村井忠夫のマンション管理ブログ

村井忠夫のマンション管理ブログ
【マンションに住む実感を確かめるノート─曠泪鵐轡腑鷭擦泙い法屬泙澄ΑΑ廚箸いΩ斥佞癖のようについていたころ胸の中でひそかに思ったこと〜「マイホーム」「マイホーム」の時代が始まった〜

昔はなかった「マイホーム」という言葉がだんだん身近になってきて・・・

 「マイホーム」という言葉。今では、もう誰もが普通に使っているが、昔、こんな言葉はなかった。

 こんな言葉で日常会話を交わした記憶は、まったくない。

 住まいは「持つ」か「借りる」かのどちらかしかないが、どっちにしても「自分の住まい」であることに違いはない。持っていようと借りていようと、どこかに住んでいることに変わりはないのだから、あらためて特別の意味を込めてこんな言葉を使うことはなかった。

 ほかに何か話題になったことがあるとすれば、せいぜい広いか狭いかの違いが頭に浮かぶぐらいだったか・・・。
                   ☆
 戦争が終わった直後の住宅不足戸数は430万戸だった。

 1955年、住宅金融公庫という国営住宅ローン組織に入ったころ、建設省という役所からきた人たちがいて、誰もが「一世帯一住宅」というスローガンを呪文のように口にしていた。

 だが、このスローガン、わかったようで何だかわからない言い方だった。だから、ピンと来なくて当時はほとんど気にならなかった。

 住宅問題が依然として「戸数不足解消」という前提で語られることは相変わらずだったが、このトーンは微妙に変わり始めていた。「住宅が足りない」「一戸でも住宅を」というのではなくて「ちゃんとした住宅を」とか「もっとまともな住宅を」という声が混じり始めていたからだ。

 自分自身の住生活史を思い返してみても、一世帯一住宅という戸数満足だけの単純な考え方では飽き足りなくて、もっと住まいの中身に目を向けたいという願望が強くなってきていた。

 勤めていた住宅金融公庫で、頭の上にいたのは建設省(今の国土交通省)から天下ってきた人が多かった。霞が関の中央官庁で仕事をしてきた人であれば、どうしても全体的な視野でものを考える人が多くなるのは仕方がない。

 だが、こちらは、住宅、住宅でひたすら一途に住宅のことばかり考え続けてきた。

 考え方に折り合いがつくはずがない。頭の上にいて決定権をもっていても住宅のことは素人同然である。

 まして、マンションのことなど何もわからない、言葉だって通じにくい・・・と言う成り行きになるのは、避けようがなかった。

 こんな実感が生まれてきた頃、ジャーナリストの中で住宅に特化して関心を持つ人に出会う機会にときどき巡り合うようになった。

 自然な形で縁ができた新聞や雑誌の世界の人と付き合いが生まれるようにもなった。

 公庫や建設省の人とはまるで違う新鮮な感じだった。何より説明抜きで話が通じる安心感があった。

 この頃、もともと就職専門誌を出していた日本リクルートセンターが「住宅情報」という住宅専門の週刊誌を出し始めた。ひところの電話帳のような分厚い雑誌が書店や駅の売店の店頭部現れた。それに触発された形で「週刊読売住宅案内」というのが登場した。

 どちらもマンションを中心とした新築物件の販売情報が重点の媒体だった。

 こうして住宅専門誌が並んだが、住宅ローンのガイダンス記事はもともと書き手が少なかった。

 当然の成り行きで、否応なしに書かざるを得なくなる日々が、こうして始まった。

「ウサギ小屋」呼ばわりをされて人生コースの引き立て役に甘んじながら、それでも大規模修繕工事に取り組みながら・・・

 このころに、こんなことがあった。

 EUの公的機関が、経済成長で注目されている日本人だが、実は生活基盤はそれほど重視されていない。馬車馬のように働いている日本人の住まいは非常に貧しくて、ウサギ小屋レベルだと言われているというニュースが流れたことがある。

 それほど大きなニュースではなかったし、どこの誰が、どういうところで言ったのか今もってよくわからないままだったが、経済力に自信たっぷりの時代だったから。“ウサギ小屋”呼ばわりされて、ひどくプライドを傷つけられ、ひそかにいつも気にしていた図星をさされた反応が多かった。

 その証拠に、この時期から後、しばらくの間、住宅関係者とくに住宅行政の立場にいた人が自嘲気味に「何しろ日本人の住宅はウサギ小屋並みなんだから・・・」という言い方をしたものだった。

 だが「ウサギ小屋」という言われ方をそれほど気にしていたそんな時代でも、住宅が狭かろうとどうだろうと「一戸建て住宅」が独立した一棟の建物だったことは間違いなかった。マンションのような集合住宅は、まだまだ「住宅」の想定イメージにはとても含まれてはいなかった。

