村井忠夫のマンション管理ブログ

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【44年の実感で「マンションの管理」を考える 27】大規模修繕工事のレポートを読んで感じた今さらながらの安堵感、もどかしさ・・・

大規模修繕工事の実情レポートを読んで「やれやれ、今もやっぱり・・・」と感じたら失礼だろうか、それとも・・・

 何十年もの間に、マンション管理の分野でいろいろな縁が生まれた。セミナーや講演会で会った人はもちろん、遠い昔に住宅評論分野で書いたり話したりしていたころの縁が今も続いているようなケースもある。様々な委員会や審議会で一緒になってその専門領域をこちらが頼りにしているうちに、逆に力を貸してくれと言われたのがきっかけで長いお付き合いになった人もある。

 そんな人のひとりが、田辺邦男氏だった。田辺さんは大学の先生というイメージではなく、現場を熟知している専門家という意味で貴重な存在感があった。

 田辺さんはマンションリフォーム技術協会の会長だったから、この協会からは今もmartaという名前の会報が届く。

 7月上旬のある日に送られてきたmartaの第28号にマンション大規模修繕工事のレポートが出ていた。

 ちょうど昨年の今ごろ、3回目の大規模修繕工事の真っ最中だったことを思い出しながら読んだせいもあっていろいろな感想がわいてきた。

大規模修繕工事の主役は管理組合なのに当の管理組合自身の立場で大規模修繕工事にふれたレポートは今でも相変わらず少ない

 大規模修繕工事のレポートというだけなら、正直な話そんなに珍しくはない。大規模修繕工事はこういう時に始まって、こう進んで・・という話なら、いくらでもある。しかし、ここで紹介しようとしているレポートは管理組合のことから始まっていることが目をひいた。

 ・・と書いてきたのだが、気持の片隅ではわざわざこんなことを書くのは何だか奇妙でおかしいのではないかという気もする。

 そうではないか。

 もともと大規模修繕工事の主役は管理組合なのだから、当事者の立場で管理組合のことが述べられるのはまったく当たり前で、何の不思議もない。

 それなのに、管理組合が当事者となる前提で大規模修繕工事を語る例は、今でもそう多くない。

 だから、目をひくことになる。

 奇妙で不思議なことだが、こうなるだけの理由がないではない。当の管理組合にこうしたレポートの書き手が少ないという事情がその理由の最たるものだ。

 関連する業界の関係者にとっても、この難しさはそんなに変わらないようだ。本来の仕事と同じレベルでいつもと同じ感覚で「書く」のはあまり気が進まないという人が多いし、そうでなくても「書く」となればけっこう気が張って厄介だということもあるだろう。

 大規模修繕工事はある意味で「物事の決定」の連続だが、それは個々の段階ごとの意思決定場面で利害関係者の存在が無視できない場合が多いからだ。

 そう考えると、こうしたレポートで管理組合にふれた例がやはり珍しいことがはっきりする。

管理組合自身の立場のレポートが少ないからいまだに大規模修繕工事関連の有効情報が不足する

 大規模修繕工事はどういう段階で始まってどう進むかという手順や展開の解説情報は、けっこう多い。そういう内容の本はたくさんあるし、セミナーなどのテーマにも定番的に取り上げられる。かく言う私自身がそんな本や解説をたくさん書いてきたし、セミナーや講座でもさんざん話してきた。

 しかし、それは、みんな《これから実行する》段階にある人たちを対象とした実行前のガイダンスであって、実行段階の話ではない。

 理詰めに言えば《こうあるべきだ》という話も、やってみれば実情はかなり違うということが多いはずだ。大規模修繕工事は長期間で取り組む「マンションまるごと」の事業だし、大抵の場合、取り組む管理組合は未経験だから、実行段階で事前に予想していなかったことが起こりやすい。

 だから、管理組合にとって大規模修繕工事は手をつけたあと予想通りに進むかどうかの説明が、実は最大の急所にもなる。

 その意味で、大規模修繕工事は、いつ、どういう状態の時に始まり、どんな経過を経て、どういう状態で終わるかという時間幅を前提とした説明こそ望まれるわけだ。大規模修繕工事にはある期間にわたるストーリー展開に似た様相もあるのだ。

 「どういう状態の時に始まってどんな状態の時に終わるのか」というリアルな条件で、大規模修繕工事は実情が変わる。同じマンションであっても、その都度、全く違う。工事期間自体が一年足らずとか半年であっても、実際には何月から何月までの何か月間なのかで進み方がまるで違う。年度をまたぐ場合などでは予算の組み方に直接の関係が生まれるし、理事会の顔ぶれにしても変わっている可能性がある。

 結局のところ、管理組合にとって有効な大規模修繕工事の説明は《やる前の説明》もさることながら《やってみた後の説明》も大きな意味を持っているのだ。

管理組合自身による当事者経験がもっと語られるべきではないか:苦労した管理組合ほど語るべきことが多いのだから

 「やってみたらどうなったか」ということは「やってみた人」にしか語れない。

 それは大規模修繕工事でも同じだ。

 その意味で、大規模修繕工事を経験した管理組合ほど語るべきことが多いはずである。「聞いていたこと」と「やってみてわかったこと」は全く同じだったのか、どうか。法律や仕組みの建前は実際と全く食い違いがなかったのか。法律や技術の専門家から聞いたことがないような問題で苦労したことはなかったのか。

 「やってみてわかったこと」は、すべて「聞いていたこと」と同じだったのか。

 実際にやってみた大規模修繕工事の実感はどうだったのか。
                   ☆
 そろそろ、こうしたことを当の管理組合自身が語るべき時期が来ていると思う。やってみてわかったことの多さを知った管理組合が未経験の管理組合に向けて発信できる有効情報は、とても多いはずだ。                           ☆
 大規模修繕工事を経験した管理組合は、かつて自分たち自身が大規模修繕工事実行前に感じていた未経験段階の不安を思い起こしてもいいのではあるまいか。

| muraitadao | コラム | 05:06 | comments(0) | trackbacks(0) |









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