村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【43年の実感で「マンションの管理」を考える 15】居住歴が多様化した管理組合に昔から同じままのルールが今もあてはまるのか・・・

竣工した時から住んでいる人と去年引っ越してきた人が同じ立場で意見を主張できる状態は???

 改めて言うまでもないことなのだが、今の管理組合では居住歴が一切ルールに反映しない状態で組織が運営されるようになっている。

 では、どんな状態が生まれるか。

 管理組合での物事はルールにしたがって、すべて総会や理事会という組織で決めることになっている。そうした組織のメンバーは基本的に「管理組合のメンバー」となる権利中心の条件さえ満たされれば他はいっさい問われないから、居住歴や家族構成条件といった実質的に組織活動要件と関連する属性は全く関係しないことになる。ビジネスビルやホテルと違うマンションでは集合住宅の住みよさを支える管理が不可欠だが、その管理が成り立つためには集合住宅全体の状況を居住実感によって認識できることが裏付けとなる。

 この意味で「住む」という形の生活条件の認識を左右する居住歴や家族構成条件がとても大きな意味を持つのだが、いまの管理の基本原則にはこの点が全く反映しない。単に《区分所有権》があるかないかが問われるだけだ。

 生活感が全く関係しない仕組みの現実離れした不可解さは、昔から折々に気づかれてはいた。だが、この点が気になるケースがあっても例外的だから・・という一種の割り切りで片付けられてしまい、あまり議論されなかった。

 《個人が所有して住む》はずの分譲マンションに社宅化した住戸が混在してもあまり問題とならなかったのは、その典型例だろう。

 竣工した時から43年間、同じマンションに住み続けてきた人間には間違いなくそういう実感があった。

 しかし、そういう実感も近年は薄くなってきた。社宅そのものがもう何となく過去のイメージになってきたのと入れ替わりに、居住者の実態が以前には考えたこともなかったほど多種多様になってきたからだ。

 非婚化や高齢化による単身世帯住戸の増加や複雑化した職業形態の違いによる在宅時間の多様化、外国人住戸の増加など思い浮かぶケースはきりがないほどだ。

 そういうことを感じる機会が多くなってくるにつけ、総会とか理事会に限らず集まって意見を語る場面で話の通じにくさを感じることが多くなってきた。今までと違う質問や意見を聞くたびに《この人、いつからこのマンションに住むようになったのかなぁ・・・?》と思うことも多くなった。

 《この頃は以前のような考え方や言い方が通用しなくなってきたな・・・》という実感が確かに強くなった。以前なら説明抜きですんだ話が、いつのまにか通じにくくなっていたという違和感めいた実感が・・。

 いつから住んでいようと、もともとそんなことはルールと関係がないのだから別にどうということはないとは思いながら、正直なところ、やはり気にかかっていた。

新築マンションの売れにくさと反比例的に増えた中古マンション売却の勧誘がこの実感とどこかで関係しているのかも・・・

 この感じを確かめているうちに思い浮かんできたことがある。以下に、正直な感想を述べる。
                   ☆
 数年前から気がついていたことがある。

 新しいマンションがそこここで売り出されている割には結構な高値で売り悩んでいるらしい。だが、小規模ながら建売住宅の方は結構よく売れている。もう10年以上続けている新聞折り込みチラシを子細にチェックしていると、そうしたことがとてもよくわかる。

 こんなことを感じるようになったころ、中古マンション売却の勧誘がめっきり多くなってきたことに気がついた。

 いま住んでいるのはもう竣工後43年にもなる古いマンションだから今更どうして?」という気分だったが、うるさいほど玄関ポストに入れられるビラのほかに結構な値段をかかげたダイレクトメールまでが頻繁に届くようになった。

 そう気づいたころ《この人、ウチのマンションに前から住んでいたっけ?》という感じを持つ機会も多くなった感じに思い当たった。
                   ☆
 この感想には明らかに居住歴が関係していると思う。

 中古マンションとして最近から住むようになった人だろうと思うからだ。

 でも、区分所有者となったからには、最近からだろうと昔からだろうと区別なく管理組合のメンバーとなる。だから、総会や理事会で何はばかることなく意見を述べることもできる。

 だが何しろ4棟600戸もあるマンションだから、そのことがあまり実感できないのも事実だ。どれほど長く住んでいても,棟や階が違えば接触する機会に偏りができるのはどうにもならない。

 大規模マンションで年数がたてば、そうした居住者や区分所有者の入れ替わりがあってもお互い同士でわからないのはその意味で当然だろう。

ルール万能主義がこの実情に結びつくと理屈倒れのトラブルの温床になって管理組合“官僚化”の不安が・・・

 簡単に言えば、長く住んでいると、年ごとに《顔と名前が一致しない人》が増えるということに尽きる。そんな中で、管理組合の役員は順番制だから一定の年ごとに顔を合わせることになる。

