村井忠夫のマンション管理ブログ

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【44年の実感で「マンションの管理」を考える 38】電子出版で本を出すようにすすめられて心境複雑になった秋の一日

もうこの齢になったら本を出すようにすすめられることなどないと思っていたのに・・・

 先月で、また齢をとった。

 だんだん90という数字が近づいてくる。

 住宅ローンやマンション管理の本をいろいろ書いてきたが、この齢になればもうこんなこともしなくていいと思っていたが、先週のある日、出版社と名乗る人から電話がかかってきた。

 聞いたことがない社名だった。かけてきた人も「たぶん、ご存じないと思います」といっていた。もしかしたらスタートしたばかりの会社かもしれないと思いながらの話は、次のような成り行きになった。

 「10年ちょっと前に出された本を国会図書館で見たんですが、これは、ぜひこれから長くいろんな人に読まれるべき本だと思います」

 「そう言われると、書き手としてはとてもうれしいんですが、それで?」

 「お電話したのは、その本を電子出版で出していただいたらと思うからです」

 「電子出版のことは知っていますが、いきなり、そう言われても・・・」

 「そうだと思います。資料をまずお送りしますから、それを読んでください。今日は、まず、その送り先のご住所を教えていただけませんか」

 あまり気は進まなかったが、話の成り行きで、住所やメールアドレスを話した。やり取りを重ねていくうちに、相手がそれほど気になるような人ではないことがわかってきたからだ。

 だが話しているうちに、向こうから「やはり、一度お目にかかってお話した方がよさそうですね」と言い出した。こちらの方もそんな気分になってきたから、ではそうしようという話になった。

 だが、日時と場所を相談する前に、ちょっとこう聞いた。

 「ちょっと確かめておきたいのですが、この件は、私の方が費用を負担する前提の話なんですか?」と聞くと、言下に「そうです」という。

 で、金額を聞くと、優に、若い人の1か月分の月収レベルの金額を告げられた。

 そんな金額が前提となる話を、せめてメールのやり取りを重ねたあとならともかく、会ったこともない人との電話のやり取りだけで進める気にはならない。

 だから、すぐこの話は断った。

 数日たって郵送された資料が届いたので、一応は封を切ってみた。きちんとした会社資料やこちらが負担することになっているという経費の見積書、電話してきた人の名刺、写真入りのパンフレット、手書きのメモなどが入っていた。

 知らせたアドレスにメールがくるかとも思っていたが、何も送信されてこない。
                   ☆
 資料などで判断すると、自費出版のセールスだったらしい。なるほど、それなら・・と得心がいった。

 だから、話は、ここでおしまいになる。

以前なら自費出版でも・・・という話もあっただろうが、今では、もう、とても、とても・・・

 気になるところもなかったし、それなりのきちんとした印象の話だった。聞いた社名などを電話のあとネットで確かめても、しっかりした出版社だったし・・・。
                   ☆
 でも、これまでの経験では、こちらが費用を負担してまで刊行を出版社に持ち込むようなことはまったくなかった。本を出したいのだが・・という出版社から持ち込まれた要望の内容をよく確かめて納得できれば、会って話を進めていくのがいつものやり方だった。

 今度は、そこが違う。こちらから費用負担を前提として刊行の要望を持ち込む形になると聞いて、ただ、もう驚くばかり。

 どこからの求めもないのに単独で原稿を書いてオリジナルの本を出すのは簡単な話ではない。本を出すのは、政治家がゴーストライターなどに頼んでばらまくのは別として、書きたいから書くというほど簡単なことではない。

 まして、住宅ローンとかマンション管理のようなリアルな内容の本を書くときは、読み手の表情を思い浮かべながら自分の書く言葉の一つ一つが読んだ人の判断にどう結びつくかという責任の重さを考えながら書くのだから、かなり気が張る。

 一冊の本を一人で書く気分の重さは、年齢を考えると慎重にならざるを得ない。

 一念発起して書いたとしても、その本が書店の棚に並ぶかどうか。

 いまや毎月一軒ずつの書店が姿を消しているという時代。本を読む人が減りに減って、もう書店が成り立たなくなっている。

 本を出すという話は、もう以前のような感覚ではとてもとても語れなくなった。昔なら自費出版ということもあったのだろうが、よほど考えてかからないと自費出版は単なる自己満足の代名詞まがいのイメージになりつつあるのではないか。

 ・・と考えてきて、先日の電話はいったい何だったのかという気がしてきた。

「読む」人があるという見極めがあるからこそ「書く」ことに意味があると今も信じているのだが、ならばブログはいったい・・・

 書くには書いたものの、それを誰かの目に触れる形にする機会を望んでいる人は、きっと多いに違いない。

 自費出版社が成り立つのだから、そうしたニーズは間違いなくあるのだろう。それも、書いたものが必ず誰かに読まれるという見通しを前提にしたニーズが。

 書いたものを必ず読んでもらえるという一種の自信のようなものがあるはずだろう。自費出版の経験がないので推測の域をでないものの、「書く」という仕事に関わる感覚だけはわかるから、そんな気がする。

 でも、本一冊分の原稿を書くというのは、やはり容易ではない。

 そんな骨の折れる仕事を求められる機会もないまま自発的に取り組む人が、それほど多いのだろうか。「書く」ということは、本当に骨の折れることなのに・・・。
                   ☆
 と書いてきて、はたと思い当たった。

 このブログは、今月で12年目に入る。日本不動産ジャーナリスト会議の一メンバーとして誘われて書き始めたのが、こんなに長くなった。まさかこんなに長く書き続けることになるとは思ってもいなかったが・・。

 書いていることに終わりが見えなくなるということなのだろうか。

 何だか、「書く」という行為の意味が、少しわからなくなってきた。

| muraitadao | コラム | 07:56 | comments(0) | trackbacks(0) |









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