 土地付き一戸建て住宅は「マンションではない」こと自体に意味があり、価値がある資産だった。

 つねに一戸建て住宅は最高位に評価される存在で、マンションはそういう人生の成功者が住む一戸建て住宅の引き立て役だった。

 マンションは、かつて、人生コース・ゴールの引き立て役となる存在だった。

 いま築後30年以上を迎えたマンションは、ほとんど、そんな感じの時期を過ごしてきたはずである。

 だが、建築後年数の経過は、紛れもなく様々な形の劣化を浮かび上がらせていた。その現実を手つかずのままにしておけば、ほかでもない当の居住者自身が不安になる。一も二もないこの現実が、初期の大規模修繕工事に立ち向かわせた。
                   ☆
 こうして、初めての大規模修繕工事に手をつけざるを得ない時期がやってきた。昭和年代の末期ごろだった。

 情報源となる新聞や雑誌の記事は全く無い。

 当たり前だ、書く人がどこにもいなかったのだから。

 もし居たとしても、そんなものをわざわざお金を出して買う人など、どこにもが居るはずがなかった。

 何もかもわからない。わからないことがあても、尋ねる人は、どこにもいない・・・。

 それでも11階建て4棟600戸のマンションは、汚れ傷みが隠せなくなっていた。

「一世帯一住宅」なんて今ならテレビの政策CMだね。深く考えたりしなければ、誰にでも通じそうな気がするから

 このマンションに住み始めた頃、一世帯一住宅という言い方が繰り返された。いつも、誰かが、どこかで、この言い方をしていた気がする。

 建設省からの天下りはもちろん、天下られた方も、単純に、この言い方を口にした。

 一種のスローガンと化したこの言葉を、自分の行政感覚を語る官僚たちが呪文のように繰り返した。

 「一世帯一住宅」「一世帯一住宅」・・・。

 その「一世帯一住宅」のカウントの中に、マンションが入っていた。

 ふーん、そうか・・、マンションだって確かにマイホームだものね・・・。

 そんな声が、どこかから聞こえてきた気がする。

 そんな時代だった。

| muraitadao | コラム | 14:13 | comments(0) | trackbacks(0) |









http://murai.realestate-jp.com/trackback/991900
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
<< August 2019 >>
+ SELECTED ENTRIES
+ RECENT COMMENTS
  • 【番外】11年目。公開遺言のつもりでブログを書き続けます
    マンション・チラシの定点観測 (11/26)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    村井忠夫 (12/07)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    尾下 義男 (12/07)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    村井忠夫 (11/23)
  • 文庫本より重くて330ページもある箱入りの「東京防災」という本が届いたが、さて・・・
    尾下義男 (11/23)
  • 2年半ぶりでメンバーも変わって再開のマンション管理検討会、たった1か月で結論を出すとは・・・・
    とおりすがり (04/24)
  • 最新の「マンション総合調査」から読めること、読めないこと
    村井忠夫 (09/06)
  • 最新の「マンション総合調査」から読めること、読めないこと
    まるーべり (09/06)
  • 都議ヤジ問題の本当の理由は議員の当事者感覚の貧しさ
    村井忠夫 (06/26)
  • 都議ヤジ問題の本当の理由は議員の当事者感覚の貧しさ
    ポリス (06/26)
+ RECENT TRACKBACK
  • 「沈黙は賛成じゃない」という論理。選挙や総会では?
    マンション管理の情報屋。。。 (09/22)
  • マンションの中の喫茶店が話題になる・・・・:マンションの共用空間の新しい意味をもっと考えていいのではないか
    神園良輔の『マンション展望』 (05/05)
  • マンガ説明入りの規約解説本があってもいいじゃない?でも実際には簡単にいかないけどね
    マンション管理士情報ナビ (05/27)
  • マンガ説明入りの規約解説本があってもいいじゃない?でも実際には簡単にいかないけどね
    マンション管理士情報ナビ (05/27)
  • 女児マンション転落事故のニュースが浮かび上がらせたこと:どこのマンションでも同じことが起こる可能性にどれだけの人が気づいているか
    MANSIONS-COMMUNITY blog (04/15)
  • 「億ション」は最高が1億円なのか、最低が1億円なのか、それとも・・・:管理の基本原則は何億円でも関係ないが
    マンション展望 (02/16)
  • 「美しい国」で、これ以上「美しくないこと」が起こらないように:もっと集合住宅に住む不安を減らすための議論を
    マンション展望 (12/01)
  • 8年前の2月、国会でマンション管理をめぐる史上初の議論が行われた。そして、昨日の朝刊には・・・
    NONブログ (11/27)
  • 書名は買い手にとって本のすべて。本の名前と内容はなるべくなら、あまり違わない方がいいと思うのだが・・・
    高層マンション (08/27)
  • 新しい住宅が建たなくなったというニュースの怖い連想:暗い窓ばかりのマンションが思い浮かぶ・・
    マンション展望 (08/25)
+ CATEGORIES
+ ARCHIVES
+ LINKS
+ PROFILE