村井忠夫のマンション管理ブログ

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【43年の実感で「マンションの管理」を考える 8】大規模修繕工事を重ねるうちに直視を迫られる「いま住んでいるマンションの将来」

回を重ねるたびにはっきり見えてくる大規模修繕工事の難しさ、その向う側にだんだん浮かんでくるマンションのこれから

 このブログを書いている窓の外で、大規模修繕工事の足場の解体が始まった。

 43年住み続けてきた11階建て4棟600戸のマンションで、3回目の大規模修繕工事が終わり近くなっている。最初は30年以上前、2回目は13年前。どちらも旗振りを引き受けたが、今度の3回目では、もう引っ込むつもりだった。

 だが、そうもいかず相談相手ぐらいは・・という感じで4年前から関わってきたのが、今度の3回目の大規模修繕工事だった。

 何らかの形で自分の住むマンションですべての大規模修繕工事に関わることになった人はほかにもいるかもしれないが、それほど多くはあるまい。たださえ敬遠されがちなのだから。

 その分だけ、経験して始めてわかることがいくつもあると言えそうだ。実感することは山ほどあるが、二つほど書く。

 第一は生活している空間の中で進める大規模修繕工事は回を重ねるたびに難しくなるという点だ。どんな解説やセミナーでも誰も語らないが、絶対に無視できない実情である。

 二つ目は、40年以上を経たマンションがいずれ迎える建て替えか大規模修繕工事かという将来像選択時期の接近である。何十年も住んできたマンションの現状確保という目標実現の方法をどうするかという最も難しい課題だ。

生活のエリアで進む大規模修繕工事の具体的な進み方が回を重ねるたびに難しくなる。居住者生活への影響が大規模修繕工事の進行を応用問題化する

 大規模修繕工事はリフォーム工事の一種だ。いつもと同じ生活が展開する中で大掛かりな工事が進むのがリフォームだという点では、一戸建て住宅もマンションも同じだと言える。

 しかし、集合住宅であるマンションでは、その難しさが一戸建て住宅と比較にならない。生活場面で工事の影響を受ける当事者が集団レベルの規模で多数かつ多種多様を極めるからだ。

 それも単に《大勢の人》というだけの意味ではない。経年変化の影響によるメンバーの変貌を考えなければならない。マンションの中古化とともに《大勢の人》の顔ぶれは入れ替わるし、同じままで変わらなくても高齢化や世代差が生まれるからだ。

 30年以上前の最初の大規模修繕工事のときは方法も手探り状態だったが、工事の行われる昼間は大半の住戸が留守だったから、騒音も振動もそれなりの方法で対応できた。建物の劣化も経過年数が短かったから、それほどではなかった。

 13年前2回目の大規模修繕工事の時は、ちょっと状況が変わった。リタイアした居住者が最初の時よりも増えて在宅率が大きくなったので、昼間在宅者の生活への配慮事項がかなり多くなったからだ。近隣の新築マンションが増えて「あそこのマンションのような・・」という設備についての要望が外装工事以外にも格段に増えた。

 そして、今度の3度目の大規模修繕工事。築後40年を超えると居住者の高齢化率はもう40%に近くなる。大抵の住戸に高齢者が昼も暮らしているし、その一方で若年単身者も増えた。一人住まいの住戸も目立つ。

 周辺の新築マンションと並ぶ中での外観比較も軽視できなくなった。

 何よりも大きい違いは、居住者の入れ替わりだ。昔のことなど何も知らないし、こだわりもないから、43年もたったマンションの過去など大半の人にはわからない。

 そんな状態のマンションの外側に足場が組まれて薄暗さや狭さが気になる人が増える。仕事の関係で在宅時間が変則的な人には昼間の騒音も無視できない。

 ベランダの使用制限などへの理解も以前とは一変して、過剰な自己主張のために協力したくない居住者が多くなった。工事会社任せにできない場面で、管理組合の対応の判断が試されるケースが続く。

 ほとんどのことは、居住者の生活面への影響によって起こる物件固有の問題ばかりだ。それも「ウチのマンション」特有の・・・。

 それに気づき、それに手を打てるのは、そのマンションの管理組合しかない。

これからも年数がたてば何回目かの大規模修繕工事を重ねるのか、それとも…。やがて何年もたった時のウチのマンションを語れるのはいったい誰か

 漠然としているが、大規模修繕工事には周期がある。30年ぐらい昔は都市伝説的な感じで10年と言われていたが、いまは15年ぐらいが目安か。

 正確な年数や確たる論拠は、今も知らない。だが人間の高齢化と同じくマンションの経年変化は必ず起こるから、それに対応する大規模修繕工事が避けられないことやそれにも対応できなくなる限界があることは今までのマンションの歴史ではっきりしている。

 相当の年数がたったマンションでは、これからもまだ大規模修繕工事を続けるのか、それとも建て替えを考えるべきなのかという選択を迫られる時期が必ずやって来ることを大半の人が頭に浮かべるようになっているはずだ。

 大規模修繕工事も建て替えも、総会で議決しなければならない。総会議決を単に手続きとして考えてはなるまい。これからも修理を重ねていくのか、それとも修理に見切りをつけて建て替えるかを、そのマンションと所有関係で関わりあう多数の人間がどのように思い描くかによって結論を出すべき課題なのだ。

 これは容易なことではない。《総会で決める》という手続きを意味する言葉の背後には、10数年を過ぎたマンションの光景の中でほかならぬ自分自身がどのようにたたずんでいるかを思い描く必要があるからだ。あまり気の進まぬ課題が、だんだんはっきり見え始めるよういになってくるのだ。

 こういう段階になった時、手続きの当事者は管理組合しかない。だが、その管理組合は、手続きの背後の光景をどう思い描いているだろうか。

 これから何十年かが過ぎて建物や居住者に放置できない経年変化が起こった時も、当事者は管理組合しかない。

 メンバーが一変している可能性は少なくないが、そうなっても仕組みの上では管理組合だけが依然として意思決定できる唯一の当事者となるのだから。

 今の制度はそう決めているのだ。 

| muraitadao | コラム | 11:11 | comments(0) | trackbacks(0) |









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