村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【44年の実感で「マンションの管理」を考える 24】「高齢者」。誰もが使うこの言葉、本当の意味はちゃんとわかっているのか

65歳以上なら誰でもみんなひとくくりに「高齢者」だが・・・

 同じマンションに竣工した時から住んでいる人は、ほかにも少なからずいる。建物が経過してから40年あまりの歳月は、その人たちにも様々な変貌をもたらした。

 あと4か月で87歳になる私と似たような人生経験を重ねてきた人の場合は、長年の間に自然と顔見知りになった人たちが多い。時たま、そんな人たちに玄関で出会ったり、マンション前のバス停で一緒になったり、時としては病院の待合室で顔を合わせたりすることもある。

 何度も関わってきた大規模修繕工事で何かと気さくに教えてくれた人も結構いて、こちらの方にはマンションの老人会でいつも顔を合わせる。

 管理組合が取り寄せている市の住民基本台帳人口統計によると、いま600戸の居住者1200人余りのうち、65歳以上の人の比率は4割を超える。内訳を見ると、74歳以下の前期高齢者が全居住者の2割。ついでいうと、最高年齢は男性が98歳、女性は103歳。

 65歳という年齢で「高齢者」を考える限り、さまざまに人間像の異なる状況がマンションで展開していることになる。考え方や話し方の違いから始まって、生活感覚も経済事情も人の数だけ違う状態を確かめる機会がないまま同じ生活条件を共有しながら暮らしているともいえる。


でも「高齢者」って実は複雑。高齢になるまでの歳月がまったく違うのだから・・・

 だが、正直に言うと、「高齢者」の実像は到底こんな言い方でおさまるほど簡単ではない。65歳という年齢だけで区切ってしまう「高齢者」の考え方では、年齢以外の側面が何ひとつわからないからだ。

 事実、国語辞典などで「高齢者」をどう説明しているかを確かめると、かなり用心した書き方になっている。例えば、最近で出たばかりの「広辞苑」第7版は《年齢の高い人。WHOの定義では65歳以上の者。老人とは異なり、年齢のみに着目した呼称》というだけの説明だ。

 うーん、確かにそうだけれど、何だか、これじゃねぇ・・という感じがする。いつもテレビのニュースで見かける政治家にギャングスタイルでさも、これ見よがしの若作りの人物がいるが、あれで、実はもう喜寿だったっけ・・・などと余計な連想まで浮かんでくる。

 ま、どうでもいいけど。
                   ☆
 いずれにしても、いま使われている意味での「高齢者」という言葉でわかることは《その人が生きてきた歳月が65年になる》ということだけでしかない。数字の意味だけが中心の説明だから、それまでの年数の間、どこで、どう過ごしてきたかという、その人固有の事情は本当に何も分からない。その分からなさは、今は「個人情報」というベールに覆われているから、昔よりも徹底しているような気もする。

 実感でいうと、いま目の前にいる高齢者でわかることは、古い付き合いの人でない限り、住戸番号と名前ぐらいしかない。同じマンションに住む人間同士なのだから、もっとよくお互いに知り合おうよ・・・と思うのだが、実際にはそう簡単ではない。こちらでいくらそう考えても、向こうがそう考えるとは限らないからだ。

 もしかすると、この感じは年齢の差を超えて多くの人に当てはまりそうな傾向だから、高齢者に限ったことではないかもしれない。

 そうだとすると、お互いにわかっていることが名前ぐらいしかない状態はマンションのような超近接居住構造の場所では、やはり何かにつけて気になる。場合によっては「気になる」程度を超える不安が生まれることだってあるだろう。
                   ☆
 高齢者の場合、いま目の前に見えているのは、実は高齢になるまでの間に過ごしてきた歳月の結果が語る表面上の様相だけである。少し話してみて、何となく言葉の端々に独特の感じが浮かんでくるので遠慮気味に聞いてみると、現役時代はどこだかの先生だったとか、○○銀行だったとかいうことがわかって、あ、なるほどね・・と得心がいくことも多い。そうなれば、こちらもそれなりに今までよりちょっとあけすけな話をする展開にもなる。

 しかし、そうならないことも、実は結構、多い。とりわけ高齢者の場合は現役時代に染みついた習性があるから、できる限り不要な接触を避けたいという感じが浮かぶ人もいる。何を言われようと黙ったままで、いわゆる「上から目線」的な取っ付きにくい感じが漂う人も少なくはない。
                  ☆
 私のマンションは古いから、エレベーターンの速度がとても遅い。住んでいる11階から1階に着くまで50秒ぐらいかかる。1分足らずの短い時間だが、途中から乗ってきた人と狭い空間の中で押し黙ったままの状態は気詰まりで嫌なので、できるだけ言葉をかけるようにしている。「今朝は寒かったねぇ」とか、どうでもいいようなことばかりなのだが、大抵の人は何か言葉を返してくれるから、それがきっかけで次に会った時には今までより自然な会話ができるようになる。

 ところが、高齢者では、ここが違う。ムスッと黙ったまま黙殺状態の人もいる。

 高齢者特有の個人差が、こういう形で生まれる。

 高齢者の実像は、その人が64歳までに過ごしてきた歳月が今の姿に凝縮されていて、その大部分はちょっと見ただけではなかなか表からは見えにくいのだ。

 でも、考えてみれば当たり前だろう。性格や環境など持って生まれた違いに重なった長年の生き方を、そんな簡単に語り尽せるものではないのだから。《どこで生まれて、どこで何をしてきたのか》という長い年月の物語を誰かに語るには、多くの言葉と長い時間が要るのだから。


「65歳以上らしい」ことだけで何もわからない人が壁を隔てた近くにいる状態のマンションでは・・

 超至近距離で生活条件を共有するマンションでは、共有関係に問題なく相互の住みよさを確保するために管理組合組織が必要になる。

 だが、《区分所有者という権利の持ち主団体》という点だけに注目するのではなくて、《自分の持つマンションに住む生活者の団体》という視点が絶対的に必要となる。

 だが、組織の実際はメンバー次第で決まる。管理組合という組織の実像がマンションごとの居住実態で決まらざるをえない事情がこうして生まれる。

 どんなマンションの管理組合でも、住む人たちの個人差の集積によって物件ごとに固有の居住実感の差が生まれ、それが管理組合の空気を決める。
                   ☆
 高齢化社会などという言葉を誰も思い浮かべなかった時代にできたマンションのイメージ、管理組合の組織像、マンション管理の基本原則が今なお続いていることを考えると、もうそろそろこの点に気づくべきではないのかを痛感する。

 高齢者、高齢者という割には、肝心のことが織り込まれていないままの仕組みに再点検の時期が来ているではないか。

 44年住み続けてきたマンションで、建物と同じ齢を重ねてきた実感がそう思わせる。

| muraitadao | コラム | 09:00 | comments(0) | trackbacks(0) |









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