村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【44年の実感で「マンションの管理」を考える 33】マンション管理を支える仕組みは「人とつながって住む」気づきだと知っている人はどのくらいいるか

マンションがホテルと違うのは「泊まる」のではなくて「住む」ところだからだが・・・

 大きな建物の一部屋をある日数にわたって自分だけが使うという意味で、ホテルとマンションはちょっと似ている。その証拠に、リッチな有名人のホテル住まいの話は、よく聞く。

 だからと言って、マンションもホテルも似たようなものとは言えない。壁や床を隔てただけで名前も知らないよその人と同じ建物の中で幾日も過ごすのだからマンションもホテルも同じようなものさ・・・というふうに、さもわかったような顔で、わかったような口をきかれては、迷惑この上ない。

 わかりきったことを百も二百も承知の上で、あえて書く。

 ホテルは「泊まる」ところだが、マンションは「住む」ところだからという点が、この二つの言葉の勘違いにこだわる理由だ。

 こだわりついでに、国語辞典を開いてみた。「広辞苑」「大辞林」「新明舞国語辞典」「岩波国語辞典」の4種。どれも刊行中の最新版だが、以下のように書かれている。なお、旧版でも特に説明の仕方は変わっていない。

住む
【大辞林】所を定めて,そこで生活する。 «住» 「町に ─ ・ む」
【広辞苑】居を定めてそこで生活する。すまう。
【岩波国語辞典】所を定めて,そこで生活する。 「東京に――」「マンションにー―」
【新明解国語辞典】[人が]決まった場所で暮らす。

泊まる 
【大辞林】 自分の家以外の所で夜を明かす。 「もう遅いから ─ ・ っていきなさい」
【広辞苑】(居を定めて)滞在する。住みつく。
【岩波国語辞典】ある期間そこに宿る。 「ホテルに――」
【新明解国語辞典】自分の家以外の所で、夜を過ごす。

自分の日常がほかの人との関わりに支えられているという気づきがマンション住まいのセンスをありありと浮かび上がらせる・・

 「泊まる」「住む」という二つの言葉を並べてみると、何となく気になる点がいくつか浮かび上がってくる。

 どちらにも共通しているのは、建物の一部分を自分だけで使う意味になる点だ。どんな建物で、「誰が」という具体的な条件は全く関係しない。

 この言葉が当てはまるのは、それなりの規模の建物の一部分を想定したシーンである。くどさを承知の上で重ねて書くが、建物の全体ではない。

 「泊まる人」であれ「住む人」であれ、この言葉の主語となる人物は、何らかの意味で建物全体に関わらざるを得ない状況の中にいるのだ。

 だから、もしも全体との関わりを拒否するなら、その建物から「出る」しかない。ホテルにせよマンションにせよ、「泊まる」こと「住む」ことによって自分以外の人たちと一緒になる世界に関わることを最初から承知していることになる。

 これは、長距離バスに乗るのと同じ状況だといえるかもしれない。目的地まで乗ったら、後は、着くまでの時間をほかの乗客と同じ共通条件に直面しながら過ごすことになる。同じバスで同じ目的地まで同じ条件を共有する形で、ほかの人と否応なく関わりあうわけだ。

 ホテルの場合にも、同じようなことが言えるだろう。

 マンションに住む場合も・・・。
「マンションはホテルと同じ」なんて言わなくてもホントはどうなのか。黙ったままの人がどうなのかはかわかりようがない・・・

 いつも気づいているかどうかに関わりなく、事実上、大抵の人は本音をそのまま表に出したりしないで暮らしている。だから、黙っているときに何を考えているのかは必ずしも明らかではないが、ある程度までわからないころを推測しながら暮らしている。あいまい至極だが、世間という言葉が使われるときには、事実上こんな感じが漂うのは誰にも否定できまい。

 マンションがこういう生活感覚の世界であることも間違いない。

 法律だけやたらに詳しい人が、管理組合では必ずしも説得力を持たない理由も、ここにある。逆に、法律なんぞどうにでも・・・という本音丸出しが管理組合で通用しない理由でもある。

 管理組合が、どことなくあいまいな気分を持つ世界である理由は、たぶん、この点と関わりがあるだろう。
                   ☆
 であるならば、マンションなんてホテルと同じようなものさ・・と思っている人がいても、そういうことを口に出す人はいないのが普通だろう。

 だから、逆に「そんなことを言う人が一人もいない」から「そんなことを考えている人はいない」はずだ・・と、言えるかどうか。

 ホントのところは、わからない。

 「マンションはホテルと同じ」などとはまさか考えていまいと思うのだが、黙ったままの人がみんなそうなのかどうか・・・。

 黙ったままの人が、ホントはどう考えているのか。管理組合の実情の見極めにくさがこの点と大きく関わっていそうな実感は無視できない気がする。

 何も言わないまま、黙っている人は、どう考えているのか。

 名前と顔だけしかわからないあの人たちは、どんな意見を持っているのだろうか。

 名簿には載っていても総会に来たことがないあの人たちの本音はどうなのか。
                   ☆
 黙っている人の考え方がどうなっているのか。手続きさえ揃えば「どうにかなる」可能性が、実は、管理組合組織を支えていることも事実だろう。

 黙ったままの人が多い状態への向き合い方も、手続きによって正当化される。総会で物事を決める手法をあげるまでもいない・・・。
                   ☆
 ホテルで黙ったままでも別にどうということはない。しかし、マンションでは、そうならない。
                   ☆
 黙ったままの状態をどう考えるかという点で、マンションとホテルは、まるで違うのだから。

| muraitadao | コラム | 14:18 | comments(0) | trackbacks(0) |









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