村井忠夫のマンション管理ブログ

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【44年の実感で「マンションの管理」を考える 18】大規模修繕工事は「ウチの管理組合」に自分も関わっている自覚のバロメーター

「わかっている」から「動く」とは限らない。住む人次第で違う。だから、管理組合の実情も・・・

 マンションに何十年も住んでいると、大抵の人の理屈の理解と生活実感がずれていることに気づく。

 平均的な常識を持っている人なら、誰でもマンションライフの理屈は一応それなりに知っている。マンションの住みよさを支えるためには維持管理が最大の柱になるものだとか、それを支えるのは《こういう考え方》や《こういう仕組み》であり、そのために《こういう法律》があるのだとかいうことを誰でも心得ている。

 しかし、実際上、そうした理屈は、何百戸、何十戸もある集合住宅の一角で暮らしている一個人としてわかっているだけにとどまる。はっきり言えば、どんなにすばらしい人であろうと、マンションでそういうことをどれほど正確にわかっていても、事実上の意味が何百分の一、何十分の一の立場を超えることはできないのだ。

 わかっていることが期待通りに実現するかどうかは、同じマンションに住む自分以外の人も同じようにわかっているかどうか次第だが、そこは何ともわからない。

 だから、自分が《わかっている》ことは実際のところ一人だけでは何も意味が完結しないことになる。

 マンションの維持管理は、《理屈を理解した個人》がどのくらいの割合で住んでいるかを事実上の前提とした時にはじめて実現するといえる。

 そう考えると「維持管理の主体が管理組合だ」というのは、あくまでも言葉の上の理屈に過ぎないことがはっきりする。

 現実の管理組合の様子は“区分所有権を持つ個人が区分所有者となる”という言葉で書かれただけの理屈の意味をきちんと理解した人が多いか少ないかで、よくも悪くも決まる。この理屈を理解している個人が多いマンションなら管理組合は組織力が充実するし、逆に、少ないマンションでは管理組合は名ばかりの存在となってしまう。

 この状況は、同じマンションであっても時間の経過によって間断なく変わる。建物が長寿命でも居住者はいつも入れ替わるし、そうでなくても同じ居住者は住み続けながら確実に高齢化していくからだ。同じマンションで、ある時期は居住者の意識レベルが高くて管理組合の存在感が大きくても、何年かが過ぎてしまうと、そうした居住者の入れ替わりでこの状態が逆転してしまうことは珍しくない。

 念のために付け加えれば.わざわざ《わかっている人》とだけ書いて「区分所有者」という言葉をあえて避けたのは、マンションの実態を左右する管理組合の実情は区分所有者ではなく四六時中生活している生身の居住者次第で決まるからである。
44年の実感で確かめた言葉でいま語りたい!「マンションは建物が長寿命でも人間は違う」ことを

 これは、竣工時から同じマンションに住み続けてごく自然に生まれてきた実感だ。マンション管理の考え方や取り組み方を言葉でいくら理詰めに説明できても、《いまウチのマンションにどんな人たちがどのくらい住んでいるか》という事実にはかなわない。管理組合のあるべき姿や建前を現実に左右するのは、法律の言葉ではなくて《何歳ぐらいの、どんな生活をしている人たちが何人ぐらい住んでいるか》という目の前の実情なのだ。

 区分所有法とか標準管理規約とかいうのはよく知らないが、マンションにはルールがあってその中身までは目を通したことがないものの、管理組合がそのルールを動かしているらしいぐらいのことは誰もが承知している・・・。

 何ともあいまいだが、600万戸を超えるマンションに住む人たちは大抵こんな感じだろうといったら言い過ぎだろうか。

 要するに、マンションに住んでいる「普通の人」のイメージをどう考えるかという話なのだ。どんなマンションでも見かけるはずの「普通の人たち」をどんなイメージで思い描くかということが具体的なマンション管理の進め方を決めることになる。

 厄介なのは、この状況があいまいである一方で、理屈のわかり方や考え方にはかなり大きな個人差がある点だ。

 同じ言葉であっても理屈と実感が個人差を反映しながら大きくずれていて、「わかっている」からその通りに「動く」とは限らないという面倒くさい状況が生まれる。しかも、その状況はそれぞれのマンションに住む人たちの属性によってかなり違ってくる。

 この点については際限がなくなるからこれ以上のことは書かないが、一つだけはっきり書いておきたいことがある。

 それは、分譲マンションに住んでいながら外ならぬ我が身が管理組合のメンバーの一人であることに思い至らない人ほど「わかっている」ことと「動く」ことのずれ方が大きくなりやすいという点だ。だから、ずれている人の場合、いつも管理組合の話が他人事になる。

 厄介なのは、こうしたずれの原因が年齢や仕事に始まって性格や家族像、経済力、居住歴など個人差によって千差万別の広がりを持つ点だ。

管理組合の理解度は関わり方の自覚で決まる。管理組合をわが身との関わりで考えるか、それとも・・・

 この広がりは、同じマンションであっても時代が変わるとどんどん変わっていく。

 同じマンションに住んできて、そのことが実によくわかった。

 44年住むうちに、いろいろな機会にできたいろんなマンションとの縁で、この実感はますます強くなった。

 これまでに関わってきた3回の大規模修繕工事は、それを嫌になるほど痛切に実感させた。管理組合の当事者能力を持ちこたえていく道のりの容易でない実感は、大規模修繕工事の回を重ねるごとに大きくなっていった。

 しかし、そんな中で回を重ねるたびに強くなっていった実感がある。それは、大規模修繕工事に限らず管理組合の当事者能力を決めるのは、結局のところ一人ひとりの居住者自身が管理組合への帰属感をどの程度に持っているかという点が最大のキーポイントになる点だった。

 この4月で同じマンションに住み続けた年月が44年目になった。これは、そんな感慨と一緒に浮かび上がってくる実感である。

| muraitadao | コラム | 04:35 | comments(0) | trackbacks(0) |









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