村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【43年の実感で「マンションの管理」を考える 17】大規模修繕工事を目前にわかった。管理組合には自分の知恵と工夫が要ることが・・

マンション居住44年目前で今さらわからなくなってきたこの実感・・・

 分譲マンションを買って住めば、そのまま管理組合のメンバーになる。43年前にそうなった。

 初めは、居住実感と矛盾なく納得できる仕組みだと思っていた。

 だが、この納得感に陰りがただようようになったのは竣工後の年数がたって10年近くなったころからである。

 最初の大規模修繕工事を実行する段階に差し掛かったとき、現実の管理組合の役割がこの仕組みではすっきり説明できないことがいくつもあると気づいたからだ。

 今でも覚えている・・・。管理組合と関わるきっかけになったころのことを。
                   ☆
 管理組合に力を貸してほしいと言われたとき、正直に言って、あまり気が進まなかった。

 このころ、雑誌や新聞に住宅全般の論議や問題提起の原稿を書くのにとても忙しかった。住宅ローン関連の原稿も、ずいぶん書いたものだ。

 そんな時期でマンション関連分野の人との接触も多かったから、ようやく普及し始めたマンションという世界の実情を聞く機会もたびたびだった。自分自身もマンションに住み始めてからそれなりの年数を過ぎていて、この世界の実情を知りたい気持も強かったから。

 しかし、実際には、マンションを買って住み始めたあとの様子については何もわからないことばかりだった。よくわからないが、何となく厄介な世界らしいという程度の認識がいつもの印象だった。

 《住宅のプロ》と呼ばれるような人たちも、みんなそうだったと思う。

 だから、普通の人よりも住宅との関わりが大きいはずの人たちと話していても、マンションの話題を持ち出して、やれ管理組合がどうだとか大規模修繕工事で面倒だなどという話になると、微妙に通用しにくくなることが普通だった。

 うっかりすると、話が白けた感じになってくることもあったような気がする。

 いずれにせよ、マンションの管理組合とか大規模修繕工事という言葉に何となく特有のわかりにくさや触れたくない重さがあったのは否定できない。

 そんな時代だったから、自分の住むマンションで管理組合に協力してほしいという声をかけられた時も、あいまいな対応を重ねていたのだ。

 でも、何回目かに声をかけられたとき、気持ちが固まった。

 11階建て4棟600戸のマンションにこうして住んできたのだから、集合住宅居住者の一員として600分の1の役目が自分にもあるのは間違いない。だから、その役目について、これまでおよそのことを知っているつもりで書いたり話したりしてきた。そのことを改めて考えざるを得なくなったのだ。

 分かっているつもりで語ってきた役目を今度は自分自身が確かめる機会が、いま目前に来ている。それなのに、何度も声をかけられてこれ以上もう黙っているわけにはいくまい。

 自分の中にもう一人の自分がいて、そうつぶやく声が聞こえてきた。・・・

やがて「マンション管理暗黒時代」の始まりを確かめる日々が始まった

 今にして思えば、一種の義務感があったような気がする。もともと、そういう考え方になる自分の性格をいつも自覚していたという事情もある。

 いずれにせよ《目前の課題をどうしたらいいか他人に説明できる程度にわかっているのなら、逃げずにそれを自分自身で確かめてみるべきではないか》という気持があった。

 口に出して何かを言うなら、その分だけ何かすべきだ。動きもせず、何をするつもりもないなら、いっそ黙っている方がいい。・・                   ☆
 やがて、こうした呼びかけで気持が固まった人たちが10人足らず集まった。でも、腹を決めたといえば聞こえはいいが、その先が、もうたいへんだった。

 何しろ、この時代にはマンションという分野に関わる感覚が行政にも学界にも業界にもマスコミにもあまりなくて、どの分野にも当事者意識がなかったから、現実に対応できる情報が本当に少なかった。マンション管理センターもまだなかったし、区分所有法とか何とかいうマンション関連の法律があって、初めての大改正があったらしいという話もどこかで聞いていたが、その法律を読んでもやたらにまわりくどくて難しいだけで、大規模修繕工事を目前にした管理組合が今すぐ知りたいことは、何もわからない。

 聞き覚えた《大規模修繕工事》という言葉を使って議論はするものの、現実の問題として《ウチのマンションのどこを、いくらのお金で、どういう修繕をするのか》という肝心のことになると、もう誰もわからなかった。

 未経験の難題でもできるだけ早くどうするかを決めなければならないのに、途方に暮れるほど何もわからない。参考書もない、雑誌にそうした記事が出るわけでもない、セミナーや講習会などはまったくない・・・。

 情報不足どころかゼロ。何も手がかりはない。意気込みだけを頼りに進むしかないマンション管理暗黒時代を実感する日々が、こうして始まった。

プロジェクトチーム方式を思いついたのが専門委員会づくりに結びついた

 だが、600戸のマンションの大規模修繕工事の実行にはけっこうな日数がかかる。それなのに管理組合の理事会は毎年全部が変わってしまう。これでは、いつまでたっても進みようがない。今まで、それを理由にして見送ってきた大規模修繕工事だが、劣化の実情は誰の目にももう先送りが難しいことを示していた。

 でも、どうしたらいいのか。誰が、どこから、どんなふうに手をつけたらいいか。何よりもこの点が何とかならないと大規模修繕工事実行の目途がたたない。
                   ☆
 この難題を話し合っているうちに、ある人が勤務先の会社で特別な課題への取り組みがプロジェクトチームを作ったおかげで目途がついたという話を持ち出した。

 東京オリンピックから10年以上が過ぎていたが、バブルはまだもう少し先だった。ドラッカーとかトフラーとかいう名前を口にしながらアメリカ経営学ブームを語る空気が大企業にあって、実験的な取り組み方がよく話題になっていた。プロジェクトチームもそんな話題の一つだった。

 法律などの漢字だけの抽象的な仕組みではどうにもならない大規模修繕工事という難題に頭を抱えていた私たちにとって、この発想は新鮮だった。
 今すぐ取り掛からなければならないことに直面していた40歳代のメンバー10人足らずにとって、この発想にはまさに天啓に似た響きがあった。

 たたき台づくりに専念できるチーム編成の提案に、理事会が一も二もなく賛成だったのはいうまでもない。

 法律やいろんな仕組みにはない独自の知恵と工夫で生まれた取り組み方だが、何よりも《当てにされている》という実感が、10人近いメンバーの支えとなる日がこうして始まった。

| muraitadao | コラム | 05:11 | comments(0) | trackbacks(0) |









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