村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【44年の実感で「マンションの管理」を考える 21】昨日までの過去が誰にもわからない状態で今日のマンションを管理できるのか

竣工以来住み続けてきたマンションへの追憶が古い記録資料をどうしても捨てさせない。このこだわりの正体はいったい・・・

 いま悩んでいる問題がある。

 80歳代後半も残り少ない自分の状況を考えて、しばらく前から時間をかけながら雑多な資料などを整理し続けている。生来のこだわり症のおかげで、自分が関わってきたことについての記録やメモがたまりにたまっているが、このまま残し続けても意味がなくなるのは間違いないという自覚は年ごとに強くなる。

 だが、いつまで経っても手をつけられなくて、今も残っているものがある。

 竣工したばかりのマンションに住み始めたころや管理組合発足前後のことを書いた記録やメモなどだ。44年も前だから鮮明でないものが多いし、B5やA4でサイズも縦横の向きもバラバラ。管理組合誕生前で入居者有志の手書きメモもあれば、管理会社の不愛想極まる文書もある。名簿には後日、知名度の上がった人の名前も出ている。

 手に取っては目を凝らし、きりもないほどのことを次から次に思い出す。

 いっそどこかから強い風が吹き込んできて色あせた紙の山を吹き飛ばしてくれたらいいのに・・・と八つ当たり気味に思いながら、結局は捨てきれぬまままた元へ戻す。

 もう、こんなことを何回繰り返してきたことか。
                   ☆
 今さら、こんな感想が浮かび上がる理由がある。

 この資料を捨ててしまえば、このマンションの今までの様子がわからなくなってしまうではないか。全600戸の中の一居住者として書きとめてきた記録は所詮600分の1の価値しかないとよくわかっているが、それでも、まあ、それなりの価値はあると思う。

 それに、管理組合の一員として関わってきた時のメモなどは、いま思えば物足りなさがあるものの、11階建て4棟600戸のマンション全体をただ一途に考えながら最初の大規模修繕工事の取り組みも進めてきた。

 手がかりもない中で管理規約の改正もすませた。

 マンション管理センターや今の管理会社もまだ生まれていなかった時代だった。

 闇夜の手探りに似た心境で進めてきたことが次々に思い浮かぶ・・・。

この記憶を共有する仕組みがないマンションでは過去のことがどんどん闇の中に消えていってしまう。それが怖い!

 竣工時からの居住者はもちろん何人かいるが、少なくなった。年老いて一人暮らしの人や病臥中の人もいる。管理組合の一員としての存在感は日に日に薄らいでいく。

 竣工時からの居住者は、今やイリオモテヤマネコと同じ絶滅残存危惧種である。

 当然ながら、管理組合の動きは居住歴の短い人が中心となる。

 こんなに古くなったマンションなのに今でも中古物件としての手ごろ感があるとみえて入居者の入れ替わりは今も続いているので、管理組合運営の中心はこれからもさらに変わっていくだろう。

 管理会社も竣工時のデベロッパー系の会社が旧財閥系大デベロッパーの子会社に変わった。今の管理会社の母体ができたのは最初の大規模修繕工事よりも後だから、この大規模マンションの過去のことを知る人が現在の管理会社にいるはずもない。
                   ☆
 マンションはコンクリート造だから、長寿命だという。

 でも、それは物理的な意味での建造物寿命だ。その意味では、マンションもホテルもオフィスビルも同じである。

 マンションがホテルと違うのは、多くの人間が生活条件を共有しながら住み続けるという点にある。この条件が確保できなくなったらマンションはホテル化して、もうマンションではあり得なくなる。

「時間の経過に伴う劣化対応の視点が管理の本質である」ことを忘れたら空疎な法文解釈だけが残る。とすれば、今のマンション管理は・・・

 すべてのものは時間の経過とともに劣化していく。マンションも例外ではない。建物の劣化や住む人間の交代などの変化が避けられないマンションでは、そうした時間経過への対応がとりわけ重みを持つ。

 だからこそ、マンションでは管理が存在価値を左右することになる。そのことは、昔から気づかれていた。ただし、理屈の上では・・・。

 「管理が重大な意味を持つ」のは《誰が管理を担うのか》という意味になるが、もっと詳しく言えば《管理の当事者になるのは誰か》という意味になる。

 だが、この点を考えると、現在のマンション管理の考え方は明らかに理屈倒れになっていると言わざるを得ない。

 『マンションは管理を買え』などと大真面目にいう人が今もいる状態が、まぎれもなくそれを物語っている。管理は「買う」とか「売る」とかいうものではないのだ、自分自身が「する」ものであって、自分がやらないまま金を払って誰かに「やってもらう」ようなものではない。

