村井忠夫のマンション管理ブログ

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【44年の実感で「マンションの管理」を考える 36】マンション管理組合の役員をエリート居住者が求められたら・・・

どこのマンションでも管理組合の役員選びで打診された人の心境は・・・

 どこのマンションにも管理組合の役員を絶対に引き受けない居住者が必ずいる。こういってもたぶん間違いあるまい。

 無関心だから引き受けないのではなく、ちゃんとした関心があって理屈も心得ているのに引き受けないのだから、確信犯的な役員拒否タイプとも言える。

 そんなことはないと言えるマンションはゼロではないかもしれないが、限りなく少数だろう。

 理由ははっきりしている。管理組合という組織の運営が決して理屈どおりに進まないことを、マンションに住む人は誰でも知っているからだ。

 区分所有法や管理規約に書いてある理屈通りにことが運ばない管理組合では、すべてのことが応用問題になる。法律に書いてある通りにやればいいと考えて理屈通りに取り組んでいけば答が見つかるなら苦労はないが、実際は決してそうはいかない。

 そうであることは、もう30年近い前からはっきり確かめられてきた。
                   ☆
 だが、そうはいっても、理屈は理屈として尊重しなければならない。もし万が一にも理屈を無視したら、マンションはたちまちにしてノールール化してどうにも収拾がつかなくなってしまうからだ。

 だから、どこのマンションでも、大抵の人は、理屈が欠かせないことも、管理規約が持つ重い意味も理屈の上ではちゃんと理解している。

 しかし、そこまでわかっていてもいざ自分自身がその理屈とどう関わるかということになると、たちまちにして発想が瞬時に変わってしまう。

 「わかっていること」と「できること」は同じではないと、誰もが考えるからだ。「わかったこと」の中には「わかっても実行できるとは限らないこと」が含まれるという理屈が浮かび上がってくるのだ。

 「事情を納得できても、その事情に自分自身が関わるかどうかはまったく別の話」だという気分が必ず胸の底に湧いてくる。「自分がやらなくても、このマンションにはやれる人がほかにまだまだたくさんいるではないか」という気分といっしょに。

 役員選びの時期になって意向のほどを打診された人は、大なり小なりこうした気分を味わったはずではあるまいか。

ウチのマンションにはほかにもたくさん住んでいるのになぜ・・・という感覚を責められるのだろうか

 こんなやりとりの時、多くの人が思い浮かべる「ウチのマンションには、こんなにたくさん住んでいるのに、なぜ自分に…」という心境。

 だが、この心境の思い浮かべ方は人によってかなり違う。

 「たくさんの人」が中村さんと山田さんと、佐藤さんと、木村さんと、鈴木さんと、田中さんと、それから・・・というふうに名前で浮かぶ人と、そうではなくて「1階の玄関から何戸めのあそこ」とか「4階のエレベータ―近くのあの住戸」という名前抜きで住戸の位置だけになる人では、《たくさんの人》のイメージがまるで違うからだ。同じ生活条件を共有して、いつも会う人の顔と名前が一致するかどうか、会った人が固有名詞でわかるかどうかという対人認識の問題でもあるのだ。

 「知っている人」を見極める目安の一つは、普段の生活でいつも顔をあわせるかどうか、会った時に声をかけるかどうかといった点だろうし、それをさらにさかのぼれば、会った人の名前がどのくらいわかるかということにもなる。

 玄関やエレベータ―などで会った人の顔がわかるかどうか、エレベーターで二人っきりで乗り合わせた時に何か話しかけるかどうかという日常的な生活感覚の問題でもある。

 この点には、その人の年齢や仕事、ライフスタイルなどいろいろな条件が関係するだろう。同じマンションに住んでいても、働き盛りのサラリーマンと年配者の学校の先生ではまるで違う。お互いの顔さえわからないことだって、ないとはいえない。

 そう考えれば、マンションにはこんなにたくさん住んでいるのに・・・とは言っても「たくさんの人をどのくらい知っているかどうか」という点になると、話は微妙に違ってくる。

 まして、竣工後年数が長くなったマンションや大規模マンションでは「知っている」戸数は、むしろ年がたつほど少なくなるという実情がある。顔見知りの人であっても、会う機会が少なければ本人はもちろん家族も大なり小なり実情が変わる。

 マンションは古くなるにつれて対人関係がわかりにくくなっていく世界なのだ。

マンションに住む人の実情を考えれば「管理組合が区分所有者の団体」だという理屈が当てはまる実感は・・・

 要するに、最後は「人と人とのわかりあい方」の問題になるだろう。

 人と人とが《わかりあう》というのは、《よく会うかどうか》という問題でもある。さらに言えば《会った時に声をかけ合うかどうか》という問題になる。

 声をかけるというのは、短い会話だ。会話は目前の人との話題の共通性がなければなり立たない。目前の人と通じ合える言葉で話す話題があるかどうか、身近な場所にいる人への関心があるかどうかということでもある。

 たったこれだけのことだが、日常生活のレベルになると理屈ではない個人差があるような気がする。もう少し詳しく言うと、身辺に漂わせるある種の匂いのようなものかもしれない。

 言葉にして書くのがとても難しいのだが、例えば、駅への行き帰りに出会うこともないし、ゴミ出しの日にエレベータ―で乗り合わせることもない人とでも言ったらいいか。

 しばらく見かけないが、以前は毎朝いつも迎えの黒い車が来ていたなんだか偉そうなあの人、今も住んでいるらしいけれど、管理組合の役員なんてとてもとても・・という感じの、あの住戸の人。管理組合は区分所有者の団体だという理屈を一番よく理解していながら、一番当てはまりにくい人。

 このあたりで、エリートという言葉がだんだん実感を持って浮かび上がってくる感じになる。
                   ☆
 ルールや約束事の上では、そんな感じの人たちも数字の上では同じ扱いになる。

 管理組合という世界の真の難しさは、こういう厄介な人間像と組織イメージ確保のバランスの取り方ではあるまいか。

 この実感は40年をはるかに超える今も変わらない。

| muraitadao | コラム | 09:49 | comments(0) | trackbacks(0) |









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