 理事会はいちばん最初の時は自己紹介で始まることになっている。こんなやり方が必要になるぐらいだから、お互い同士の考え方や理解の仕方など、もう全く分らないまま役員の仕事が始まる。

 でも、そういう状態で、相互認識も何もない状態でリアルな管理組合としての仕事が務まるものなのか。

 居住歴が異なると、それぞれのマンションに固有の様々な過去の実情がリアルに理解できなくなる。マンション管理の本質は区分所有法や標準管理規約の言葉もさることながら、新旧・大小さまざまに異なるマンションごとの実情と認識の中にこそあるのだから。

 それが痛切にわかるのは、大規模修繕工事のようなスケールの事業と管理規約の対応関係の理解が、居住歴に応じてかなり異なることが多くなってきたからだ。

 この点については、管理組合自身の当事者能力の現実認識が大きく関係するから、これ以上のことを書くのは別の機会に譲る。
                   ☆
 だが、一つだけはっきり指摘しておきたいことがある。

 それは、管理規約を構成する要素の中に、竣工後年数の経過に対応した管理組合組織の運営条件が全く欠けている点だ。

 区分所有者の居住歴などが全く反映していない事態の背後には、マンション居住の実態がいまも昔と同じままだという認識があるのではないか。その認識不足があるから、今も昔と同じ内容のルールが機能しているはずだという錯覚があるのではないか。

 実情を確かめないまま言葉でつづられた観念が現実に当てはまるはずだという思い違いが官僚主義となって、昔からいろんな場面で独特のもどかしさと苛立たしさを生む。

 もしかすると、マンション管理の世界でもそういう官僚主義が生まれつつあるのではないか。

| muraitadao | コラム | 10:48 | comments(0) | trackbacks(0) |









http://murai.realestate-jp.com/trackback/991859
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< November 2018 >>
+ SELECTED ENTRIES
+ RECENT COMMENTS
  • 【番外】11年目。公開遺言のつもりでブログを書き続けます
    マンション・チラシの定点観測 (11/26)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    村井忠夫 (12/07)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    尾下 義男 (12/07)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    村井忠夫 (11/23)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    尾下義男 (11/23)
  • 2年半ぶりでメンバーも変わって再開のマンション管理検討会、たった1か月で結論を出すとは・・・・
    とおりすがり (04/24)
  • 最新の「マンション総合調査」から読めること、読めないこと
    村井忠夫 (09/06)
  • 最新の「マンション総合調査」から読めること、読めないこと
    まるーべり (09/06)
  • 都議ヤジ問題の本当の理由は議員の当事者感覚の貧しさ
    村井忠夫 (06/26)
  • 都議ヤジ問題の本当の理由は議員の当事者感覚の貧しさ
    ポリス (06/26)
+ RECENT TRACKBACK
  • 「沈黙は賛成じゃない」という論理。選挙や総会では?
    マンション管理の情報屋。。。 (09/22)
  • マンションの中の喫茶店が話題になる・・・・:マンションの共用空間の新しい意味をもっと考えていいのではないか
    神園良輔の『マンション展望』 (05/05)
  • マンガ説明入りの規約解説本があってもいいじゃない?でも実際には簡単にいかないけどね
    マンション管理士情報ナビ (05/27)
  • マンガ説明入りの規約解説本があってもいいじゃない?でも実際には簡単にいかないけどね
    マンション管理士情報ナビ (05/27)
  • 女児マンション転落事故のニュースが浮かび上がらせたこと:どこのマンションでも同じことが起こる可能性にどれだけの人が気づいているか
    MANSIONS-COMMUNITY blog (04/15)
  • 「億ション」は最高が1億円なのか、最低が1億円なのか、それとも・・・:管理の基本原則は何億円でも関係ないが
    マンション展望 (02/16)
  • 「美しい国」で、これ以上「美しくないこと」が起こらないように:もっと集合住宅に住む不安を減らすための議論を
    マンション展望 (12/01)
  • 8年前の2月、国会でマンション管理をめぐる史上初の議論が行われた。そして、昨日の朝刊には・・・
    NONブログ (11/27)
  • 書名は買い手にとって本のすべて。本の名前と内容はなるべくなら、あまり違わない方がいいと思うのだが・・・
    高層マンション (08/27)
  • 新しい住宅が建たなくなったというニュースの怖い連想:暗い窓ばかりのマンションが思い浮かぶ・・
    マンション展望 (08/25)
+ CATEGORIES
+ ARCHIVES
+ LINKS
+ PROFILE