村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【44年の実感で「マンションの管理」を考える 23】お住まいのマンションをお好きですか?:管理最大の鍵は住む所への愛着ではないか

何年かたったらいずれ引っ越すつもりの持ち主にとって管理組合は無縁無関心の存在?

 3度目の大規模修繕工事をすませた時、今までと違う感想が頭に浮かんだ。

 それは《自分が住んでいるこのマンションが好きかどうか》という言い方でしか書きようがない実感である。

 大規模修繕工事は何回やっても厄介な大仕事だ。だが、それを承知の上で、あえて取り組むのはいったい何のためなのか。

 わかりきったことだが、いまのマンションの住み良さが少しでも長く続くようにしたいからだ。

 改めて言うのも気がひけることだが、自分一人だけでそう考えても実現する話ではない。住み良さが一日でも長続きするように・・・などといくら思っても、壁一枚隔てた向こう側に全然そう思わない人が住んでいたら、もう話が変わってくる。

 マンションは「隣人を選べない住まい」なのだから。

 壁や床を隔てただけの超至近距離に隣り合って住む人がどんな人であろうと何を考えていようと基本的には無関係だが、集合住宅特有の構造条件があるから生活面でお互いに一定の影響を及ぼしあわざるを得ない絶対的な状況がある。

 隣の住人が天使であろうと悪魔であろうと、間違いなくそうなる。

 もし隣が空き家化していても、抽象的で観念的な権利の存在が公認されている限り《どこかヨソに住んでいる会ったこともない人》の存在に影響されることになる。

 こう考えると、管理組合がマンション管理の当事者だという理屈には《理事長の○○さんや区分所有者の□□さん》という固有名詞を当てはめて考えないとリアルなイメージが浮かばない虚しさが漂ってくる。

 この点に気づかないと、大規模修繕工事は間違いなくやりにくくなる。

 30年以上昔に気づいたこの実感は10年ちょっと前の2回目の大規模修繕工事でも同じだったし、最近の3度目の大規模修繕工事でも全く変わらなかった。

どこの誰にでも通用する言葉で大規模修繕工事を説明すると何パーセントかの「語り尽せない感じ」が最後に残る・・・

 ○○さんと□□さんは違う。●●さんと■■さんも、また違う。

 人の違いは、考え方や意見の違いでもある。

 管理組合は、何かにつけてこの事情に直面する世界だ。

 3回にわたり関わってきた大規模修繕工事は、この実感を確かめる機会でもあった。《600戸のマンションには600通りの考え方や意見の違いがある》ことを、大規模修繕工事の話が始まって、工事が進み完了するまでの間はいつも再確認しながら「こういうことがあれば○○さんはこういうだろう・・」と思う日々でもあった。

 改めて考えると、大規模修繕工事には制度や仕組みを話す時の言葉では語り尽くせない固有の感じが必ずあった。それは、ほんとうに、もう何パーセントかしかない僅かなものだったが。これは、いったい何だろう・・・。
                   ☆
 たぶん、それは自分の住んできたマンションへのこだわりだろう。このマンションで過ごしてきた年月へのこだわりでもあっただろう。

 さらに言えば、このマンションで起こったこと、ぶつかった事実にいっしょに向き合ってきた人と一緒に過ごした年月へのこだわりだろう。
                   ☆
 なぜ、そういうことが言えるのか。このマンションが好きだからだ。

マンションへの愛着は住んできた年数がもたらしてくれた実感!「10年で買い替えなさい」などという本の信奉者は管理組合のお荷物?

 年数がたてばどうなるか。マンションに住み続けてきた年月は、歳月の経過がマンションとわが身にもたらしたものを確かめ続ける日々だった。

 この実感があるから、マンション管理の本質は年数経過への対応であることを確信できるようになった。経過した年数に対応した変化がホテルと違うマンションとそこで生活する人間にどんな変化をもたらし、どんな対応が必要かを教えてくれた。

 権利と利殖中心で居住性を二の次にする感覚でマンションを考えると、どんなことが起こるかも教えてくれた。マンションは長く住む場所であり、マンション管理は経過する時間に対応しながら住み続ける知恵であることを知った。

 この実感は、自分の住むマンションが好きで、愛着があり、こだわりつづけてきたからこそだからと知った。
                   ☆
 東日本大震災の翌年に「マンションは10年で買い替えなさい」という書名の本が出た。(沖 有人著/朝日新聞出版・2012年12月刊/朝日新書/834円)

 発行当時、いくら何でもここまであからさまな書名はないだろうと思った。見識の高さを自他共に許す朝日新聞系列の出版物とは、とても思えない利殖感覚まる出しの本だった。

 でも、この本はそれなりによく売れたらしい。

 エゴイストの計算感覚むき出しのこんな書名の本を真に受ける人が、それなりに多いらしいと思った。長く住み続けることを第一的に考えている人間には容認し難い気がした。

 で、このブログで、この本のことを書いた。2013年5月15日「10年でマンション買い替えを奨める説をどう考えたらいい?」

 ちょうど5年前の今ごろだ。
                   ☆
 いま読み返しても、このブログを書いた時と考え方は全く変わらない。

 むしろ、この5年間のマンションをめぐる議論レベルの現状にため息が出る思いがする。

 気がつくべき立場の人が、なぜ気づかなかったのか。気づいても黙っていたのか。それとも、大半の人は、全く気がつかなかったのか。

 まさか・・・。
                   ☆
 5月22日の日経朝刊は「東京は持続可能か」と題した「複眼」というオピニオンページに、東洋大学教授の野澤千絵さんの『「老い」深刻、住宅増止めよ』という一文を掲載した。タイトルではわからないが、高経年マンションの問題を語る内容である。

 いまも、まだ5年前とまったく同じままの論調が相も変わらず続いている気がする。

| muraitadao | コラム | 10:47 | comments(0) | trackbacks(0) |









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