村井忠夫のマンション管理ブログ

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【44年の実感で「マンションの管理」を考える 20】「えん罪弁護士」ではビジネスモデルが成り立たない?マンションではどうか

大抵の弁護士が敬遠する分野があるって?やっぱりね・・・

 4月15日夜のNHK・BS1で「ブレイブ 勇敢なる者“えん罪弁護士”・完全版」を見た。2年ぐらい前の放送で大反響があったものに未放送分を加えて再構成したという。間にニュースが入ったのを除いて100分の長編ドキュメントである。

 有罪率99.9%という実態があって弁護士が無罪をかちとるのはせいぜい1件ぐらいしかないという中で、一人で14件もの無罪判決を実現してきた今村格さんという弁護士がこのドキュメンタリーの主軸になっている。

 昨今の弁護士に多い多弁ぶりと対照的な人柄がにじみ出る感じで、十二分の見ごたえがあった。

 その満足感は別として予想外に興味があったのは、今村さんを語るほかの弁護士の話だった。

 子細な言葉をメモしたわけではないが、こんな意味のことを語っていた。《普通の弁護士なら、今村さんのような仕事はしない。刑事事件を手がけて無罪判決を獲得するのは経済的なメリットがなくて、とても割が合わないからだ。こういう仕事の仕方では弁護士としてのビジネスモデルが成り立たない》。

 弁護士という職業について昔から薄々と感じていたことが、いとも率直にあっけらかんとした感じで語られていた。ちょっと驚くほど率直な語り口だった。

 いつもテレビのニュースショーやバラエティに訳知り顔で出てくる常連の弁護士たち。お笑い芸人とひな壇で笑いながら肩を並べる弁護士たち。いったいこの連中はプロとしての本業である弁護士の仕事をいつしているのだろうかと、かねがね疑問を感じていたからだ。

 限られたエネルギーと知力を集中して投入し、時としては調査費用を自弁してまでかかりきった刑事事件が無罪になれば辯護士としての目標は確かに実現するが、手に入る報酬がそれに見合っているかどうか。

 そんな割の合わないことに時間を費やすよりもテレビのコメンテーターとして適当なことをしゃべっている方がはるかに報酬が多くてはるかにトクだと考える弁護士は多いだろう。

 ゲスの勘繰りだろうか。

適正化法ができたとき若手の弁護士がマンションの勉強会を開いていると聞いて思わず首を傾げたっけ

 何となく10年以上前のことを思い出した。マンション管理適正化法が登場して間もなかったころだ。

 マンション管理の分野では知られた弁護士と雑談をしていた。その時、彼はこうつぶやいた。「適正化法が登場したものだから、この頃になって、急に、若い弁護士連中が勉強会なんか始めましてねぇ・・・」。

 “やれやれ・・”とまでは言わなかったが、表情は明らかにそんな感じだった。

 首都圏ではないある政令指定都市の実情をめぐっての雑談だった。

 こちらは少し驚いて《今さら勉強会なんかしなくても、若い弁護士ならおよそのことは知っているでしょうに・・》と応じたが、何だか話しづらくなってきて、すぐ話題を変えた。

 かねてからマンション管理に詳しい弁護士が本当に少ないと感じていたのは確かだったし、《やはりね・・》という感じになりそうな自覚があったからだ。

 実際、マンションの管理は収益至上感覚の弁護士だったら、まず積極的に取り組む分野ではあるまいという思いは、もうずいぶん前からあったのだ。何しろ持ち込まれる話が厄介だし、経済力はないし、管理組合も管理会社も組織の実情がつかみにくいし、いったい当事者が誰なのかがわかりにくいし、あれやこれやの事情が重なって弁護士に敬遠されても仕方がないとは思っていたが・・。

 しかし、一方では、弁護士たちと話し合う機会に複雑で戸惑う気分に満ちたことが多かったのも否定できない。

 法律の言葉だけでマンションがわかるという勘違いをしている弁護士が気になることがあまりにも多かったからだ。世の中の複雑さといささかも変わらないマンションという世界を語るには、あまりにも実情を知らなさすぎる・・・。

 六法全書は確かに欠かせないが、漢字の言葉だけで書かれた法律の言葉だけではとてもとても・・・。

「虫歯から水虫まで病気は何でもござれ」という医者がいないのと同じことが弁護士にも言えることを管理組合はもっと知っておく方がいい

 この実感が強くなってから、セミナーなどで繰り返すようになった言い方がある。

 《マンションには大勢の人が暮らしているのだから、管理組合が物事を決めようとすると、人の数だけ意見が分かれるという事実に必ず直面する。だから、この厄介な事実に向かいあうと法律などのルールが命綱になるが、その法律を使いこなす時には弁護士などの知恵が必要になることが多い。

 その弁護士を探す時には医者を探すのと同じ考え方が役に立つ

 病気になって駆け込む医者はどこの誰でもいいわけではない。病気によって診療科目が分かれているからだ。

 その点では、弁護士と医者も変わらない。医者の診療科目と同じように、弁護士も専門分野が様々に分かれている。弁護士にも会社紛争や相続問題など手がける専門分野があるから、マンション管理の場合も管理組合に特有の実情などがどのくらい通じるかを見極めながら弁護士を選ぶ方がいい》。
                   ☆
 セミナーに限らず、執筆原稿などでもこの考え方を繰り返すようになった。

 この考え方について、苦情や疑問にぶつかったことは一度もない。

だがマンションに詳しい弁護士が少ない実情は今も・・・

 しかし、実際のところ、この言い方は当面の説明方法に過ぎない。

 医者選びと同じ感覚で弁護士を選ぼうとしても、求めるような弁護士にめぐりあえるかどうかは別の話だからだ。

 病気に苦しんでいる人が求め続けてきたドクターに必ず出会えるとは限らない。いくら探しても見つからないことはよくあるものだ。

 《探している専門医がいるかどうか》は、探し方の問題と違うからだ。もともといないのだったら、いくら探し方に丹精を凝らしても見つかる筈がない。

 高齢化や老朽化といった手に負えない事態に苦しむ管理組合が頼れる弁護士を探す場合にも、どことなく似た感じはないだろうか。
                   ☆
 《刑事事件のえん罪弁護士ではビジネスモデルが成り立たない》という理屈や感覚は、マンション管理の分野では全く無関係だろうか・・・。 

| muraitadao | コラム | 12:38 | comments(0) | trackbacks(0) |









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