村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【44年の実感で「マンションの管理」を考える 41】マンションの越年でこれまでの記録が大事だと気づいた人はどのくらいいただろうか

マンションが新しいうちは管理組合が開店休業状態でも困らなかったが あっという間に10年が過ぎて・・・

 今年は、5年ごとに回ってくる管理組合役員の当番階の年だった。だが、87歳という年齢になると、正直なところ、もうそろそろ・・・と思う。体調に特別の変わりはないが、何をしても疲れやすくなったのは確かだ。

 長年取り組んできた管理組合組織活動への側面協力も、このあたりで納めにしたいというのが本音である。

 幸せなことに、この齢でも普通の生活を過ごしているし、管理組合のルールに年齢の条件など、どこを探してもまったく出てこないから、何歳になれば役員を引き受けなくていいという理由などみつからない。

 なまじ年齢などに対応する仕組みを取り入れていたら、高齢化社会で長寿命のマンションを管理できる見込みがなくなってしまうと早くも気づいた人がいたのに違いない。はるかな遠い昔、マンション管理の仕組みを考えた人の先見性に驚き、敬服する。

 このままだといずれ、管理組合の理事会に100歳の老人と18歳の若者が隣り合って意見を述べるマンションが珍しくなくなるかもしれない。

 何しろ、管理組合は区分所有者の団体だという、いとも単純にして明快な考え方のルールがあるだけなのだ。持ってさえいれば、何歳だろうと、どんな人だろうと、いっさい決まった条件がないのだから、これはわかりやすい。

 それはともかくとして、45年も住んできた実感で言えば、600戸のマンションに住む大半の人は、それほど管理組合の仕事に熱心でなく、さりとて非協力的でもないという実感がある。

 だから、役員選びの時も自分から進んで手を上げるような人が少なくて時間はかかるものの、結局は、何とかなる。それなりの時間が過ぎれば、大部分の人はどれかの役割を引き受けて、何とか次年度の役員決定のおさまりがつくのが普通だったから。

 自分から進んで引き受けるほどの熱意はないが、居住者である自分自身と関わる役目の意味は心得ている。だから、自分がその関わりの確認を求められた場合はそのまま受け入れるという消極的な感覚がいつもみんなにあった。

 入居したときはまだ40歳代前半。マイホーム、マイホームという掛け声の一端をかついで一番よく働いていた時期だった。大抵の人と同じように、マンションはただもう寝て帰るだけの場所だった。

 誰も彼もが、そんな気分で動き回っているうちに、毎日がどんどん過ぎた。あのころは時間の過ぎ方が早かったなぁ・・・と思う。

 そんな中でも、《マンションは管理を買え》などという意味不明の言い方を訳知り顔で誰かがいうのを聞くことがあったが、《え?それが、どうしたって?》という程度の感じでおしまいになった。管理組合とか区分所有という言葉の実感は、まるでなかった。

 何でもそうだが、管理という考え方にはモノを所有する実感を裏付ける重さがあるはずだが、持ち物が新しいうちはそれほどピンとくる実感がない。まして共有建物であるマンションでは住み始めた当初から自分一人の単独所有ではないという意識があったから、管理が自分と関わるなどという自覚は誰にも薄かったと思う。

 世が世なら、もともとは一戸建て住宅に住みたかったが、こと志と違ってマンション住まいで妥協している・・・。

 その意味で、今はもう死語に近くなった「マイホーム」感覚が、いつもマンションの居住感覚の真ん中にあった。

建物の全体像抜き自分の住戸だけがマンションだった時代のマンションは住宅双六の通過点でしかなかった

 一種の屈折したこの感覚がマンション管理の自覚を妨げる結果となったのは、否定できない。マンションがマイホームという言葉で語られていた時期は、専有部分となる玄関ドアの内側だけが頭にあり、大抵の人にとって自分の住まいとしてのイメージではマンションも一戸建て住宅も同じだった。

 こんな居住感覚の時代は、マンションは専有部分だけが念頭にあったから、共用部分は頭の中に浮かばない。マンションが大きな建物の全体像イメージで思い浮かべられることがあっても、それは正面玄関ホール、廊下、階段など自宅までのごく限られたスペースだけだった。長い間住んでいても、まだ足を踏み入れたことがない未知の空間が誰にも必ずあった。でも、それを不思議にも思わなかった。

 毎朝、玄関に迎えの黒いハイヤーが来る霞が関の偉い人も昔は住んでいた。のちに政府の高官になったと聞いて、あ、なるほど・・ね、と思った。あんな人でもやっぱり管理組合のメンバーなのかなぁと思った不可解さも覚えている。

 管理組合は、機会さえあれば、自分もいずれは一戸建てに・・・というイメージが多くの人の頭の中にある組織だった。

 今はもう死語になったと思うが、昔「住宅双六」という言葉があった。人の一生を住まいの面から考えて、結婚したらまず賃貸アパート、子供が生まれたら賃貸団地、それから賃貸マンション、それから分譲マンションを経て最終的なゴールは庭付き一戸建て住宅という展開で、そのイメージは平均的な日本人すべてに当てはまる人生コースそのものだった。

 分譲マンションは、そうした住宅コースの通過点だった。口にこそ出さないが、誰にとってもマンションは一戸建て住宅を目指す途中で通過するだけのものだったから、何年も分譲マンションに住んでいると甲斐性がないとか、よほどの信念があるかのどちらかだろうというのが通念だった。

 引っ越して出ていく人にはゴールを実現した人へのかすかな羨望を交えた視線が向けられたものだった。年数のたったマンションは、もはやマイホームではなくなっていた。

やがてバブル。売り出した会社は姿を消し、竣工後の居住者が増えて マンションの昔は年ごとに遠くなっていった

 45年の間にバブルが起こって、消えた。マンションの分譲会社も姿を消したし、居住者もすっかり変わって、竣工当初からの居住者は絶滅残存危惧種と化した。

 だから、かえって45年住み続けてきた今の居住実感は貴重だと、つくづく思う。年月が過ぎたマンションでは物事がどれほど変わるかをいろいろな形で嫌になるほどじっくり見せてもらってきたからだ。

 45年経ってわかったこと、ほかの人にもぜひ伝えたいことは、もう本当に限りがない。

 マンションは長寿命の建物だが、住んでいる人間の方はまるで違う。建物はそれほど予想を超えて変わることはないが、人間の方はまるで違う。やや年月の経過を見せながら建ち続けるマンションで、人間の方は予想を超える変わり方を見せた。

 今のマンション管理の仕組みも、いずれ変わらざるを得まい。変わらなかったら、どうなるか。放置されて無人化し管理どころではなくなったマンションの実情も、この秋のブログに書いた。

 そんなことも記録があればこそ、何とかなる。

 この時期に、そんなことを考える人は、いまどのくらいいるのだろうか。

| muraitadao | コラム | 04:57 | comments(0) | trackbacks(0) |









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