村井忠夫のマンション管理ブログ

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【44年の実感で「マンションの管理」を考える 35】わかっているが何も言わない「そのほか多数」が実際には管理組合を動かす

マンションに40年以上住んでいながら管理組合の集会では一度も会わない人って実はけっこう多いよね

 マンションに竣工以来ずっと住んできた人は、もちろんほかに何人もいる。長年住んでくれば会う機会も多くなるからそれなりに顔見知りになるし、お互いの名前や仕事などもそこそこにわかるようになる。

 そのわかり方も、玄関やエレベータ―などで出会った時の短い会話を重ねるたびに回を追って少しずつ深くなっていく。その過程でお互いの共通点があればお互いの認識レベルはさらに大きくなり、時としては普段着の生活で交わした会話から、思いがけなく通じあえる言葉の感覚さえもわかるようになる。

 マンションに住んでお互いが知りあうプロセスは、こんな感じではないだろうか。

 40年以上も住んできて知り合うようになったのは、こういう感じの人ばかりだ。向こうのことをこちらは一応知っているし、向こうもこちらのことをだいたい知っている。たまに会うと断片的な話をするが、その場限りの、どっちでもいいことをお互いに承知の上だ。「じゃ、またね・・」と別れるまでのごく短い時間に声を交わして付き合いを確かめあった、ほんのわずかな安心感が残る。

 マンションで住人同士が会った時の感じは、普通は、まぁ、こんなものだろう。

 もちろん、この感じが逆向きの場合もあるのだが・・・。
                   ☆
 しかし、こういう感じで「知っている」人の中に管理組合の集会ではめったに出会わない人が何人もいる。会えばいつも愛想よく声をかけるし、冗談交じりの世間話もするのに、総会とか説明会などの会場で顔を合わせることはほとんどない・・・。

 そういう人がいる、何人も。

管理組合?「え、何それ」という人と「わかってますよ」という人も一枚の壁を隔てただけで同じ建物に住むのは同じなのに・・・

 しかし、こういう人たちも同じマンションに住んでいる以上、何かを決めるときにはちゃんと集会の場所にいるものとして考えなければならない。実際には決める場所に出てきたためしがないのに、そう考えなければならない。

 こうして、「いない」も同然なのに無視できない、きちんとという厄介な存在感だけが間違いなくはっきりしてくる。

 だから、決める場所に出てこないことは百も二百も承知していながら、「決める」仕組みへの参加手段だけは確実に用意しておかなければならない。

 管理組合は、問題に対応するときに、マンションが「わかっている人」と「わかっていない人」を区別できない世界であることをつねに忘れてはならないのだ。

 何かにつけて必要となる管理組合の意思決定で委任状の存在が重大になる理由は、まさしくここにある。「わかっているかどうかがわからない人たち」を必ず視野に入れないとマンションの管理は実現できない。管理組合で物事を決めることが形だけになってしまい、決めたことを実行できなくなるからだ。

「わかっているかどうかがわからない」人たちが黙ったまま胸の中で何を考えているのだろうかという不安感

 同じマンションでも一つのことについてのわかり方は、実は人の数だけ違う。

 ずっと昔、マンションができたばかりのころは一億総中流だのマイホームだのという言葉が説明抜きで通用したから、考えていることは誰も同じだった。パパがいて、ママがいて、その真ん中にボクがいて・・・。土曜日だってまだ休みではなかったが、みんな同じようなものを食べ、同じような話で泣いたり喜んだり・・・。

 今の管理規約は、そんな時代にできたものが基本形ではないのか。法律談義の議論を重ねて部分的な手直しを繰り返しても元々の姿は遠い昔のまま。そんな状態が水の底に残っているような・・・。

 今では、もう中古マンションとして住むようになった人が圧倒的多数になったのに・・・。

 同じ言葉で語られたことでも聞く人によって、意味の受け取り方はまるで違う。同じような言い方であっても、年齢や仕事やライフスタイルの差によって人の数だけ受け止め方はそれぞれに違う・・・。

でも、大抵の人は、何か言うわけではない。胸の中はみんな違うはずだと思うのだが、誰かが何か言うわけでもない。ただ、もう黙ったまま。多くの人たちの不気味なこの沈黙が、管理組合に影を落としているような気がする。

「管理組合って一体、何?」と聞かれたらどう答えるか。「区分所有者の団体」という答えは今も昔ながらに説得力を持つのか

 マンションが多くの人が生活条件を共有する空間だという本質は、昔も今も変わらない。でも、マンションが住宅として持つ本質は同じであっても。その本質の現れ方は人間次第だ。何か月も何年もに渡って住んでいる人間の今の様子によって「住む」ための建物という本質は違った姿で現れる。

 住み始めたときのパパはすでに世を去ってボクはいま外国、老いたママが後に残って一人暮らしという住戸が多くなった時代に、管理組合は区分所有者の団体だという考え方でいいのか。管理組合は区分所有者の団体だから「持つ」ことだけが要点であって、「住む」という条件を「持つ」ことに重ねる必要はないのか。

 100戸足らずのマンションが多いエリアに超高層大規模マンションが生まれたら、適用対象が増加しても同じままの理屈で管理組合が今も成り立つのか。

 外国人が珍しくない時代に管理組合が組織として動く場合の言葉は、やたらに多い漢字と、主語述語の見極めさえ難しいほど日常感覚と離れた法律文感覚が集合住宅の隅々まで通用するのか。

 あれこれ考えるほど、長い年月の経過という事実を前にして管理組合がどの程度まで当事者能力を持てるのか。今のままの理屈で、これからの管理組合は大丈夫なのか。今の経営感覚で、管理会社はそうした管理組合の当事者能力維持をサポートできるのか。

 過ぎた昔に建てられたマンションの光景は、いま住んでいる人間次第で決まることは昔から果たしてどこまで理解されてきたのか。

 多くの人に関係するとはいっても、その中で何も言わずに黙ったままの人が多ければ、はるかな昔にできた手続きの正当性だけでその不安を乗り切れるのか。

  もう、やめよう。 今月1日は87回目の誕生日だった。このマンションで迎える誕生日も、もう44回目になった。

 でも、心境は複雑である。

| muraitadao | コラム | 08:22 | comments(0) | trackbacks(0) |









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