村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【あらためて「マンション管理の常識」を見直すと・・・】マンション管理関連の連載に一区切りつけて改めて思う「書く言葉」「話す言葉」の重さ

「マンション」を語る専門ジャーナリストはめったにいなかった。まして「マンション管理」となれば・・・

 マンションタイムズというマンション管理専門紙に連載していた最終回の原稿を送って一息ついた。最終回のナンバーは209回だった。

 いろいろな場所で書いてきたマンション管理関連の連載も、これで一区切りになる。たぶんマンション管理だけに焦点を絞って連載原稿を書く機会は、もう、これでおしまいだろう。

 思えば、市販の新聞や雑誌に原稿を書くようになってから久しい。

 最初は、住宅評論家というクレジットだった。住宅そのものを語る文筆家は昔も何人かいたが、住宅ローンの実務を取り上げる人はとても少なかった。実務出身の書き手が少なかった事情もあって、お金や生活との関連でリアルに住宅を語る日々は30年以上になった。

 やがて、いつとはなしにそんな状況も変わり、今度は、マンションに絞って語ったり書いたりすることが多くなった。

 さらに、それが「マンション購入」や「マンション選び」から「マンション管理」という限定された分野になると、「マンションとは・・」といったそもそもの総論よりも、「マンションの何がいま気になるか」という側面について書いたり話したりすることが多くなっていった。

 この状況はまた変わって、今度は、新聞や雑誌がマンションを取り上げること自体が激減していった。

 そうなると、新築分譲マンションが増え続けるのに具体的なことがわからなくて不安を持つ人も増える結果になった。

 だからということではないはずだが、マンション管理センターに協力していた事情もあって、北海道から沖縄までセミナーや講座に足を運ぶことが一気に増えた。都道府県市区やNPOなど公的なケースだけ引き受けることにしていたが、それでも実に様々な人に出会って、熟知していたつもりのマンション管理の認識を改めて確かめ直すことが何度もあった。

もっと勉強しなければ・・という感想を聞いた時の苦々しさ。マンションに住むならまず勉強・・という奇妙な空気の腹立たしさ・・・

 こんなころ、ときどき予想外の人に出会った感想の苦々しさを今も思い出す。気分の悪い記憶でもあり、そこはかとない腹立たしさを覚える記憶でもあったが、同時に、この屈折した記憶がこのブログを現在まで長い年月にわたって書き続けさせたことにもなったような気がする。
                   ☆
 それは、ある大都市で開かれたセミナーが終わった時だった。

 「ぜひお会いしたいという方がホールのロビーでお待ちです」という連絡があった。まったく心当たりもないままロビーに行ってみると、中年の人がひっそりと待っていた。銀行員だと名刺できちんと名乗ってから、その人は次のように言った。

 『今日のお話を聞いて、私も、もっともっと勉強しなければと思いました。』

 で、こう答えた。

 『お越しいただいてありがとうございました。でも、そんなふうには考えないようになさってください。だって、自分のウチに住むのに勉強しなければならないことなんて、ないですからね。』

 そのときに話した内容はもう覚えていないが、このやり取りは、その人が「勉強・・」という言い方で法律談義を持ちかけてきたからだったことを記憶している。

 こうした経験は、ところを問わず何度もあった。郵便や電話だったりしたこともある。神田神保町のマンション管理センターまで遠方から訪ねてきた人もあった。

 大半の人が、ある種の思い違いをしていた。それは、マンションに住むには欠かせない予備知識が要るという思い違いだった。

 この当時、新聞や雑誌、テレビなどが今までと打って変わって、マンションのことをしきりに取り上げていた。普段は、あまりマンションがどうだとかいう情報を聞き慣れていないために不安を覚えた人が増えたはずである。

 そんな時期にセミナーや講座に足を運んできたのだから、マンションに住んで直面している問題の答えを何とかして見つけたいと切実に思っていたはずだ。

 そうは思ったものの、マンションに住むという当たり前のことに「勉強」という言葉が結びつけられているのが正直に言って嫌だったのだ。
                   ☆
 今も、まったく変わっていない実感がある。

 書くにせよ話すにせよ、必ず使わなければならない言葉をどう考えるか、という点だ。言葉がきちんと通じるためには、その言葉を使う人の想像力が裏付けになっていなければならない。だから、誰でもきちんと「わかっている」ことしか語れない。わかっていなかったら、使う言葉が借りものになる。身につかなくて浮いたものになってしまう。
                   ☆
 「語る言葉」は「理解できた言葉」に限られるのだ。誰が、いつ、どこで、何を語るときも、そうなる。・・・

 逆に言えば、理解できないことは語れないということになる。
                   ☆
 とすると、語られることが少ないのは、それほど理解されていないことが多いからだろうか。

 そうことなら、マンション管理を語る人が今もこんなに少ないのは・・・。
                   ☆
 もう、やめておこう。

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