村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【44年の実感で「マンションの管理」を考える 22】大規模修繕工事調査の新聞記事を読んだ複雑にして屈折した感想

大規模修繕工事費が割高だから注意・・・という見出しの朝日新聞記事はいったい何を伝えたかったのか・・・

 5月12日(土)の朝日新聞朝刊一面のトップに出た記事の見出し。『マンション修繕 割高に注意/75万〜100万円 最多31%/国交省調査』。

 朝刊の一面トップ記事にしては、短くて簡単な記事だった。前文が6行、本文は2段でほぼ全50行。グラフも写真も全くない。記事だけ。

 34面にも次のような関連記事が出ていた。

 『修繕過大見積もり横行/マンション工事 コンサル、見積もり求め』

 こちらは4段で、全文ほぼ90行。別枠に「大規模修繕工事に関する相談窓口」が簡単な形で出ているが、一面同様、こちらもグラフや写真は全くない。

 記事の内容は国交省が発表した大規模修繕工事の実態調査の紹介だが、めったにメデイアが目を向けないマンションの、それも大規模修繕工事の関連情報をわざわざ大きく報じた意味がよくわからない。

 朝日以外の新聞が伝えたのかどうかを見れば何かわかるかもしれないとネットで探してみたが、探し方がわるかったとみえてまったくわからなかった。

 テレビの取り上げ方もわからない。NHKのニュースはいつも気をつけて見ているつもりだが、この調査のニュースはなかったような気がする。
                   ☆
 新聞やテレビのニュースがマンションのことを伝える機会自体がめったにないし、たまに流れるニュースも超高層マンションの売れ方のような市場動向が中心で、売れたあとの管理面の実情が伝えられることはもう滅多にない。まして「マンション修繕」などという字が朝刊一面のトップに出るなどとは夢にも考えたことがなかった。だから、正直、びっくりした。

 でも、読んでみて、いたく失望した。

 単純に国交省の調査結果を紹介するだけの記事だとしても、調査の内容を知る手掛かりとなるグラフや表が全然ない。この調査を大きく取り上げた意味が記事の文章だけではわからない。それほど長くもない記事の文末には「管理組合自ら監視を」という見出しで「住宅問題に詳しい・・・」何とかいう弁護士の話が添えられているが、この弁護士の話が記事の伝える内容とどう関連するのかもよくわからない。

国交省発表の調査本文を見てよくわかった。調査をした国交省やその結果を伝える朝日の認識レベルが・・・

 何回読んでもわからないことだらけでどうにも落ち着かないので、国交省のサイトからプレスシートを探し出した。それでやっと調査本文を見つけて、どうにか、このニュースの本質がわかった。

 記事が取り上げた調査は「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」という国交省の調査で、大規模修繕工事の注文を受けた受注者側に工事金額、工事内容などを尋ねた結果をまとめたものである。大規模修繕工事は管理組合が発注するのだが、その意味で唯一の当事者である管理組合がまったく調査の対象となっていない。

 「アンケート調査の概要」には「・・・大規模修繕工事に関する設計コンサルタント業務の実績を有する企業」が調査対象だと書かれている。2352社に配布したアンケートを134社から回収したとあるから、回答率は5.7%ということになるのだろうか。
                   ☆
 それだけのことがわかって、あらためていくつかの感想が浮かんだ。

 まず、第一は、今や600万戸をはるかに超えるマンションが維持管理面で最大の課題となるのが大規模修繕工事だと昔から言葉だけは何度も語られてきたのに、やっと実現した実態調査がこの程度の調査内容だったかという失望である。

 何よりも、大規模修繕工事に直面して苦しむ管理組合の実情がまったく調査対象となっていない。管理組合にとって、大規模修繕工事は計画立案から総会可決までの長い長い過程が大変なのに・・・。

 第二は、そうした基本的な点についての視点をまったく欠いたまま中途半端に記事化した朝日新聞への失望だ。いったい何に着目してどういうことを伝えようとしたのか全くわからない。

 のみならず、記事の伝え方を見ると、伝えようとしている記者が大規模修繕工事について基本的な理解が十分でないのではないかとさえ感じる。よくわからないまま投げ込み資料だけで記事を書いた記者はさぞ苦労したことだろう。

 そして、第三。こんな中途半端な形で流れる情報が、ただでさえ無関心で放置状態のままストック戸数だけ増えていくマンションの林立状態にもたらす意味の不安だ。

 新規物件が大規模化・超高層化しながら都心に集中していく一方で、小規模・低層の老朽化したマンションが建ち並びながらストック戸数が600万戸をはるかに超えるという不安である。

法律論第一で明け暮れてきたマンション管理の議論の現状をこれからどうするのか。行政は、メデイアは、学界は、業界は、そして居住者は・・・

 もう何十年も繰り返してきた感想をまたしても繰り返すことになるのだろうか。

 時間が経てば、何でも古くなるというわかりきったことがマンションでも例外でないことに誰もが気づいていながら、いまだにマンションを区分所有するという権利の有無だけを過大視して維持管理を考える発想を一体いつまで続けるのか。

 マンションは《住む》ための建造物であり、《持つ》ことだけでは居住のための建築物である本来の機能を確保する維持管理ができないということが、いつになったら公認されるのか。

 マンションについて法律の視点は欠かせないが、それは個人レベルの一戸建て住宅をとらえる感覚の延長上ではなく、もっと集合住宅独自の発想に基づくものであるべきではないのか。

 維持管理の唯一の当事者となる管理組合を権利者集団としてみるだけで生活者集団としてとらえる感覚が、いつになったら公式に成立するのか。
                   ☆
 築後45年目を迎えた600戸のマンションに住み続けて、3回目の大規模修繕工事がわってまだ数か月。

 今さら、こんな感慨をブログに書くことになろうとは思わなかった。
                   ☆
 何だかむなしくなった。

| muraitadao | コラム | 10:55 | comments(0) | trackbacks(0) |









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