村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【43年の実感で「マンションの管理」を考える 16】管理組合は今も昔と同じ家族イメージのままで存在感を実現できるのか・・

マンションごとの「住む空気」はお互いの居住者属性でわかるのだが・・

 いま住んでいるマンションは総戸数約600戸。11階建てが4棟。だが、どの棟の郵便受けにも名前を出していない住戸がかなり多い。

 でも郵便受けの横には居住者表示板があって、ここに住戸番号ごとの姓が表示されている。空き室でない限り、これをみると少なくとも住戸番号ごとに姓だけは確かめられる。

 そこで、先月5か所の玄関でこの居住者表示板を子細に確かめてみた。

 築後40年を超えたマンションに住んできたが、今では住む人の顔ぶれがすっかり変わってしまった。加えて、この数年、同じマンションの棟に親子で住む住戸が増えたらしいことをよく聞くようになった。

 こんど思い立ったこともそんな実情を確かめたいというだけの単純なきっかけだし、姓を見ただけでわかることなど、もともといくらもない。それに、居住者はたえず入れ替わる。引っ越しらしい様子を目にするのは日常茶飯のことだもの。

 だから、手間暇かけてせっかく居住者表示板の姓を確かめてみても骨を折って調べた結果がまたすぐ変わってしまうことは、やる前からはっきりしている。こんなことをやっても変わり続ける居住者実態の時間の一断面がわかるだけに過ぎない。

 間違いなくそうは思うのだが、反面、やってみれば今まで漠然としていた居住実感をはっきり確かめられることがいくつもある。

 第一は、築後年数の経過とともに変わってしまったマンション特有の空気、つまり住みながら良きにつけ悪しきにつけて感じる居住感は居住者属性の現状をいくらかでも見極めればわかること。マンションでは住んでいる者同士が玄関やエレベーターで顔を合わせるたびにちょっとした声をかける機会を積み重ねながら名前と顔が自然に一致してお互いを自然に知り合っていくのだが、そんなことは昔の話になってしまい、もはや普通の方法では居住者同士がお互いを確かめられなくなってしまったこと。

 第二は、そうして確かめた居住者属性の変化がもたらしている管理組合組織への影響を確かめて、「昔からこの方法でやってきた・・」という感覚で続けてきた組織運営方法の有効性を確かめてみたいこと。理事会の運営方法や情報の知らせ方など大半の組織運営実務は区分所有法などを見ただけでは何もわからないのだ。

 第三は、最大の問題だが、居住者属性の変化による世代差や生活条件の違いがもたらす意見の違いの実情を確かめる必要が大きいこと。人の数だけわかれるとはいえ、ある程度までは共通していた居住者同士の共通属性が薄くなってしまった実情を確かめないと、昔のままの感覚ではもう何も物事を決められなくなっているのではないか。

同じ姓が10数戸、2姓併記が10戸。そして高齢化率の上昇

 面倒ではあったが、やってみてよかったとも思う。これは一種の自己確認作業だから、居住者自身の感覚でやってみるしかないことも、あらためて再確認できた。

 わかったことを二つだけ書く。一つは予想通りだったこと、もう一つは予想以上だったことである。以下に書くことは築後43年を過ぎた4棟600戸のマンションの様子ではあるが、どこのマンションにも起こり得ることではないかと思う。

 予想通りだったのは、同じ姓の住戸がとても多かったことだ。今度確かめてみてわかったのは「同じ姓が全体で13戸ある」ことだったが、大規模マンションで同じ姓の住戸が多いこと自体は珍しくないからあらためてどうということもない現象である。
しかし、竣工して間もないころ同姓住戸はもともとそんなに多くなかったのだ。これは、竣工後5年程度で配布された名簿と照らし合わせるとはっきりする。

 昔と比較していくうちに《おや・・》と思ったのは、同姓住戸がどの棟にも必ずあることだった。100戸台の一棟で、同姓住戸が4戸になるケースもあった。

 想像の域にとどまるのだが、これは親子などのケースが多いのではないかという気がする。近年どうかした機会に、どの住戸とどの住戸が実は親子だといった話を聞く機会が多くなってきたことを思い合わせると、そんな気がしてならない。

 どの棟にも同姓住戸があって不思議ではないが、以前はなかったことを考え合わせると、この現象がまず棟ごとにあり、違う棟でも同じマンション全体では同姓住戸となっているケースを含めると、やはり昔と違う傾向が生まれていると思う。

 もう一つは、2姓併記の住戸が予想外にあったこと。二つの姓が並んで表示されているのを見て始めは夫婦別姓のようなケースを考えたが、そうではなくて親子同居のケースもあるだろうから、よくわからない。

 いずれにしても同姓住戸や2姓併記の住戸が多くなったことは、明らかに高齢居住者の増加を連想させる。同じマンションですぐ近くの住戸や自分と同じ住戸に老いた親と子の世帯がいっしょに住むことを意味するからだ。

 となれば、居住者全体の高齢化率が上昇することははっきりしてくる。その点は毎年、管理組合の委員会が取り寄せている市の住民基本台帳人口データで、今年のこのマンション居住者人口約1200人の高齢化率が40%を超えている点で裏付けられる。

核家族居住が前提だった管理組合像は今も有効に成り立つのか

 このマンションが建てられた40年以上前はマンションという言葉が説明抜きでやっと通じるようになったころだった。家族向けタイプのマンションが主流だったから「ファミリータイプ」と銘打って、4人の核家族向きの設計が中心だった。パパがいて、ママがいて、ボクがいて、アタシがいて、間取りは4DKか3DK。どの住戸も昼間は留守で土曜も忙しかったから、管理組合の仕事は日曜日しか時間がなかった。管理組合のカレンダーで一か月は30日ではなく5日しかないという考え方だった。

 ところが、マンション管理の仕組みの方は、基本構造が今もこんな時代のままである。今でも管理規約の類型が基本的に同じ形のままであるのは、その典型例だろう。ストック戸数600万戸を超えて新旧大小千差万別に多様化しているのに、今も「単棟型」「団地型」「複合用途型」の3タイプだけ。3階建て30戸のマンションも30階建て300戸のマンションも一棟という点では同じ単棟型になるなんて・・・。

 建てられた時代から長い年月が過ぎて、今やパパもママも年老いて二人暮らしか一人暮らし。昼間も大半が在宅。たまに開かれる管理組合の集会は老人会さながら。年代差が重なって意見の集約は年ごとに難しくなる。・・・

 実情が一変しているのに、マンション管理の基本的な仕組みはすべて以前のまま。当然ながら、仕組みと実情がマッチしない。管理組合はルールも当てはまりようがない事態にぶつかり続けて独自の判断を迫られることがたびたびになる。

 当事者能力の乏しい管理組合にとっては実情に即した標準管理規約改正への期待が切実だが、そんな気配は、まだとてもとても・・・。

 「分譲マンションのいま」の実態確認を急いでほしい。対応の大前提となる事実確認をしないままであっても、確実に年月が過ぎていくのだから。

| muraitadao | コラム | 10:50 | comments(0) | trackbacks(0) |









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