。

 大規模修繕工事が実行の課題となった時期の管理組合は、まさにそんな状況だった。総会開催さえもいい加減だったのだから、管理組合にとって、この課題が厄介な重みを持っていたのいは言うまでもない。

 だから、よくわからないままではあっても、10年以上が過ぎて汚れや傷みが気になり始めたマンション全体の修繕工事を管理組合が実行することに対して、認識不足にまったく気づかない状態の反応が表れてきた。

 誰も知らないような個所に多額の金を注ぎ込んで修繕工事をする?

 とてもじゃない感じの、そんな多額のお金をいったいどうやって用意するんだ?

 いつも通りに暮らしている生活空間で、そんな騒々しい工事がなぜ必要になる?
 ・・・
 大部分の意見は「そんな厄介な修繕工事をしなくても別にウチは困らない」とか「そんな修繕工事をやらなくたって今日明日すぐ困るわけでもあるまい」という類のものだった。結局、マンション全体には思い及ばず自分の住戸のことだけしか考えていない意見ばかりだったことになる。

 でも、そんな考え方の持ち主にも賛成してもらわなければ大規模修繕工事など実現できない。しかし「賛成してもらう」ためには「わかってもらう」ことが大前提になる。「わかってもらう」ためには「知らせる」ことが絶対に欠かせない。

 《知らない➡わからない➡賛成しない》という負のサイクルを断ち切ることが、目前の課題となった。

 名ばかりの存在だった管理組合に、この課題は途方もない難しさをもたらした。どこにもお手本やモデルはないのに、「やらなければならないこと」だけは明確に法律が決めている。しかし、「やらなければならない」ことをやるために必要な具体的な方法には全く知る術がなかった。

 一戸建ての居住感覚で集合住宅全体には思い及ばない「マンション住まいのマンション知らず」に取り組む方法は、どこの誰も教えてはくれなかった。

 一つだけ、はっきりわかっていたことがある。

 それは、大規模修繕工事をきちんと実行するためには、すべての手順とその考え方を法律が示す管理組合という組織レベルで進めていくしかないということだった。 

「管理組合」という組織は「四つの漢字で説明できる理詰めの組織」ではなく4棟600戸の人間世界そのものだという実感は43年過ぎた今も続く

 ここから先は、すべてが現実論になる。

 11階建て4棟600戸の大規模マンションに住む「マンション住まいのマンション知らず」を相手に、法律の考え方を実行するためには徹底して自分たちのマンションの実情を見て判断したことを説得するしかなかったからだ。

 例えば、総会決議。総会というからには管理組合のメンバーである600人を超える区分所有者が集まらなければならない。マンションには集会室があるが、どんなに詰め込んでも60人しか入らない。600人収容可能なスペースなどマンションにはない・・・。

 ただマンションにはある棟の1階に幼稚園があって、そのホールに100人以上の収容能力があった。このホールが実際には管理組合にとって利用可能な集会スペースとなったので、大規模修繕工事の総会もここで開くことになった。全部はとても入りきれないが・・・。

 が、そのうち委任状という便法があることに気がついた。この手を使えば、全員が集まれる場所がなくても建前はちゃんと守れる、と。

 大規模修繕工事を提案して決める総会の開催計画づくりは、建前と実態の辻褄合わせの始まりでもあった。

| muraitadao | コラム | 09:13 | comments(0) | trackbacks(0) |









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