村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【マンションに住む実感を確かめるノート◆枳樵阿抜蕕一致する人の数が少なくなるほど自分のマンションの明日が見えにくくなる〜〜人間の数だけ意見が違うことに気づくきっかけになった最初の大規模修繕工事直前期〜〜

マンションでオープンした鮮魚店は半年そこそこで閉店してしまった。お客のバラバラな注文に付き合いきれなくて・・・

 数棟あるマンションの中ほどの棟の1階は店舗になっていた。45年前に公的住宅ローン付きで分譲された数棟のうちの1棟は、1階が店舗付きで設計することが融資条件になっていたからだ。

 まだスーパーマーケットなどができる前の時代で、近隣に店らしい店がほとんどなかった。子供が2人いる4人家族がテレビCMでも標準的なファミリーイメージだったから、構内に生活利便施設を求めたのは妥当な分譲条件だった。

 そんな考え方を前提にしてつくられた店舗の中の1軒に鮮魚店があった。けっこう好評だった。

 ところが、この鮮魚店が半年そこそこで閉店してしまった。

 理由はいくつもあった。開店してしばらくすると予想しなかったほど苦情や注文が続き、とうとう店がそんな客の言いたい放題に対応しきれなくなったためらしかった。確かに、やれ生臭いだの、魚を焼く煙が迷惑だのという人がいて、手に負えなくなってしまったらしいという話は、それまでに聞いていた。

 何しろ4棟で600戸あまり。いろんな人がいる。ものわかりのいい人もいるし、逆に文句の多い人もいる。

 これだけの人が住んでいれば、人の数だけ暮らし方も考え方も違う。まして個人の好みが別れる魚のことになれば呼び名も違うだろうし、食べ方も様々に異なる。

 そんなにわがままでバラバラな客を相手にした商売は想像以上に厄介だろうなと、ひそかに思ったことを覚えている。

 名前と顔が一致する人もいるけれど、そうでない人もいる。

 何しろ、バラバラだ。4棟600戸のバラバラワールド。

 マンションって、こういう世界か・・・。

 でも、そのとき同時に思ったのは、住む人たちのこんなバラバラぶりが、いずれ商店の成立ちにとどまらず、もっと身近な場面で目の前に立ちはだかる日がくるのではないかということだった。

 だが、こうも思った。ほとんどのことは管理会社が対応するはずだ。そのために安くもない費用を払って管理会社に委託しているのだから、と。

 大抵の人も、そう考えていた。

別に問題もなくて管理組合も名ばかり。そんな開店休業状態で誰かが言い出した「大規模修繕工事をしなければならないそうだが、一体どういうふうにやればいいんだ・・・」

 管理会社は、このマンションを建てて分譲したディベロッパーの子会社だった。マンションの中の管理事務室には親会社で定年を迎えた感じがありありとわかる人が何人もいた。

 だが、こんなに何人もいるにしては・・・という意見が、ときどき出るようになっていた。管理会社には親企業の分譲会社にいた人が多いとは聞いていたが、「それにしては痒いところにほとんど手が届いていないね」という声も出るようになった。

 分譲マンションには管理組合という団体があるということだけは、多くの人が、一応は知っていた。しかし、それは建前がそうなっているというだけの話であって、具体的に考えた時には何がどうなるのか、分譲マンションの一戸を持っている自分はその管理組合とどう関わるのかという肝心のことになると、わかっている人は一人もいなかった。

 もしかすると、わかってはいたが黙ったままの人がいたのかもしれないが、それが誰なのかとなると、まったく見当がつかなかった。

 大抵の人にとって、管理組合は町内会と同じような組織だという程度の認識だったからだ。町内会がわかっているようで実はあまりはっきりしないのと似たようなあいまいさが管理組合という言葉に漂っていた。天下国家のことを論じたりする理屈っぽい人も、管理組合のことになるとそんなものだった。

 必ずしも低いとはいえない管理費を収めていながら・・・

 あるにはあったが、名ばかりの管理組合。

 その管理組合は、竣工後10年あまりは総会も開いていなかった。
                   ☆
 そんな状態で竣工後10年を過ぎかかったころ、誰かが心配顔で言い出した。

 「10年経ったら大規模修繕工事というのをやらなければならないんだそうだよ。でも、どういうふうにやればいいんだ?」

 東証一部上場の大企業の丸の内本社に務めていた人が会社で聞き込んできた話だった。

| muraitadao | コラム | 22:26 | comments(0) | trackbacks(0) |









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