村井忠夫のマンション管理ブログ

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【43年の実感で「マンションの管理」を考える 10】「広辞苑」改訂版で思い浮かべる戦後住宅事情70余年の日々

待ちに待った「広辞苑」の改訂版が出るというので・・・

 ついこの前の1月12日に「広辞苑」の第7版が出た。広辞苑は昔から身近な存在だ。もう40年近い前に住宅ローンの解説を書く仕事が多かったころ、お金の貸し借りを書くのだから誰にも正確で間違いないように読んでもらいたくて言葉の正確さに気を使う習慣が染みついた。それから、国語辞典をいつも必ず手近に置くようになっていた。

 そんな存在だった「広辞苑」の改訂版が久しぶりに出ると聞いたのは、昨年の秋だった。しかし、発行は来年だという話で、すっかり忘れていた。

 そんな状態だったが、先日の新聞広告で改訂版のことを思い出した。その広告には『10年ぶりの大改訂。充実の最新版、満を持して登場!』という言葉もあった。

 だが、それほど馴染んできた「広辞苑」だったが、逆に、いつもよく目を向けるだけに、かえって言葉の説明が何となく実情と違っている“もどかしさ”を覚えることも多くなってきた。

 だから、それだけ「広辞苑」は次の改訂がいつだろうかと思う気持ちも強くなってきた。そんな中で、待ちに待った改訂版が出ると聞いたのだった。

 当然、すぐ買うことにした。

 しかし、買いたかったのは、ずしりと重い箱入りの「広辞苑」ではない。DVD-ROM版だった、

 「広辞苑」は第4版まではブックスタイルのものしかなかったが、毎回2000ページ超のかさばる大きさが苦になっていたので、第5版からDVD-ROM版が出たのをいい機会だと考えて、以後はこちらに切り替えた。

 当然、今度の第7版もそうするつもりだった。しかし、価格など細かいことがわからない。

メールで問い合わせても返事がない。午前中は電話もダメ。仕方なく、またもう一度メールすると…

 でも、買うつもりだから、どうしても知りたかった。

 最初は、昨年の11月、改訂第7版のDVE-ROM版について発行元の「広辞苑」担当者宛に問い合わせのメールを送った。しかし、何も返事がない。でも、音沙汰なしでも発行はまだ先だから・・と思い、気にもしなかった。

 しかし、その発行時期になってもDVD-ROM版については何もわからない。ネットで問い合わせ先番号を確かめて電話しようとしたが、午前中はダメだとある。早く知りたくて、結局またメールを送った。《昨年11月24日にメール所定のフォームのメールで聞いたのだが、何も返事をくれないので・・》と断った上で、今回、新改訂版発行の広告などを見てもDVD-ROM版については何も情報がないが、今までどおりに今度もデイスク版を発売するのかどうかを問い合わせた。

 すると、今度はすぐ返信が届いた。しかし、それは感心するほど短いものだった。引用が気にならないほどの短さなので、発信人を除いて以下に全文書くとこうなる。

 《返信が大変遅くなりまして誠に申し訳ございませんでした。今回、弊社は『広辞苑 第七版』のDVD-ROM版は発売いたしません。LogoVistaから『広辞苑 第七版』のDVD-ROM版が本日(1月12日)より販売されております。よろしくご検討ください。》

 これで、おしまい。何ともまあ、ぶっきらぼうで愛想も何もない文面だが、確かに、これで知りたいことはわかった。

 で、すぐネットで調べて注文したら、翌日午前中には、もう現品が届いた。

 さっそく調べてみた。長年の説明でもどかしさを否定できなくなっていた言葉の数々を。すると・・・

もはや「広辞苑」よりもWikipediaの方が頼りになる?

 「広辞苑」の初版は、1955年(昭和30年)に出た。よく覚えている。

 この初版は手元にないのだが、1969年(昭和44年)発行の第2版から最近の第6版までは全部持っている。

 だから、同じ言葉を時代の変遷と合わせながら「広辞苑」がどう説明してきたかがわかる。

 そういう考え方で確かめた言葉が、今度の第7版ではどうなったか。

 二つだけあげておこう。

 一つは「住宅難」という言葉。今度の第7版には、次のような説明が出ている。

【住宅が不足し、かつ住宅費がかさむため、住む家を得るのに困難なこと。】

 今度の第7版の説明を見て、愕然とした。なぜか。

 これは、かつて住宅問題が切実だった時代に見た「広辞苑」第2版の説明とまったく同じままだったからだ。第2版からまったく同じということは、ほぼ50年前と全く変わらないことになる。

 この説明には「住宅が不足し・・」という言葉が出てくる。かつて太平洋戦争による住宅不足は430万戸といわれて「住宅不足」という言葉には切実なリアリティがあった。しかし、この第2版発行後から数年で、この住宅不足は解消し、住宅事情は今や「不足」から「過剰」に一変した。いたるところで「空き家」が目立つ。

 では、その「空き家」はどうか。

 第7版の説明は【人の住んでいない家。居住者のいない貸家。】となっている。

 こちらの方は過去の版での説明がどうなっているかを確かめると、50年近く前の第2版から出ていた「人の住んでいない家」という言い方に1991年(平成3年)発行の第4版から「居住者のいない貸家」という言葉が新しく付け加えられた。今度の第7版の説明は、30年近く前からのままとなる。
                  ☆
 国語辞典の改訂は、大変な労作だと思っている。

 だから、単純な粗探しをしているつもりではない。しかし、それを百も承知していながら、やはりこうしたことが気にかかる。

 実感から言えば、広辞苑よりもWikipediaの方が頼りになってきた。

 その実感が、また気にかかる。

| muraitadao | コラム | 09:22 | comments(0) | trackbacks(0) |









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