村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【43年の実感で「マンションの管理」を考える5】大規模修繕工事で知った法律の想定を超える管理組合組織の人間的側面

自分のマンションの過去を覚えている人がどこにもいない!誰も気づいていないマンション管理最大の盲点「組織レベルの記憶喪失」

 人生のちょうど半分を過ごしてきたマンションの43年を書きながら、どうにかここまでたどり着いた。

 実は、正直に言うと想像以上に厄介だった。

 なぜか。記憶を確かめようとするたびに、自分の記憶の曖昧さに気づかざるを得ないことが多かったからだ。書くことには正確を期したいから、間違いないことだけを書きたい。しかし、ほんとにそうだったかなぁ・・という感じがあると、気になる。

 で、その都度、保存しておいた管理組合の広報誌を開いて読み直す。読むたびに、自分ではただ一途に頑張ってきたつもりだが、それでもやはり仕事の合間を縫いながらだったあの頃に気づかないままだったことがいかに多かったか。あの当時、こんなに多くの人が時間とエネルギーを注いでいたのに・・・。

 慙愧の思いがする。
                                           ☆
 でも、ここに気がついたのは、やはり広報誌をみんなで延々と作ってきたからこそだと思う。あの頃、法律にも管理規約にも出てこないのにそんな余計なことをやって、いったい何の役に立つんだという理詰めの意見を気にしながら作られてきた広報誌があったから、今これだけのことが確かめられたのだとつくづく思う。

法律や管理規約になくても必要なら具体化するのが一番。それを教えてくれたのは自分のマンションの実情だけだった

 何か残しておかないと、時間がたてば必ず何もわからなくなる。人の記憶は決して頼りにならない。誰しも忘れっぽいのだから。

 この直感は、当たっていた。それどころか、今や確信に近い。

 いくらマンションが長寿命だなど言ってもそれはコンクリート造建物だけの話であって、住んでいる人間の話になるとまったく違う。誰でも、過去のことなどすぐ忘れてしまう。管理組合だって、実はそんな人間の組織ではないか。

 管理組合が区分所有者の団体という考え方も、《忘れっぽい区分所有者の団体》だということになることにきちんと気がつかなければ・・・。

 管理組合組織には、実は、記憶喪失という無視できない傾向があるのは、れっきとした事実なのだから。

マンションは感覚も生き方も人間の数だけ異なる世界。その実態は権利概念が中心になる「区分所有者」の5字からはほとんど読み取れない!

 33年前、大規模修繕工事を具体的に考えようとすると、最初のハードルは「なぜこんなことが必要なのか」を途方もなく大勢の人にわかってもらうことだった。

 マンションに関係する区分所有法という法律があって、年ごとに増え始めたマンションの実情に対応するための最初の改正からちょうど1年余りが過ぎた頃だった。

 その法律によれば、大規模修繕工事も総会で決めなければならないんだそうだ、総会なんて開いたことがないし、いったいどうしよう・・・。

 竣工後10年を過ぎたマンションにはずっと後になって政府高官になるような人も住んでいたが、だからと言ってそれが何か役に立つわけでもない。通常総会さえ開いたことがない4棟600戸の管理組合にとって、総会決議は未経験の難題だった。

 総会を開いて賛成してもらわなければならないなら、まず「どうして大規模修繕工事が必要なのか」を納得してもらわなければならない。そのためにはまず「大規模修繕工事が必要な理由」を知らせなければならない。それを知らせるためには、いったいどんな方法で、何を、いつ知らせるか・・・。

 竣工後43年たって第3回目の大規模修繕工事が終わりに近づきつつある今も、この点は当時とまったく変わらない課題になっている。

 まして、まだ経験の蓄積もない管理組合にとって、これは重荷だった。600戸に住んでいるのはクブンショユウシャ(区分所有者)という聞いたこともない難しい名前ではなくて、名前と顔の両方か、あるいはそのどちらかが思い浮かぶ人たちだというのが管理組合の感覚だったから。

 もしかすると市役所よりも大きな建物に住んでいる大勢の人に、まず「知らせる」ことが先決だった。

 「知らせる」ことが《広報》を指すことなど、当時は考えもしなかったが・・・。

“賛成してもらう”には“わかってもらう”ことが必要、そのためには“知らせる”ことが必要。こんな当たり前のことを見落とすと本質が見えなくなる

 で、まず考えたのは当時から発行していた掲示板だった。しかし掲示板よりも広報誌の方がはるかによさそうだ・・。

 今は読む人が半分以下になってしまった新聞もこの頃はまだ健在だったから、この紙メディアは疑いもなく頼りになった。

 だから、この時代の広報誌を読み返すと考えに考えた書き方で大規模修繕工事が必要な理由をわかってもらおうとする記事の多さに気がつく。書く方は“知らせたい”と思い、読む方は聞きなれない呼びかけを“納得したい”と思う状況での情報発信だった。素朴といえば、この上なく我流で素朴だったが・・・。

