村井忠夫のマンション管理ブログ

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【44年の実感で「マンションの管理」を考える 26】「相談」という名の情報が理解されていない不安はマンションでも例外ではない?

「相談」の本質は情報。道に迷った人に「行先を教える」程度の軽いイメージで考えるとこの言葉の重さが見えなくなる

 政治家や官僚が何かに対応しようとすると、その構想のどこかに必ず「相談」という言葉が出てくる。

 「相談」という言葉は、ほとんど説明抜きで使われることが普通だ。何しろ相談に乗れる人間さえ揃えれば、そんなに予算や費用をかけなくても対応できるのだから、どんなことに対応するときも簡単に具体化できる。

 「相談」は実現しやすくて誰にもわかりやすいところに最大のメリットがある。

 「相談」がそれほど何かにつけて当てにされるのは、「相談」に即効性のある情報提供という意味があるからだ。目前の問題にすぐ答えられるという期待がスピーディで有効な情報としての価値を生むのであって、「すぐわかる」情報として役立たなかったら「相談」はたちまち出番を失うことになる。

 こういう事情があるから、現場を熟知していることが前提になる「相談」は、エリートにはとても務まらない。理屈通りに進まない現実があるからこそ「相談」が頼りにされるのだ。

 こう考えると、「相談」という言葉の意味の見え方が前提次第でかなり違ってくることになる。

 ふつう「相談」は「わからない人に教えてあげる」という程度の単純きわまるイメージで使われることが多い。難しいことがあったら「わかっている人」に聞けばいいというのが「相談」なのだから。

 そんなイメージは行政の仕組みでも変わらないように見える。「相談」という言葉は「よく知っている人が必ずどこかにいるはずだ」という考え方が説明不要の感じで前提となっているわけだ。行政の仕組みや法律を考えると、そこがよくわかる。

 「マンション管理士」について定義したマンション管理適正化法の「・・・管理組合・・・等の相談に応じ」という言い方などもその典型例だろう。

 そうなれば、「相談」という言葉の意味をわざわざ改めて考えてみたりすることもない。なんでまた、そんなわかりきったことを・・ということになる。

「相談」という言葉では手に負えない重さのあることも・・。「相談」で見つからない答えをどこで探せばいいのか?

 でも、これは「相談」が《教える》という何でもない軽い意味に使われている場合のことだ。《聞かれたこと》がそんなに軽くなかったら、《教える》とか《答える》ことは途端に重みを増して手に負えなくなってくる。

 法律相談とか結婚相談などという言葉の存在が、その証拠ではないか。

 「相談」が無造作な軽い意味でやり取りされるのは、《聞かれること》も《教えること》も難しさのない軽い話だけに限られるのだ。

 こう考えていくと、手のつけようがないほど難しくはないが、確かめるのも面倒くさくいので聞いた方が手っ取り早いようなことほど、実は相談向きなのだということがわかってくる。一見して難しそうに見えても、それをいとわず答えの見つけ方を心得ている人があまり相談したりしないことを考えるとそこがよくわかる。

 あらためて確信するのだが、何となく無造作に使われる「相談」という言葉は《答えの見つからない問題などないはずだ》という考え方を前提としていると実感する。

 《どうしたらいいかわからなくて途方に暮れる難しい問題にぶつかっても、必ずその答えはどこかに存在している》ということになるわけだ。

 何と楽天的で自信過剰な、何と能天気な・・・。
                   ☆
 60年以上も昔、現在もまだ続く住宅と関わりのある人生をスタートしたのは、発足してやっと5年目の住宅金融公庫だった。そのとき何でも屋の感じで担当させられた仕事の一つに、相談への対応があった。

 「もはや戦後ではない」とこの頃どこかの偉い人が言っているらしいことは承知していたが、住宅に関する限り、まだまだ不足という圧倒的な言葉の生々しさの方が切実だった。相談にやってきた目の前の人と向かい合う自分とのやり取りがほとんど同じ言葉でできたのだから、ある意味で、相談者と相談対応担当者との感覚は同じだったといえる。

 このとき、「相談」という言葉を使う場面で「答えが見つからない問題がどれほど多いか」という苦しさを思い知った。どう答えればいいか見当がつかなくて「相談」という言葉を気軽に使えなくなったのは、その実感があったからである。

 そのとき以来、この経験が「相談」という言葉では答えが見つからない問題がどれほど多いかという感覚がこの言葉の使い方を用心深くさせてきた。

マンション管理では答えが見つからない問題が増え続けていることを忘れると「相談」は途端に現実離れする!

 この実感は、住宅について書いたり話したりする時にもう無意識のうちに習性化している。本やセミナーの話などでは答えが見つからないという状況の人ほど、ほかとは違う状況に直面している。だから、答えもその状況に中にあるはずだ。となれば、まず持ち込まれた問題に固有の状況をできる限り確かめなければならない。

 マンションをめぐる相談では、この実感がとりわけ強い。だから、相談者の住むところは、どこの、どんなマンションなのか、そのマンションに住んでいるのか、これから買うのか、もう住んでいるなら居住歴はどのくらいかなどということを、いちいち確かめる。そうしたことを確かめていくうちに、相手の方も《いま自分が答えを探している問題は何なのか》を再確認することになる。

 この過程に時間をかけながら問答を重ねていくうちに本当の答えは相談者自身が当事者として探すしかないことに気づくこともある。
                   ☆
 相談という言葉の奥行きの深さが、こういうときによくわかる。それは、相談に来た人だけがわかるのではなくて、相談に乗ろうとしているこちらにもまったく同じ感じのわかり方なのだ。相談は聞く方と答える方の共同作業とも言えるだろう。

 この実感は、現場感覚と裏表である。マンションの場合も、まったく同じだ。

 法律ではなくて、その法律の言葉を自分の口で語れる人間の感覚で決まる。その感覚は、自分のマンションで顔と名前の一致する人の数が多いほど確かになる。

| muraitadao | コラム | 04:47 | comments(0) | trackbacks(0) |









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