村井忠夫のマンション管理ブログ

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【44年の実感で「マンションの管理」を考える 19】「記憶がない」「文書がない」状態のマンションにどんなことが起こるか

連日、同じようなニュースを聞きながら感じるこの不安がマンションの過去への連想を呼び起こすと・・・

 何かを聞かれて「記憶にない」と答えるケースが毎日のように流れる。

 かと思うと、文書が「ない」とか「あった」とか、同じような、しかし、同じではないようなわかりにくいニュースも交じって、もう、うんざりする。

 こういうニュースに出てくるのは役所や役人のことだが、同じことがマンションで起こったらどうなるか。過去のことを確かめたいときに、記憶している人もいなければ手がかりになる文書もないなどということになったら、どうなるのか。

 こんなことが頭に浮かんでも、それを必ずしも一概に「あり得ない」と打ち消してしまえない気分になるのは否定できない。

 気になる。とても気になる。それだけの理由があるのだ。

 まず第一。マンションは長寿命の建物だと言われるが、それは建物の物理的な年数の話だ。住む人の方は入れ替わるから建物の寿命と居住年数が一致しない。一致したとしても人間の記憶はあいまいになりやすいから、信頼度が薄くなる。記憶する人の個人差もある。

 第二。マンション全体についての過去は個人レベルの区分所有者ではなくて管理組合という組織レベルの課題になるが、現実の管理組合の運営体制や仕組みにはそうしたことへの視点がまったくない。

 竣工後30年を超えるマンションストックが多くなるこれからを考えると、過去の記憶があいまいになりがちなマンションが増えそうな気がする。見たくないものから目をそらせないような不安な感じで浮かびあがってくるのだ。

 大抵の管理組合は現状への対応に精いっぱいで、それ以上のことに取り組む余力がないと思われるのだが、どうだろう。

 管理会社はどうか。どの管理会社も自社の企業的次元の限界があって、とてもではないが過去のことに対応するにはいくつもの限界がある。

 こう考えてくると、マンションの過去は管理組合にも管理会社にも記憶や文書などの手がかりになるものが見当たらなくなる一方だ。

 この言い方が思い当たらないマンションはあるだろうか。

マンションに住む人は誰もみんな忘れっぽいが、マンション全体のことになればそう簡単には割り切れない

 もともと《忘れっぽい》とか《記憶があやふやになる》ということ自体は、個人レベルの話だ。一人ひとりがどれほど忘れっぽくても個人の問題にとどまるが、その個人の立場や関わり方によっては必ずしもそうとばかりは言えなくなる。

 忘れてはならないこと、記憶しておくべきことの内容によっては個人レベルの問題として割り切ってしまえなくなるからだ。
                   ☆
 長年マンションに住んできた今、つくづく実感することがある。

 これまでの暮らしは4棟全600戸の中の一居住者としてだったのだから、自分の住戸の中でのことはどこかでマンション全体と関わっていたことは間違いない。

 今月で44年になるマンション暮らしは、その意味で、マンション全体のことに必ずどこかでつながりながら送ってきたことになる。

 でも、だからと言って、今もすべてのことをつぶさに記憶しているわけではない。3回の大規模修繕工事など管理組合にも関わってそれなりに苦労してきたはずなのに、実際には記憶が薄らいでしまったことばかりだ。

 先日、資料などの整理をしていて、そのことをあらためて実感した。

 メモや議事録など《書いた記録》という文書が忘れっぽさから逃げられない記憶回復の手がかりになることを今さらながら再確認した。

 全600戸で居住経験を共有している人は、40年以上も経てば、もうそんなには住んでいない。だから、記憶があいまいになったり、文書もなかったりしたら誰かに聞くしかないが、そんな時に当てにできる人はもう多くはい。
                   ☆
 いつかは、こういう日がくるだろうと思っていた。だから、手元にある記録資料は、そういう予感めいた気分で作ったものばかりだ。

 管理組合としての記録文書は正式に決まったことの記録だけで、決まるまでのプロセスは公式文書にも残されていない。

 管理組合という世界は、何であれ《物事を決めるまで》が大変なのに・・・。それなのに、公式の手順や文書にそうしたことを示唆することがまったく示されていないのだ。

どのマンションにも固有の言葉がある。そのマンションだけの言葉や考え方が・・・。あとになってからわからなくなるかもしれない言葉が・・・

 手元にある文書を見ていると、いくつものことが思い浮かんでくる。書かれていることに対応する記憶がまだこちらにあるからだ。《書いてあること》と《思い出すこと》とが、このマンションに住んできた経験による記憶を媒体として結びつくわけだ。

 逆に言うと、ここに住んできた経験がなければ、こうならない。

 マンションで過去のことについての記憶とか文書といったものは、結局のところ、すべてこんなふうにそれぞれの物件固有の意味を持つものになっていく可能性があるのではないか。

 もっと突き詰めて言えば、そうした記憶も文書もそれぞれのマンションだけに固有の考え方と固有の言葉で成り立っているような気がしてくる。
                   ☆
 あらためて気がつくのだが、マンションはそれぞれ物件ごとに固有の空気を持つ世界ではないのか。その固有の空気が住んできた人の記憶やそれまでの年月にわたって管理組合が残した文書にとどめられていれば、そうした形で示されるそれぞれのマンションの個性はこれからも続いていくはずだと思う。

 マンション固有の住みよさは、そういう形で確保されると思うのだが。
                   ☆
 竣工後30年以上になるマンションは、それなりの数になるはずだ。そういうマンションでは、間に合ううちにこうしたことに手をつけておくほうがいいいのではないか。
 こんなこと、公式のマンション管理方式にはどこにも出てこないことだが・・・。
 

| muraitadao | コラム | 14:12 | comments(0) | trackbacks(0) |









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