村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【44年の実感で「マンションの管理」を考える 26】マンションの管理を考え続けながら新聞とテレビにつきあってきた歳月の実感

自治会には入らないと豪語していた記者は言った。「そんなのに入って何のメリットがあるの」と

 先月読んだ「新聞社崩壊」(畑尾一知著/新潮社発行/2018年2月刊)という新書で次のような一節を目にした。今さら驚きもしなかったが、じわじわと浮かんできた嫌な感じがいつまでも頭の後ろ側にこびりついて離れず、さっぱりしない。

 気になるその部分には、こう書かれている。

《・・・筆者の知るある記者は、地域の自治会には絶対に入らないと豪語していた。「そんなのに入って何のメリットがあるの」と歯牙にもかけない風である。・・・》

 この後には次のような記述が続く。

《さらに「老人ホームで嫌われるのは、元記者と元学者」ということも聞いたことがある。理由は、似たようなものだろう。》

 これ以上の引用は、やめる。あえて一部分を引用するのは、マンションに住んでメディアのことを長年ずっと考え続けてきた実感に通じるところがあるからだ。 
                   ☆
 今も住んでいるマンションが竣工したのは、「広辞苑」が「マンション」という言葉をやっと掲載してから5年が過ぎたばかりのころだった。それも《(邸宅の意) ホテル風の高級アパートの称。》という珍妙無類の説明だった時代である。マンションはまだまだ新しい存在だった。

 そんな新しさに目を向けた新聞社や放送局の人たちが、このマンションには何人も住んでいた。親しくなって訪問しあった機会のある人もいた。

 でも、そうしたメディア系の人のほとんどは、管理組合なんて・・・という感じだった。ごくわずかな人が順番制の当番年に管理組合の役目を引き受けてくれることもあったが、普通そんなことは滅多になかった。

 冒頭に引用した個所は、そんなことをあらためて思い出させたのだ。

取材を受ける都度それとなく気をつける習慣ができた。取材で正確に説明しないとどんな記事を書かれるかわからないことが多かったから

 40年以上も住んできたから、取材に応じた経験もたびたびだった。

 その経験を通じて、《取材する当の記者本人が実は自分の取材している問題についてあまりよく知らないらしい》ことがわかってきた。取材される立場には《いま聞かれていること》についての聞き方や言葉遣いで、眼前の取材記者がその問題をどのくらい理解しているかが自然とわかってくることがよくわかった。

 ただし、取材のテーマはいつも違っていた。40年ぐらい前までは住宅不足→住宅資金→住宅イメージといった大まかなところだったが、マンションが公的融資対象となった1970年代に入ると取材されることが一変した。

 この時期は、いつのまにか「住宅評論家」という名をつけられてしまった時代でもあった。取材のテーマは金利の仕組み→住宅と将来計画→住宅入手計画となり、このプロセスに「マンションか、一戸建て住宅か」「新築か中古か」という選択肢の考え方がいつも重なっていった。
                   ☆
 マンションと縁ができる20年近く前の1955年(昭和30年)に、私は住宅金融公庫で住宅と関わる歳月をスタートした。住宅ローンという言葉が生まれたのはそれからずいぶん後だったが、リクルートの「週刊 住宅情報」の登場など住宅ジャーナリズムの勃興期でもあったから、新聞や雑誌、テレビなどの取材が年を追って多くなっていった。

 反対に、このころ全盛期だった霞が関の天下り役人たちがメデイアの取材をひどく嫌がって逃げ回り、いつも取材対応を押しつけてきたという事情もあった。

 そんな状況で取材の相手を務めて続けているうちに、いくつかのことに気づいた。

たまにマンションのことを思い出しながら書かれた記事でも間違いがあると影響は小さくない。不正確な情報は存在自体が害となる

 それは、マンションを含む住宅については、専門社でない限り、どの新聞社でも放送局でも継続して担当する部門がないことだった。企業レベルの視点で考えれば仕方のないことだったかもしれないと今では思うが、当時は、いつも飽き足りなさを我慢する方が多かった。

