村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【44年の実感で「マンションの管理」を考える 40】マンションを一戸建て住宅の代替と考える発想はもうなくなったのだろうか、それとも、まだ、どこかに・・・

思えば、最初の大規模修繕工事がマンション管理という課題の底知れぬ重さを痛感するきっかけだった

 住み始めて10年を過ぎたころ、正直に言って、私は、まだマンション管理のことにそれほど関心を持ってはいなかった。住んできたマンションはそんなに古くなってはいなかったし、大した問題があるわけでもなかった。

 その一方で、住宅金融公庫でそろそろ責任のある立場に立たされることが多くなってきた。住宅産業という分野が生まれ始めていたし、今までとは打って変わった民間金融機関の住宅ローン進出が話題になることも多くなってきた。

 中古マンションがそれなりに市場価値を持つことが少しずつ意識されるようになると、いま住んでいるこのマンションは「いくらぐらいで売れるんだろうか」といった言い方が世間話にかぶせて語られることが多くなってきた。

 新築マンションがブームまがいに売り出される中で、建築後年数を経た物件もあらためて、不動産取引面で市場価値が見直されることが多くなり、中古マンション用の住宅ローンが生まれる状況も大規模修繕工事を受け入れる雰囲気の背景にあった。

 ただし、コンクリート建てのマンションが木造住宅よりも長寿命だという常識レベルの理屈だけはわかっていても、居住者個人の感覚では間違いなく不安があった。

 近所の新しいマンションを引き合いに出しながらウチのマンションだって、まだまだ・・と考える人は当然いたから、中古マンションという視点の資産感覚がかなり多くの人に広がってきていたのも確かだった。

 だが、そう考えても、当時あまりポピュラーではなかった「大規模修繕工事」という言葉の提案が総会で賛成されたのは今でも感慨深い気がする。

 大規模修繕工事はその後10数年ごとに回を重ねてすでに3回目を昨年すませたし、ほかにも外壁改修以外の大スケールの共用部分修繕工事をすませてきたが、基本的に大半の居住者の無関心ぶりは相変わらずで、築後45年の今もあまり変わっていない。

 だが、今ではこうした言葉で語れる大半の無関心ぶりだが、最初の大規模修繕工事当時はかなり気分的にきつかった。重かった。

 だが、悩んでばかりいても仕方がない。

 反応がないのは聞いても返事がないと考えるしかない。返事がなければ賛否はわからないが、少なくとも反対ではない。それなら、事実上「提案が否定されていない」と理解することができると考えた。

 よくよく考えてみれば、いくら汗だくで主張しても、当の提案者自身を含めて大規模修繕工事など誰ひとり自分自身で経験していない状態だった。そうであれば、誰も経験していないことを「賛成か反対か」と聞かれたって、答えようがない。

 最終的には、一種の割り切りしかなかった。

 悩みに悩んで割り切った結果浮かび上がった結論は、実態を見て判断するしかないということだった。

「扉の外もマイホーム」という抜群のフレーズがすぐ姿を消してしまったマンション管理センタースタートのころ

 割り切りで見出つけた方向は、その後、今でも大きな支えとなっている。提案することを経験で確かめていなくても、考えられる限り、確かめられる限り正当な必要性を持っていれば、確信を持って進むしかないという考え方が、いつも最大の支えになるということだった。
                   ☆
 かつて、分譲マンションが普及し始めたころ、マンションを「マイホーム」ととらえる考え方があった。マンションは一戸建て住宅の代替イメージの産物と考えるのが常識だった。

 大きな建物の一角に住んでいても、自分の住戸の玄関ドアの内側はまぎれもないマイホームだと考える風潮だった。

 住宅不足解消を目指してスタートしたはずの日本住宅公団でさえ、当初の賃貸団地ばかりでなく分譲団地を供給し始めたし、それに煽られて都道府県市の住宅供給公社が続々と分譲団地を作るようになって、大小さまざまのニュータウンが全国各地に生まれた。

 だが、こうして続出したニュータウンは、結局のところ、あくまでも個人レベルのマイホームイメージの集積体だった。集合住宅特有のイメージはあまりないまま一戸建て住宅感覚が集積されたものが、マンションだったといえる。

 この時代に「住宅双六」というイメージが流行した。自分の住まいはモクチンアパート→公団の賃貸団地住宅→庭付き戸建て住宅という展開だった。

 昭和年代の終わりに近いころ、できたばかりのマンション管理センターに協力を求められて、機関紙づくりに関わった時期がある。

 このころ「扉の外もマイホーム」という言い方を進めたいという意見がでたことがあった。いわゆるマイホームイメージで専有部分である各戸玄関扉の内側だけを考えると、共用部分を含む集合住宅全体のイメージが理解しにくくなる。

 そうなれば、自分のマンションの住みよさを専有部分だけでなく共用部分と一体化して集合住宅特有の住みよさがわかりにくくなってしまう。庭付き一戸建て住宅のマイホームイメージとの絶縁がマンション管理には欠かせないのだからこの言い方は抜群にすばらしいと思った。

 しかし、このとき、この言い方も考え方もまったく反応がなかった。

 マンションはやはり一戸建て住宅のマイホームイメージを膨らませたものだったことをあらためて実感する。

いまマンション独自の集合住宅観がどのくらいあるのだろうか。マンションストック600万戸のこの時代に・・・

 庭付き一戸建て住宅のマイホームイメージとは別次元のマンション特有のイメージは、いまどういう状況なのだろうか。

 もはや珍しさもなくなったタワーマンションはどうなのか。タワーマンションと並び立つ古いマンションは、どうなのか。高齢者や外国人など、昔は考えたこともなかった居住者が住むマンションは、今もマイホームのイメージのままなのか。

 一戸建て住宅のイメージを引きずったままのマンションが前提となっている状態はもうなくなったのだろうか。

 一戸建て住宅にはないマンション独特の共用部分は、生活基盤を共有する集合住宅特有のものとして定着しているのだろうか。

 マンションをまず「持っているかどうか」という視点だけでとらえる区分所有建物としてなく「持って住む」生活共同空間としてとらえる考え方は定着したのだろうか。

| muraitadao | コラム | 09:02 | comments(0) | trackbacks(0) |









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