 でも、仕方がなかった。どこからも、頼りになる情報が得られなかったからだ。そうなれば、自分の知恵しか当てにできるものがない・・・。

 結果的にこの考え方は的外れではなかったが、ロスも多かった。

 でも頑張っているうちに、いつかは公的なレベルでこの状態に気づいてくれるだろうと待ち続けた。

 しかし、どうやら期待はずれだったらしい。マンション管理の仕組みを考える立場の人たちがマンション管理現場の実情を知ってくれてさえいれば・・と思っていたが、その当ては外れた。

 この失望は、率直に言って、大規模修繕工事の広報だけに限らなかった。管理組合という組織の現実に対応できないもどかしさは、この頃から増える一方だった。

 それは究極的には「管理組合とはいったい何か」の本質と「マンションとは何か」という実情をことあるごとに問い直し考え直す日々の連続になっていった。

 600戸に1000人を大きく超える人が生活条件を共有しながら住む世界の居住性確保が生易しくないことを、ことあるごとに思い知らされる日々の始まりだった。

 43年たった今もなお答が見つかっていない課題の重さを考え続ける日々が、この当時に始まったと今、改めて思う。

| muraitadao | コラム | 12:28 | comments(0) | trackbacks(0) |









http://murai.realestate-jp.com/trackback/991849
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< December 2017 >>
+ SELECTED ENTRIES
+ RECENT COMMENTS
  • 【番外】11年目。公開遺言のつもりでブログを書き続けます
    マンション・チラシの定点観測 (11/26)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    村井忠夫 (12/07)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    尾下 義男 (12/07)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    村井忠夫 (11/23)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    尾下義男 (11/23)
  • 2年半ぶりでメンバーも変わって再開のマンション管理検討会、たった1か月で結論を出すとは・・・・
    とおりすがり (04/24)
  • 最新の「マンション総合調査」から読めること、読めないこと
    村井忠夫 (09/06)
  • 最新の「マンション総合調査」から読めること、読めないこと
    まるーべり (09/06)
  • 都議ヤジ問題の本当の理由は議員の当事者感覚の貧しさ
    村井忠夫 (06/26)
  • 都議ヤジ問題の本当の理由は議員の当事者感覚の貧しさ
    ポリス (06/26)
+ RECENT TRACKBACK
  • 「沈黙は賛成じゃない」という論理。選挙や総会では?
    マンション管理の情報屋。。。 (09/22)
  • マンションの中の喫茶店が話題になる・・・・:マンションの共用空間の新しい意味をもっと考えていいのではないか
    神園良輔の『マンション展望』 (05/05)
  • マンガ説明入りの規約解説本があってもいいじゃない?でも実際には簡単にいかないけどね
    マンション管理士情報ナビ (05/27)
  • マンガ説明入りの規約解説本があってもいいじゃない?でも実際には簡単にいかないけどね
    マンション管理士情報ナビ (05/27)
  • 女児マンション転落事故のニュースが浮かび上がらせたこと:どこのマンションでも同じことが起こる可能性にどれだけの人が気づいているか
    MANSIONS-COMMUNITY blog (04/15)
  • 「億ション」は最高が1億円なのか、最低が1億円なのか、それとも・・・:管理の基本原則は何億円でも関係ないが
    マンション展望 (02/16)
  • 「美しい国」で、これ以上「美しくないこと」が起こらないように:もっと集合住宅に住む不安を減らすための議論を
    マンション展望 (12/01)
  • 8年前の2月、国会でマンション管理をめぐる史上初の議論が行われた。そして、昨日の朝刊には・・・
    NONブログ (11/27)
  • 書名は買い手にとって本のすべて。本の名前と内容はなるべくなら、あまり違わない方がいいと思うのだが・・・
    高層マンション (08/27)
  • 新しい住宅が建たなくなったというニュースの怖い連想:暗い窓ばかりのマンションが思い浮かぶ・・
    マンション展望 (08/25)
+ CATEGORIES
+ ARCHIVES
+ LINKS
+ PROFILE