 いずれにせよ、名刺で記者の所属先を見ても全国紙ではいつも家庭部とか生活部、せいぜい文化部などが普通だった。

 昭和50年代に入ってアメリカの経済政策に触発された福田内閣が、住宅融資テコ入れによる内需拡大を経済政策の柱とし始めた時代を迎えた時てさえも、一般紙誌で住宅を専門的に取り組む記者はいなかった。「マイホーム」という言葉が流行語まがいにもてはやされた時代だったが・・・。

 わずかな例外の一人が、当時、読売新聞にいた本吉庸浩さんだった。のちに日本不動産ジャーナリスト会議の2代目・代表幹事になった本吉さんに誘われて日本不動産ジャーナリスト会議に入ったのが、いま思えばこのブログの遠景になっている。
                   ☆
 それはさておき、そんな経験を重ねながら気づいたのは、取材に来た記者の質問を聞くたびに、いつも住宅について肝心のことがあまりわかっていない印象が強かった点だ。正直に言えば住宅については素人だと気づいても相手のプライドに気を使いながら、説明するときの言葉の意味をそれとなくきちんと解らせる用心深さがいつのまにか取材時の心得として習慣化するようになった。

 そうでないと、後から記事を読んで《え?こんなことを・・》と気がついて驚くことが何度もあったからである。

 30年近く前に社会問題化していた住宅ローン返済破たんの取材に来たある全国放送局の記者から、開口一番「住宅ローンを返せなくて首をくくった人の話をご存じだったら、ぜひ聞きたいんですが…」といきなり切り出されて肝をつぶした時の経験が発端だった。

 マンション管理適正化法ができた直後のちょっとしたマンション管理ブームだったころ、ある人気テレビ番組のキー局が当時マンション管理センターにいた私に電話で「大規模修繕工事のことをざっと簡単に聞かせてください」と言ってきたことがある。あまりにもあっけらかんとした能天気で無造作な質問に呆れ果てて「そんなこと電話で簡単に話せるわけないでしょ?時間のある時にこちらへいらっしゃい」と答えた。

 その後、この局からは音沙汰なしでこの企画はいったいどうなったのかと思っていたら、間もなくその人気番組のウソやねつ造が問題となり、とうとう番組そのものが打ち切りになってしまった。

 こんな経験を重ねてきてわかったことは、専門社を除くと、大半の新聞やテレビでは「住宅そのものをトータルな視点で継続して取り組む組織がない」ために住宅に向ける関心がいつも大ざっぱで、せいぜい風物詩レベルの軽いものになってしまっているという実感だった。情報発信者の問題意識も認識レベルも素人並みだったのだから、マンションのこととなれば、言わずもがなである。

 そうしたもどかしい実感が多かったため、いつの時期からか、取材に対応するときは、まず開口一番[あなたはどんなところにお住まいなんですか?一戸建て?それともマンション?]と聞いてから話を始めることが多くなった気がする。

 とはいえ、相手のプライドは考えなければならない。そこに気をつけて話さないと自分の思い込みで書かれる記事がどんなものになるかわからない。

 大抵の場合、取材記者がマンションに向ける関心は、新築マンションがどのくらい売れたかという市況中心の流通面に限られがちだった。管理などとなれば、もうまるで違う。

 「マンションは管理を買え」などという出どころも意味もあいまいで怪しげな言葉だけは知っているが、その管理の実情を承知している人はめったにいない。長寿命のマンションが時間の経過によってどう変貌していくかという管理の基本認識がマンションの居住性理解の鍵になることをそれとなく気づかせながら、具体的な管理組合の実情をめぐる話を進めていく展開になるのが普通だった。
                   ☆
 こうなると、マンションの管理には特有の語りにくさと書きにくさが生まれることになる。背景には、記事を書く方にも読む方にも共通するマンション管理への関心の薄さがあったことは否定できない。さらに、その奥に、一戸建て感覚でマンションに住むという居住感覚のギャップがあるという疑問が浮かび上がってくる。
                   ☆
 冒頭に書いたような「そんなのに入って何のメリットがあるの」という記者の言葉から浮かび上がる風景の実感は、今もなお荒涼としたままだ。

| muraitadao | コラム | 11:59 | comments(0) | trackbacks(0) |









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