村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【44年の実感で「マンションの管理」を考える 37】秋の夜。玄関側から見るかベランダ側から見るかで表情が違うマンションの素顔

よそ行き感が漂う玄関側の画一的な夜景、普段着の生活感がただようベランダ側の夜景

 マンションは、どんなところから見るかによって、表情がまるで違って見える建物ではないか。

 帰宅が遅くなったような時、夜道から見たマンションが昼間とはかなり違って見えるような気がする。何十年も住んできたわが住まいのマンションに何も珍しさはないのだが、周りの住宅の中で突き抜けて見える建物の夜景にかすかな安心感を覚えて、いつも、そう思う。

 たぶん、それは灯のせいではないだろうか。

 昼間はコンクリート壁の無機質な外観むき出しのマンションも、夜になると建物自体の大きくて不愛想な感じが暗い闇に消えて灯りだけが見える光景の印象が、そんな感じをもたらすような気がする。

 灯りは、いつも人の気配を生む。

 秋の夜は、とりわけ、そうだ。
                   ☆
 遠い遠い昔、太平洋戦争中。まだ10歳代の後半だったころ、夜はいつも暗くて、不安で、不自由だった。いま息をしているこの自分が、明日はどうなっているのだろうかと思う。灯火管制、警戒警報発令中、明日は学校動員で造船所の工場に行くことだけはっきりしていた。

電灯のまわりを覆った布切れ、ガラス戸に貼った縦横斜めの紙・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 だから、戦争が本当に終わったことを実感したのは、夜になって、何も気にしないまま灯りをつけてもいいよ、ということになった時だった。もう明るい灯を誰にも気兼ねしなくていいとわかった・・・。

 日が暮れてから本当の平和の到来を確かめた記憶は、今もありありと残っている。

 秋の夜の灯は、今もそんな記憶を呼び起こす。

秋の夜の灯の記憶が戦後の生活を思い起こさせ、住宅の飢餓感を思い出させる・・・。そんなトラウマが戦後住宅政策の背景にあったと今にして思い知る

 秋の夜、遠く近くにまたたく灯を眺めた時の記憶は、やがて戦後の暮らしの光景に続く。誰もが、ひもじいすきっ腹の時代だった。誰もかれも、みんなガツガツしていた。

 “ヨイトマケむかし夫人がいま人夫”などという川柳をどこかから聞いてきて大笑いしながら溜飲を下げたことを、今も思い出す。

 住む所がない時代だった。壕舎などという、今はもう死語となってしまったような言葉に他人事でない実感があった。

 だから、誕生して5年目の住宅金融公庫に入った時は、複雑な気分だった。

 やっと就職できたという思いの一方で、住む所がなくて困り果てた人の相手になる苦しさが重なり、大したこともできないのに期待ばかりされる苦しさが来る日も来る日も続いた。

 430万戸。

 これが、そのころ何かにつけて聞かされた住宅不足戸数だった。

 住宅が足りないのだ、住宅が足りないのだ、住宅が足りないのだ・・・。

 朝日新聞に連載された獅子文六の小説「自由学校」が大評判になった。神田川のお茶の水橋に近い土手にバラック小屋を建てて住み始めた男の物語だった。本当にそんなことができるのかと思った人はほとんどいなかったと思う。

 テレビもまだだったこの時代、松竹と大映で異例の2社映画化となったっけ。

 住まい不足が、それほど切実な時代だった。

430万戸の不足から空き家だらけに悩む時代へ。こうなることは昔からわかっていたのに・・・

 住宅金融公庫で住宅に関わり始めて何年たったころだっただろうか。

 丸善だったかもしれないが、書店で「高齢化社会研究」という雑誌だか本だかわからない刊行物を見つけて読んだ。東京大学出版会の発行だった。

 読んだことをもうすっかり忘れてしまったのに、読んだ時のショックを覚えている。いずれ、こんな時代がやってくるのだ、と。

 年月がたてば、モノは必ず古くなり、人は必ず齢をとる。

 それを考えれば、今せっせと建てている住宅が、そのころどうなっているか。
                   ☆
 そうならないように打つ手がある。その真髄が管理だ。

 若かった身は、そこまで頭が回らなかった。誰もが、そうだった。こんなに困っている人がいるのだから、一戸でもたくさん建てなければ・・・。

 住む人がいなくて、空き家だらけになる時代が来るなんて、そんなことを夢にも考えなかった時代だった。
                   ☆
 住宅金融公庫に入った若手の新人の仕事は、管理だった。若手には最初から融資などをやらせずに、貸した金の回収をやらせればいいという考え方の仕事だった。

 早く言えば債権回収。当時は取り立てだった。

 政府系の機関でも、管理がそんな感覚で考えられていた時代だった。
                   ☆
 管理はエリートが目を向けることがない分野だった。管理で点数を稼いだ人がエリート官僚として天下ってくることもないと実感する年月の始まりだった。

| muraitadao | コラム | 08:19 | comments(0) | trackbacks(0) |









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