 こんなわかりきったことを棚に上げるとマンション管理は他人事になってしまい、当事者がいったい誰なのかがわからなくなってしまう。
                   ☆
 時間経過への対応という視点は、これまでにも中途半端な形で、あるにはあった。

 マンションをあくまでも個人資産として考える視点がそれだ。だが、個人資産中心として考えるマンションは専有部分・住戸中心のとらえ方になり、大きくて複雑な建物であるマンションの全体像は見えにくくなってしまう。全体像の認識が薄いから超高層物件も低層物件も、大規模物件も小規模物件も同じような原則で管理を考えることになってしまう。
                   ☆
 いまだに標準管理規約に示されるマンション管理の原型には、時間経過への対応を考えた組織原則も実務処理イメージも示されない。維持管理の唯一の当事者組織である管理組合のイメージも相変わらずで、多様化したマンションの類型に対応した方向がいまもって示されていない。
                   ☆
 良くも悪くも、管理組合の実情はこうした認識状態をそのまま反映する。過去の経過への対応を公式の仕組みが何も考えていないのだから、当事者能力の弱い管理組合がいちいち過去のことを気にすることもない。

 来年になれば、また新しいメンバーが考えてくれるだろう。

 過去のことに今さらこだわっても仕方がないよね・・・。
                   ☆
 そんな声が聞こえてきそうな気がする。
 

| muraitadao | コラム | 08:13 | comments(0) | trackbacks(0) |









http://murai.realestate-jp.com/trackback/991865
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< July 2018 >>
+ SELECTED ENTRIES
+ RECENT COMMENTS
  • 【番外】11年目。公開遺言のつもりでブログを書き続けます
    マンション・チラシの定点観測 (11/26)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    村井忠夫 (12/07)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    尾下 義男 (12/07)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    村井忠夫 (11/23)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    尾下義男 (11/23)
  • 2年半ぶりでメンバーも変わって再開のマンション管理検討会、たった1か月で結論を出すとは・・・・
    とおりすがり (04/24)
  • 最新の「マンション総合調査」から読めること、読めないこと
    村井忠夫 (09/06)
  • 最新の「マンション総合調査」から読めること、読めないこと
    まるーべり (09/06)
  • 都議ヤジ問題の本当の理由は議員の当事者感覚の貧しさ
    村井忠夫 (06/26)
  • 都議ヤジ問題の本当の理由は議員の当事者感覚の貧しさ
    ポリス (06/26)
+ RECENT TRACKBACK
  • 「沈黙は賛成じゃない」という論理。選挙や総会では?
    マンション管理の情報屋。。。 (09/22)
  • マンションの中の喫茶店が話題になる・・・・:マンションの共用空間の新しい意味をもっと考えていいのではないか
    神園良輔の『マンション展望』 (05/05)
  • マンガ説明入りの規約解説本があってもいいじゃない?でも実際には簡単にいかないけどね
    マンション管理士情報ナビ (05/27)
  • マンガ説明入りの規約解説本があってもいいじゃない?でも実際には簡単にいかないけどね
    マンション管理士情報ナビ (05/27)
  • 女児マンション転落事故のニュースが浮かび上がらせたこと:どこのマンションでも同じことが起こる可能性にどれだけの人が気づいているか
    MANSIONS-COMMUNITY blog (04/15)
  • 「億ション」は最高が1億円なのか、最低が1億円なのか、それとも・・・:管理の基本原則は何億円でも関係ないが
    マンション展望 (02/16)
  • 「美しい国」で、これ以上「美しくないこと」が起こらないように:もっと集合住宅に住む不安を減らすための議論を
    マンション展望 (12/01)
  • 8年前の2月、国会でマンション管理をめぐる史上初の議論が行われた。そして、昨日の朝刊には・・・
    NONブログ (11/27)
  • 書名は買い手にとって本のすべて。本の名前と内容はなるべくなら、あまり違わない方がいいと思うのだが・・・
    高層マンション (08/27)
  • 新しい住宅が建たなくなったというニュースの怖い連想:暗い窓ばかりのマンションが思い浮かぶ・・
    マンション展望 (08/25)
+ CATEGORIES
+ ARCHIVES
+ LINKS
+ PROFILE