村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【44年の実感で「マンションの管理」を考える 41】マンションの12月は管理の正直な素顔が現れるシーズンではないか?管理組合にとっても管理会社にとっても

○○号室に住んでいる人は何という名前ですか?

 マンション正面玄関の光景には、そこに住む人が管理をどう考えているかが正直に浮かび上がっているような気がする。

 ○○号室には何という名前の人が住んでいるかという当たり前の事実を誰にもわかるような形で示すというのは、マンションがマンションとして成り立つための基本条件である。ビジネスビルと違ってマンションの本質は人の住まいなのだから、そこには必ず誰かが住んでいるという状態の表示は当然の話だ。

 だが、この頃は必ずしもそうとは言えなくなったようだ。マンションに住んでいる人自身が名前を出さないようにしようという風潮が強くなってきている。

 こんな風潮の生まれる原因は、はっきりしている。名前が個人情報だからという理由だけで、とにかく名前を出さずにすませよう、名前はできる限り出さない方がいいと考える人が多くなっているからだ。

 名前が個人情報だというのは、当たり前のわかりきった話である。集合住宅で住んでいる者が自分の名前を出すのも、今さらいうほどもない常識だ。

名無しの権兵衛でもあるまいし、住宅に自分の名前は出すのは当たり前。名前が出ていなかったら、あのウチはきっと何か人に言えないワケがあるに違いないと誰もが思ったもの・・・

 集合住宅であろうと一戸建て住宅であろうと、自分の住まいに自分の名前を出すのは常識中の常識だった。マンションが一戸建て住宅に代わる住まいとして登場した半世紀前の昔から今もこの常識は変わらない。

 無人の空き家やワケあって人目をはばかる隠れ家でない限り、住宅に名前を出すのは当たり前の話だった。

 子供のころ「○○寓(ぐう)」という表札の家を見かけることがあった。もともと「寓」は人の住まいの意味だから「安倍太郎」とか「麻生二郎」とかフルに氏名を書けばいいのになぜそう書かないのかと、いつも不思議だった。

 ずっと後になってから、それは「名前を書けないワケがあるからだ」と聞いて少し納得した。

 やがてそのワケはわかったが、人に知られたくない事情があっても無人の空き家ではなくて、れっきとした人の住まいであることを示す表札は欠かせないもので、住まいに氏名を全部出せないことがあっても苗字だけは表札に出すものなのだと、子供心に思っていた。

 だから、表札がない家なのに誰かが住んでいる様子があったりしたら、あそこは、きっと何か表に名前を出せないようなよくよくの事情があるのに違いないと単純に決めていた。自分の住まいには自分の名前を出すものなのだから、名前を出さないウチは何か特別の事情があるのに違いない・・・。

 マンションだって人の住まいだから、そこは同じはず。

 そう考えてきた。

 今も、そう考えている。

隣の人が誰だかわからないマンションはホテルと同じ。実質的に賃貸マンション化した名ばかりの分譲マンションでは…

 何も問題のいないマンションなら近隣の人と同じところで朝晩いっしょに過ごしていても、短期間なら隣の人の名前がわからなくても別に困ることはない。

 ホテルで隣り合った部屋に泊まるのと同じだ。隣の部屋に泊まっている人の名前など知らなくても、いずれどこかへ行ってしまうのだから、いちいち気にする必要もない。同じところで過ごす期間が短ければ会う機会が少ないし、まして共通する生活条件などもないからだ。

 隣に誰がいようとかまわないし、それは逆に隣から考えても全く同じである。
                   ☆
 だが、マンションはそこが違う。

 ホテルは泊まるところだが、マンションは住むところだからだ。

 ホテルは借りた空間で生活条件の確保も他人任せだし限られた期間だけ借りて使う場所だが、マンションは生活条件の確保は自分が持ち主として何とかしなければならない場所だ。自分が何とかすることもできなかったら、費用を払ってどこかに頼まなければならない。

 その場合も、自分が持ち主であることにはまったく変わりがない。

 お金を払って泊まるホテルと、持ち主として住むマンションは、ここが違うというだけのことだが・・・。

 でもこの違いがわからなかったら、住む人の感覚はホテルと同じになる。そうなれば、分譲マンションとは名ばかりで、実質的には賃貸マンションと化してしまうはずだが・・・。
                   ☆
 住んでいる人の名前がすぐわかる状態のマンションは、そういう状態を確保している人がいる。

 必要なら名前を出すことを知っている人が、住んでいる。

 名前がわかるのは約束事があって名前を聞く人には誰もが名前を知らせるからだ。

 そうしなければ住みにくくなる仕組みがあるからだ。

 住んでいる人は誰もがその仕組みを知っているからだ。

 その仕組みが、そうしなければならない約束事と必要なお金の支払いで成り立っているからだ。
                   ☆
 マンション管理とは、結局のところ、そういうことではないか。

| muraitadao | コラム | 08:09 | comments(0) | trackbacks(0) |









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